メガバンク人気が復活

次は、学生の「就職したい業界」のTOP10を文系・理系別に見てみましょう。

文系では「通信、ネットワーク」がトップで25%、次いで「メガバンク、信託銀行」が23%、「情報処理、システム開発」が20%となっています[図表6]。前回トップだった「総合商社、専門商社」は14%で4位に後退しています。2位の「メガバンク、信託銀行」は前回の8位から大きく順位を上げています。数年前には「メガバンク、信託銀行」人気が低迷し、「就職したい業界」の上位ではなく、「就職したくない業界」の上位にランクインしたこともありましたが、見事に復活を果たしています。低金利による収益の低下やネット銀行の台頭など、銀行を取り巻く環境は激しく変化していますが、新たなビジネスモデルの創出や、各種人事制度や働き方の改革などにより、銀行のイメージは随分変わってきているものと推測されます。

一方、理系では「情報処理、システム開発」が前回調査に続いてトップで20%、次いで「紙、パルプ、化学、素材」が17%、「電気機器、電気電子部品」が16%、文系でトップだった「通信、ネットワーク」も15%でそれに続きます。

文系と理系の両方でTOP10入りした業界は、「通信、ネットワーク」、「情報処理、システム開発」、「総合商社、専門商社」、「電力、ガス」、そして「公務員」の五つ。「公務員」は、前回調査では文系、理系のいずれにおいてもTOP10入りはしておらず、一般的には「公務員離れ」が叫ばれている中でのランクインとなります。これまで景気の後退局面では、民間企業を避けて公務員志望の学生が多くなる傾向はありましたが、現在はコロナ禍からの景気回復期でもあり、今回のランクインの背景は不明です。
[図表6]文理別 志望業界TOP10(複数選択)
業界の次は、具体的な企業の絞り込みについても確認しましょう。「入社を志望する企業の検討状況」について、文系では既に「決まっている」とした割合が38%、「業界の中で検討中」が43%、「決まっていない」が20%となっています[図表7]。理系でも傾向は文系とほぼ同様で、「決まっている」が40%、「業界の中で検討中」が36%、「決まっていない」が24%となっており、文系・理系ともに入社を志望する企業が「決まっている」学生は約4割にとどまっています。

残りの約6割の学生は、これから志望企業を検討する段階です。母集団形成の段階にある企業にとっては、このようにまだ志望企業が定まっていない学生に向けて、自社に振り向いてもらうための継続的なPRが有効であると言えます。
[図表7]就職活動に関する情報収集源

転職は「スキル・経験を積んでから」の理系

学生の「転職」についての意識も確認しておきましょう。[図表8]は、将来の転職を視野に入れた企業選択をしているかどうかを聞いた結果です。文系では「している」が32%、「していない」が68%となっており、新卒での就職活動の時点で転職を視野に入れている学生の割合は3割程度となっています。一方の理系でも、「している」は26%となっており、文系よりやや少ないものの、こちらも3割近い学生が新卒の就職活動の時点で転職を視野に入れていることが分かります。
[図表8]将来の転職を視野に入れた企業選択
では、転職を視野に入れている約3割の学生は、「入社してから何年以内に転職したい」と考えているのでしょうか。

文系では「3年以内」が7%、「3~5年以内」が36%となっており、転職を視野に入れている学生の4割以上が5年以内の転職をイメージしていることが分かります[図表9]。一方、理系では「3年以内」が4%、「3~5年以内」が22%となっており、5年以内の転職をイメージしている学生は3割以下となっています。専門職を志望する学生が多い理系では、転職を視野に入れていたとしても、最初の会社である程度腰を据えてスキルや経験を積むことを重視する学生の割合が多いと考えられそうです。

入社してから何年で転職したいかに関して、最も多かったのは、文系・理系ともに「5~10年以内」で、文系の43%に対して、理系は61%と6割を超えます。さらに、それよりも長い「10年以上先」(「10~20年以内」と「20年以上先」の合計)は、文系・理系ともに13~14%で、同程度となっています。
[図表9]入社してから何年で転職したいか
ChatGPTなどの生成AIの就職活動への活用状況について見てみましょう。活用方法としては、「インターンシップのエントリーシート作成・添削」が最多で31%、次いで「自己分析」が25%、「採用選考のエントリーシートの作成・添削」が23%などとなっています[図表10]。一方で、「就職活動に生成AIを使う予定はない」が46%となっており、半数近くの学生は活用していない(活用する予定はない)ことも分かりました。

ただ、今後採用選考のエントリーシート提出など、就職活動が本格化していく中で、この割合が変化していくことは十分に考えられます。採用活動をする企業側としては、“生成AIの力を借りているかもしれない”エントリーシートや課題レポートなどをどう扱うのか、評価方法をこれまでと変えるのか・変えないのか、検討が必要となってきています。
[図表10] 生成AIの就職活動への活用

半数近くが「10社以上」のインターンシップに参加

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