【第3部】ワークショップ 転職・副業時代における人事としての採用・キャリア開発支援のあり方
冒頭では、本セミナーの主催者であるOriginal Pointが第1部講師の田中氏・第2部の小山氏の監修を受けて実際に行っている、若手向け・上司向けの研修施策について、高橋氏から説明があった。若手・中堅世代には“自分の興味”と“自分の仕事の提供価値”を時代に合わせて変革していく力を育むアプローチを。上司向けには、キャリア開発支援スキルを付与する前に上司本人のキャリア開発する重要性や、世代別に部下の状態を理解する方法を解説した。続いて、同社のキャリア開発の方向性を考える「キャリア戦略シート」を配布。実際に使用し、田中氏・小山氏といっしょに「キャリア戦略」を練る会議をワークショップ形式で行った。
まずは人事担当者として優先して行うカテゴリを「S」「A」「B」「C」の4段階で決めてから、各項目を書き込み、テーブルごとの参加者や講師を交えてワークショップを進めていった。最後に講師の両氏が、参加者と実際に話してみて感じたことをコメント。あわせて参加者からの質問にも答えた。
田中氏は「我々がやらなければいけないことは、これまでのような『人材管理』とは全然別のことであり、キャリア開発を支援することだと共通認識を持ちたい」、「同じ職場の中には『従業員は企業の人材である』という上司側と『自分でキャリアを成長させる』という若手がいて、年代によって断絶している部分をどうするか」、「辞めていく社員を引き留めるのではなく、その職場で働きたいと思わせる魅力を増すことが必要」などの話を展開した。
小山氏からは「キャリアについてのコミュニケーションが苦手な上司が多いということを改めて認識した」、「プロティアンな人材を育成するには、育成する側がプロティアンなキャリア観を持っていないと無理」、「上司がキャリアコンサルタントの資格をとることはひとつの手だが、それには時間がかかるし、全員が取得するのも難しいだろう。しかし組織内には自然とプロティアンな人材を育成できている上司がいるはずなので、そういった人が持っているスキルを研修で横展開することは有効だろう」といった話があった。
参加者からの質問は「これからの人事の役割」について。田中氏は「人事の仕事は昨年度を踏襲しがちだが、いまは“攻める人事”が必要。そういった会社は元気で失敗の概念がほかとは違い、守りの姿勢では失敗だと思っている。採用に直結しないいろいろな試みをやってみることによって、却っていい人材が集まることもある。まずは予算のかからない施策から始めてみるといいのでは」と見解を述べた。
小山氏からは「人事の役割の中でどうしても比重が重いのは労務管理。労務管理とキャリア開発支援、両方を同じ部門でやるのは無理がある場合も多いので、ぜひ『第2人事部』とでも呼ぶような新しい組織を作ってはどうだろうか。車の両輪として、第1人事部がどちらかというと組織視点で社員の管理・評価を行い、第2人事部は個人視点で社員のキャリア開発を支援する」などのアドバイスがあった。
そのほか、両氏が講演の中で触れた「プレ高校生」や「クールに働く若手」への対応として、田中氏は「いきなり現場に入れるのではなく、やはり新入社員研修が大事」、小山氏からは「優秀な人材は30歳手前で壁にぶつかることが多いので、早期にキャリアに向き合わせることが必須」と説明。参加者も納得の様子だった。