インターンシップルートの選考も許容する学生

最後に、インターンシップと採用選考はどうあるべきと考えているのかを聞いてみました[図表6]
第74回 2018年卒向けのインターンシップを振り返る
文系と理系で考え方の差異はそれほどなく、「インターンシップを選考とリンクさせるべきではない」とする学生はともに3割程度にとどまりました。最も多かった回答は「通常の選考以外にインターンシップからの選考もあっていい」で、文系で54%、理系で58%に上りました。さらに積極的に「インターンシップからもっと多く採用選考すべき」とする学生は、13~16%と少数派でした。それぞれの理由を見てみましょう。

■インターンシップからもっと多く採用選考すべき
・やる気がある証拠でとても良いと思う(その他私立大学、理系)
・のんびりと長い時間をかけて企業を見られるインターンシップを選考に直結させるべきだ(旧帝大クラス、理系)
・面接だけでは学生の能力を十分に把握しきれない場合も多いと思うため、企業側からすれば妥当だと思う(早慶クラス、文系)
・インターンシップを通してその企業に対する理解や自分との相性が具体的に分かるし、企業も学生をしっかり見極める機会を設けられるので良いと思う。ミスマッチを防げそう(その他私立大学、理系)
・お互い面接よりも雰囲気や人柄を判断しやすいと思う(その他私立大学、理系)
・早めに就活を終わらせたい人にとっては非常に良いと思う(中堅私立大、文系)
・前々から働きたいと思って企業を見ている学生を少しでもいいから優遇すべき(早慶クラス、文系)
・意識の高い学生が早めに動き、企業がその中で優秀な学生を確保し、囲い込むということは、慈善団体ではない企業にとって大切なことである(上位国公立大クラス、文系)
・学生側からの理解も深まるので、早期退職も減ると思う(早慶クラス、文系)

■通常の選考以外にインターンシップからの選考もあっていい
・企業について知る良いきっかけにもなるし、参加したいがもう少し枠を増やしてもらえるならより良いと思う(旧帝大クラス、理系)
・企業と学生の能力や相性など全体を面接以外でも読み取ることができるから(上位国公立大クラス、文系)
・企業としては妥当な判断だと思うのでもっと周知の事実となってほしい(その他私立大学、文系)
・社員の方との相性をみられるため、つながるほうがどちらにとっても良いと思う(早慶クラス、理系)
・しっかりと人を見て判断したいという企業の思いにも理解できるので、インターンシップが選考につながることに対しては肯定的です(旧帝大クラス、理系)
・ミスマッチが少なくなるため、企業、学生両者にとって有用だと思う(早慶クラス、文系)
・優秀な人材を集めるためには効率のよい方法だと思う。しかし、インターンシップから選考につながるという仕組みにするのなら、インターンシップ枠をもう少し増やしても良いのではないかと考える(その他国公立大、文系)
・インターンシップに行けなかった人材も見てほしいためバランスを取ってほしい(その他私立大学、理系)

■インターンシップを選考とリンクさせるべきではない
・インターンシップに参加できない学生もいることを考えてほしい(中堅私立大、文系)
・学生は勉学に励むべきであり、インターンシップに集中するあまり勉学をおろそかにしてしまうことはあってはならないと思う。選考につながるとそれだけインターンシップの準備やらにかける時間が長くなり、勉強する時間が減る。また一生懸命勉強していた人がインターンシップに参加していないだけで不利になるのはおかしい(その他私立大学、文系)
・体育会などインターンに行く暇のない人にとっては不利(早慶クラス、文系)
・インターンシップは自分の就職の体験だけにして、企業側がその情報を利用するのはやめてほしい(その他私立大学、理系)
・インターンシップ早い者勝ちのようなものはよくない(上位私立大、文系)
・就活解禁を3月にする意味がなくなる(上位私立大、理系)
・企業にとってはより適性のある人材を選出できるが、あまりオープンなイメージはない(早慶クラス、文系)
・遠方の企業については必ずしもインターンシップに参加できる訳ではないので不利になってしまう(上位国公立大、文系)
・早くから就職活動としてインターンシップを行うことを求められてしまいそうでとても嫌だ。インターンシップをしたからといってそれがそのまま就職につながれば、将来への視野も狭くなりそうなので、企業について知るための手段程度で構わない(その他私立大学、文系)
・短期決戦型の就職活動状況をさらに加速させると思います(その他私立大学、理系)
・インターンシップに気軽に参加できなくなる(その他国公立大、文系)

「インターンシップを選考とリンクさせるべきではない」とする学生の内訳を見ると、インターンシップに参加していない学生の割合が多くなっています。インターンシップ不参加者のうち「インターンシップを選考とリンクさせるべきではない」を選択した学生の割合は53%と過半数に達しているのに対し、参加社数が「4社」以上の学生のうち「インターンシップを選考とリンクさせるべきではない」を選択した学生の割合はわずか13%にとどまります。何らかの理由でインターンシップに参加できなかった学生もいるでしょうが、参加しなかったことへの口実のように回答している学生も見受けられます。
今回の経団連の指針の改定は、その趣旨においてその後の選考活動につなげることを禁じているものの、大企業が直接的ではないにせよ、インターンシップをこれまで以上に採用活動の一施策として活用するようになることは間違いありません。学生が望む、望まないにかからず、オープンにされないインターンシップからの選考ルート(早期選考)が新設、あるいは強化されることになるでしょう。
2019年卒採用からは、学生がいつから就職活動を始めるかによって、これまで以上に「二極化」に拍車がかかることでしょう。ただし、それは企業側にとっても同じです。3月の就職ナビオープンから採用活動スタートではなく、それまでにいかに学生との接点を持っておくかが問われるようになってきます。企業にとっては、採用活動がますます大変な時代になってきました。

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