採用活動は「マス型採用」から「個別採用」へ

これまでは、就職ナビや合同企業説明会でできるだけ多くの採用母集団を形成し、そこから個別の会社説明会へ誘導、エントリーシートや面接を通して一括して選考し内定者を決めていく「マス型採用」が主流でした。これに対して、ターゲット人材が含まれるかどうか分からない母集団を広く形成することに疑問を持ち、ターゲット人材を社員・内定者から紹介してもらうリファラル採用や、逆求人型サイトから個別にターゲット人材にアプローチするダイレクトソーシング、あるいは職種別採用など、就活生らに個別に対応しながら内定者を決めていく「個別採用」を取り入れる企業が増えています。より手間はかかっても、「マス型採用」では採用しきれない層と巡り合えるとともに、個別の密度の濃いコミュニケーションを通してミスマッチを軽減できるというのがその理由です。

「マス型採用」と「個別採用」のバランスについて聞いてみたのが[図表10]です。「マス型採用に注力する」と「マス型採用を主軸に個別採用にも取り組む」を合わせて「マス型採用」派、「個別採用に注力する」と「個別採用を主軸にマス型採用にも取り組む」を合わせて「個別採用」派とした場合、全体では「マス型採用」派が47%、「個別採用」派が53%とわずかながら「個別採用」派が多いものの、ほぼ拮抗しているといっていい状況です。
第121回 「中途採用比率の公表」に向けた各企業の取り組みの状況は
企業規模別に見ると、採用人数の多寡が大きく関係する部分があり、大企業では「マス型採用」派の75%に対して「個別採用」派は25%にとどまり、「マス型採用」派がまだ強くなっています。ただ、中堅企業では「マス型採用」派の50%に対して「個別採用」派も50%とまったくイーブン、中小企業に至っては「マス型採用」派36%に対して「個別採用」派64%と、「個別採用」派のほうが圧倒的に多くなっています。

「マス型採用」派が4分の3を占める大企業においても、「マス型採用に注力する」は25%に過ぎず、50%は「個別採用にも取り組む」しており、ウエートはともかく「個別採用にも取り組む」企業の割合は75%にも達することになります。「マス型採用に注力する」割合は、もはや大企業においても少数派となっています。

大企業で対面形式が多い理由とは

ここからは、インターンシップや個別会社説明会・セミナーの実施形式について見ていきます。まず、インターンシップの実施形式を見てみると、全体では「すべてオンライン形式で実施」が52%と半数以上を占め、次いで「すべて対面形式で実施」27%、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」21%となっています[図表11]
第121回 「中途採用比率の公表」に向けた各企業の取り組みの状況は
企業規模別に見ると、大企業ではいずれの実施形式も33%で拮抗し、中堅・中小企業では全体と同じく、「すべてオンライン形式で実施」が半数以上を占め、次いで「すべて対面形式で実施」が続きます(中小企業は「すべて対面形式で実施」と「対面形式とオンライン形式を混合して実施」は同数)。

一見すると、大企業において「すべて対面形式で実施」の割合が多いのではと思う人もいるかもしれませんが、これは大企業ではインターンシップの実施期間が「1週間程度」の割合が多いこと(図表略)が起因していると推測されます。「半日」や「1日」のタイプはオンラインでも成立しますが、実際の職場での就業体験を主とする「1週間」タイプのインターンシップの場合には、オンラインでプログラムを完結されることは難しく、「すべて対面形式で実施」するか、「対面形式とオンライン形式を混合して実施」するかのいずれかにならざるを得ません。大企業で「すべて対面形式で実施」と「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が多い理由をご理解いただけたのではないでしょうか。

オンライン会社説明会はライブ配信が主流

次に、個別会社説明会・セミナーの実施形式を見てみましょう。全体では、「すべてオンライン形式で実施」が50%で半数を占め、次いで「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が37%、「すべて対面形式で実施」が13%となっています[図表12]
第121回 「中途採用比率の公表」に向けた各企業の取り組みの状況は
企業規模別では、インターンシップとはまったく異なる傾向が見て取れます。大企業の実施形式を見てみると、「すべてオンライン形式で実施」が64%と突出しており、次いで「対面形式とオンライン形式を混合して実施」が36%、「すべて対面形式で実施」はなんとゼロです。

「1週間」タイプのインターンシップは、職場での就業体験といっても1職場当たりの受け入れ人数は数人程度にとどまるのに対して、会社説明会やセミナーとなると1会場当たりの参加学生数は桁が違ってきます。新型コロナウイルスの感染リスクを考えれば、大規模な会社説明会はとても対面形式では実施できないでしょう。「対面形式とオンライン形式を混合して実施」としている企業の「対面形式」は、大学別OB・OG懇談会など、比較的規模の小さなセミナーの場合であると推測されます。

最後に、オンライン説明会・セミナーの配信形式を確認します。最も多いのは、講師の説明やパネルディスカッションの模様をリアルタイムに配信する「ライブ配信のみ」で、67%と3分の2の企業が実施しています[図表13]
第121回 「中途採用比率の公表」に向けた各企業の取り組みの状況は
次いで、「ライブ配信と録画配信の両方」が26%となっています。こちらの録画配信は、ライブ配信した模様を録画しておいて、後日オンデマンドで配信するという、いわば二次利用型の録画配信が大半でしょう。一方、「録画配信のみ」は、事前に録画配信専用のプログラム(説明会)を録画・編集しておき、後日オンデマンドで配信したものになります。「録画配信」の場合、学生は説明会を視聴するだけで一切質問ができないため、企業は双方向性を意識した「ライブ配信」を重用しているようです。

録画映像の配信方法には、ライブ配信と同様に配信時刻を指定して配信する方法と、学生側が好きな時間に視聴できるオンデマンド配信の2種類がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。前者は、ライブ配信と同様、視聴者側で動画を自由に進めて視聴することはできませんので、企業からするとすべてのプログラムを視聴させられるメリットがある反面、配信時刻に都合が合わない学生は視聴ができないことになります。

一方、後者の場合には、学生は好きな時間に、また何度も視聴できるといった学生のメリットは大きいですが、その分、学生の集中力は前者より低くなりがちです。また、学生はプログラムを飛ばして視聴することも可能になってしまいますので、企業からすると見てほしい箇所を飛ばされてしまうリスクがあるといえます。学生の利便性を考えると当然いつでも視聴できる後者のほうが望ましいわけですが、配信タイミングを複数設定することで、配信時刻に都合が合わない学生を低減させることは可能になりますので、私は前者の方法をお勧めします。

次回は、3月時点での学生の意識、動向をお伝えしたいと思います。

この記事にリアクションをお願いします!