内定充足率は改善するも、楽にはならず
次に、2022年卒採用の活動終了時期の見込みについて、2021年卒採用と比較してもらったところ、結果は意外なものとなりました。前述したように、2021年卒採用は、想定していなかった新型コロナウイルス感染症対策の影響で、2020年卒採用と比較すると途中から大きくスケジュールが遅れ、2022年卒向けインターンシップの開催時期にまで影響を及ぼすことになりました。それに対して2022年卒採用では、新型コロナは事前に想定していたためオンライン対応も最初からスムーズに進行し、就職ナビ各社が発表する月次の内定率速報の数値は昨年を上回るペースで進行しています。
今回の調査でも、内定充足率は昨年を上回るペースで進行していることが分かっています。さらに、大企業に限れば、[図表7]で見たように、2021年卒どころか2020年卒をも上回るペースで進行しています。そのため、企業規模を問わず、「(前年よりも)早まる」企業が多くなり、「遅延する」企業は少なくなるものと予想していたのです。
ところが結果は、「昨年と同様」とする企業がいずれの従業員規模でも76~86%と大半を占め、「早まる」と回答した企業は「遅延する」と回答した企業よりも少なくなっています。大企業ですら、「遅延する」が9%なのに対して「早まる」は6%です[図表11]。
では、「大変になった」理由はなんだったのでしょうか。フリーコメントを抜粋して紹介します。
・不人気に拍車がかかり応募者が減った(1001名以上、フードサービス)
・他社の選考時期が早まったことにより、相対的に選考が遅れた(1001名以上、食品)
・入社後のミスマッチを減らすべく、オンラインで会社の概要や職場の人間関係などを伝える点(1001名以上、エネルギー)
・辞退が増えた(情報処理・ソフトウェア)
・応募期間が間延びしているため(301~1000名、食品)
・すべてwebでの選考になったため、フォローを手厚くしないといけない(301~1000名、商社)
・学生の決断時期が延びた(301~1000名、商社)
・オンライン化で、一次選考の合格率が大幅に低くなっており、取りあえず選考を受けてみるという学生が増えている印象(301~1000名、情報処理・ソフトウェア)
・選考応募が昨年に比べかなり増え、その分選考する学生数も大幅に増えたため、選考日程の調整や時間増に伴う協力体制構築は大変だった(301~1000名、情報処理・ソフトウェア)
・リモートが最初から学生に定着しており、応募企業が多いために辞退率が高まった(301~1000名、通信販売)
・コロナ禍で採用媒体にあおられる形で早期化が進んだ(301~1000名、輸送機器・自動車)
・知名度が低いことからオンライン合同説明会では集客数が伸ばせなかった(300名以下、鉄鋼・金属)
・コロナ禍でも技術系採用には変化がなく、むしろ求人数が増えている企業もあり、例年以上に激戦である(300名以下、鉄鋼・金属)
・リモート勤務の社員が多く、インターンに参加する学生の対応をするメンバーに限りがあった(300名以下、不動産)
・コロナの影響で予定が立てづらく、スタートが遅くなってしまったため(300名以下、医療・福祉関連)
オンライン化により応募者が増えること自体はうれしい反面、その後の面接設定で負担が増えた企業、選考早期化の波に乗れなかった企業、内定辞退率のアップに振り回される企業、激戦が続くエンジニア採用に苦戦する企業、会社がテレワークを推進する中で、対面で学生対応ができる社員が限られた企業など、さまざまな局面で採用活動に苦労する採用担当者の姿が浮かびます。学生の内定率や、企業の内定充足率といった表向きの数字には表れない裏側がここにあります。
次回は、毎年恒例の採用・就活川柳と、既に始まっている2023年卒採用に向けた動きを追いかけます。