「コミュニケーション能力」と「チームで働く力」を重視
さて、企業は新卒社員(学生)にどのような能力や思考を求めているのでしょうか。従業員規模別の違いを含めて、上位の項目を確認していきましょう。すべての従業員規模で圧倒的な1位は「コミュニケーション能力」であり、中小企業(69%)と大企業(79%)で約7~8割、中堅企業では90%に上ります(複数回答)[図表5]。2位もすべての従業員規模で「チームで働く力」となっており、大企業の51%をはじめ、中堅企業43%、中小企業33%と3~5割になっています。3位以下は従業員規模による違いがありますが、「自律性」は大企業で4位(23%)、中堅企業・中小企業で3位(28%・30%)と、上位2項目と同様に比較的多くの企業が注視しています。そのほか、「企業理念への共感」は大企業(3位/26%)、中堅企業(4位/23%)、「適応力」は中堅企業(4位/23%)と中小企業(4位/19%)において、2割前後の企業が求めています。
大企業では、3位「自律性」(21%)、4位「企業理念への共感」と「前に踏み出す力」(ともに18%)がランクインしています。前記[図表5](学生に求める能力・思考)の「論理的思考力」はランク外で、代わりに「リーダーシップ」が入っています。中堅企業では、3位に「企業理念への共感」と「適応力」(ともに33%)、5位「自律性」(25%)が入り、[図表5]の「基礎的な学力」と「考え抜く力」はランク外となっています。中小企業では、3位「適応力」(27%)、4位「自律性」(25%)、5位「企業理念への共感」(20%)と続き、[図表5]の「論理的思考力」に代わり「調整力」(9%)がランクインしています。
上位8位までを見ると、若干の順位の違いはあれ、ほぼ同じ項目が並んでいます。その中で、大企業8位の「リーダーシップ」(10%)、中堅企業7位の「目標達成指向」(10%)、中小企業8位の「調整力」(9%)は、他の従業員規模ではランクインしていない項目となっている点が特徴的です。
2割の企業が「オヤカク」を実施
企業に対しても内定を出した学生本人ではなく、その保護者に向けた確認作業、いわゆる「オヤカク」をどの程度実施しているのかを調べてみました。全体では、「2024年卒採用以前から行っている」と「2024年卒採用までは行っていなかったが、2025年卒採用から行う」を合わせた17%が、「2025年卒採用でオヤカクを行う」としています[図表7]。従業員規模別では意外にも、「2025年卒採用でオヤカクを行う」割合が最も高かったのは、大企業の21%でした。大企業よりも採用に苦戦していると思われる中堅企業は13%にとどまります。大企業は内々定出しのタイミングが他の従業員規模より相対的に早いため、10月の正式内定までの期間が長く、本人だけでなく、保護者にも確認することで有効内定者数(最終的に内定承諾する可能性が高い内定者数)を確保したいという思いが強いのかもしれません。一方、今年3月に本欄で紹介した「マイナビ 2023年度 就職活動に対する保護者の意識調査」では、「保護者向け資料の送付」が8.6%、「保護者向け説明会実施の案内」はわずか2.2%と、[図表8]の企業調査とかなり異なる数値となっています。皆さんの実感値としてはどちらの結果に近いでしょうか。