今年4月には、新卒社員が退職代行サービス(以下、代行サービス)を利用している件が、何度もニュースで取り上げられました。中には、入社前から内定を辞退するために代行サービスを利用する就活生までいたそうです。「退職代行モームリ」を運営する株式会社アルバトロスによると、4月1~18日に新卒社員129人から申し込みがあったとのことです。1年前の2023年4月は1カ月間で18人だったことを考えると、大幅に増加しています。主な退職理由は、「業務内容や雰囲気が合わない」が半数近くを占め、次いで「事前説明と実態の乖離(かいり)」が約2割となっています。
大企業の半数以上が2023年内に面接開始
さて、今回は、HR総研が企業の採用担当者を対象に実施した「2025年新卒採用動向調査」(調査期間:2024年3月4~19日)の結果の続きをお届けするとともに、「楽天みん就」(現「みん就」)と共同で実施した「2025年卒学生の就職活動動向調査」(同:2024年3月6~21日)の結果の一部を紹介します。ぜひ参考にしてください。まず、「2025年新卒採用動向調査」結果から、選考面接の開始時期を見ていきましょう。
従業員規模別に見ると、1001名以上の大企業では、「2023年10月」と「2023年12月」「2024年1月」がそれぞれ15%で最多でした。次いで「2023年6月以前」が13%となり、合計で54%が2023年内に面接を開始していました[図表1]。前年同時期に実施した「2024年新卒採用動向調査」では、2022年内に面接を開始した大企業は31%だったことを踏まえると、実に20ポイント以上増加しており、大企業における採用活動の早期化がますます進んでいることが分かります。
一方、301~1000名の中堅企業と300名以下の中小企業では、採用広報解禁の「2024年3月」がともに20%で、大企業はその半分の10%にとどまります。2023年内に面接を開始した企業は、中堅企業30%、中小企業27%と大企業の約半分でした。中小企業では、「2024年7月以降」が28%で最多となるなど、大企業との採用活動時期の違いが明らかです。
企業はそのことをどこまで認識して、面接官にどのような対策を講じているのでしょうか。従業員規模を問わず最も多く実施されているのが「説明資料の配布、メール送信」で、大企業は69%と約7割に及び、最も実施割合が低い中小企業でも47%と半数近くの企業で実施されています(複数回答)[図表2]。次いで「面接官を集めた説明会」であり、大企業では41%に上りますが、中堅企業では半分の20%、中小企業ではさらに少ない16%にとどまります。「面接官を集めた社内勉強会を実施」は大企業で3割近くですが、中堅企業・中小企業では1割に満たず、「外部講師を招いた面接官研修を実施」は大企業でさえわずか5%にとどまります。
一方で、「特に何もしていない」と回答した企業が中小企業で45%と5割近くもあることが目を引きます。中には、面接に携わる人間が人事担当者と経営者に限られるようなケースもあるのでしょうが、それでも、面接手法というテクニック論ではなく、その年の「求める人材像」や「訴求ポイント」を確認するなど、何らかの事前準備は必要不可欠でしょう。面接は、自社に合う人材かどうか、学生の資質を判断するだけでなく、入社へのモチベーション形成の大切な機会でもあります。「特に何もしていない」と回答した企業の担当者には、事前準備の重要性を伝えていく必要があります。