解禁半年前にピークを迎える大企業のセミナー・説明会

次に、セミナー・会社説明会の開催時期について、従業員規模別に見てみましょう。これまでは、就活ルール上での採用広報解禁である「3月」がピークになることが通例でしたが、今回の結果を見る限り、中堅・中小企業では「2024年3月」ピークであるものの、大企業ではピークにはなっていません[図表7]。「2024年3月」は、中堅企業の50%に対して、大企業は26%と半分程度にとどまります。大企業では。その半年近くも前の「2023年11月」が34%で最多となっており、次いで「2023年10月」が32%で続きます。「2023年8月」には既に26%となった後、目立った大きな山はなく、30%前後が「2024年4月」まで続きます。

中堅企業では、ピークの「2024年3月」以外にも「2024年1月」45%、「2024年2月」40%など、他の規模よりも高い割合を示しています。一方、中小企業では、「2024年3月」は38%でピークとなっていますが、それ以外に30%を超える月はなく、全体的に低い割合となっています。「個別企業セミナーは開催しない」とする企業が28%と3割近くに及ぶことも特徴です。
図表7 対面形式のインターンシップ実施割合の前年比較
セミナー・会社説明会の実施形式についても確認してみましょう。全体では、「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が37%で最多であり、残りの形式は約20%で拮抗(きっこう)していますが、規模によっても異なるようです[図表8]。大企業と中堅企業では、全体と同じく「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」がそれぞれ40%、50%で最多となっていますが、中小企業だけは「対面形式のみで実施」が39%で最も多く、「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」は22%にとどまります。ただ、「対面形式のみで実施」と「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」を合わせた「対面派」と、「オンライン形式のみで実施」と「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」を合わせた「オンライン派」での比較では、いずれの規模も「対面派」が50%以上を占め、多数派となっています。セミナー・会社説明会における対面形式への回帰は、規模を問わず、着実に進行していると言えます。
図表8 セミナー・会社説明会の実施形式

ChatGPTの普及が「より面接重視」の採用を加速

2022年12月に登場したChatGPTをはじめ、採用・就職活動におけるAIの活用が話題になることが増えています。では、採用活動に一体どのくらいAIは活用されているのでしょうか。採用選考活動におけるAIの導入状況をまとめた結果が[図表9]です。

「検討中」と回答した企業がどの企業規模でも6割前後に達し、はっきり「活用しない」とする企業は大企業で17%と2割を下回り、中堅・中小企業ではいずれも31%となっています。

既に活用している企業の割合においては、中堅・中小企業ではいずれも5%を下回るものの、大企業では「書類選考(エントリーシート)のみに活用する」(6%)、「面接選考のみに活用する」(2%)を抑えて、「書類選考(エントリーシート)と面接選考の両方に活用する」が19%と2割近くにも及ぶことが分かりました。エントリーシートの選考におけるAI導入は、ソフトバンクがIBMの「Watson」の活用を始めた2017年(2018年卒採用)から徐々に広がりを見せていましたが、面接(動画面接)でのAI活用もエントリーシート選考に近いところまで、既に進んでいるようです。
図表9 選考活動へのAIの導入状況
2024年卒の就活生では、エントリーシート作成にChatGPTを活用した学生の割合は17%でした(HR総研×楽天みん就「2024年卒学生の就職活動動向調査」2023年6月1~12日。文系理系別の利用状況は、本連載「2023年9月」参照)。しかし、ChatGPTを活用してエントリーシート作成サービスを提供する就活サイトが現れたり、ChatGPTやその活用方法の認知がさらに広がりを見せたりしている中で、2025年卒学生におけるChatGPTの活用率は確実にさらに高くなることでしょう。企業は、その対策をどのように考えているのでしょうか。

エントリーシートにおけるChatGPT対策を確認したところ、全体では62%が「様子を見ている」、29%が「対策する予定はない」とし、「対策をしている」と「今後、対策する予定」を合わせた「何らかの対策を予定する」(以下同じ)割合は8%にとどまりました[図表10]。ただ、エントリーシートが多く集まる大企業においては、看過できない問題だと考える企業が少なくなく、「何らかの対策を予定する」と回答した企業は20%に及びます。ただ、対策の内容をフリーコメントで求めたところ、「使用しないで自分の考えを書くようにと一文加える予定」といった学生の良心に呼び掛けるだけの対策もあれば、「こちらもChatGPTで一次スクリーニングする」といった、AIにはAIで対抗するといった回答までありました。本当に「ChatGPTで一次スクリーニング」なんて、できるものなのでしょうか。もうこの領域になってくると、素人には何が可能で、何が不可能なのかも分からなくなってきますね。
図表10 エントリーシートにおけるChatGPT対策
ChatGPTが広がってきたからというわけではありませんが、かねてからエントリーシートが就活学生に与えている負荷の大きさが問題視されてきました。近年は、書類選考を合格した実際のエントリーシート例が、企業別に就活サイト上で公開されるなどの影響から、従来以上に内容の似通ったエントリーシートばかりが増えるなど、エントリーシートの是非や有効性が問われ始めています。そこで、今後のエントリーシートの導入取りやめ意向についても聞いてみました[図表11]

その結果、エントリーシート導入率の高い大企業では、「取りやめる予定はない」と回答した企業は79%と約8割に及ぶものの、「25卒採用から取りやめる(予定)」6%、「今後、取りやめることを検討している」11%を合わせた2割近い企業が、取りやめを視野に入れていることが判明しました。ChatGPTは、うまく活用すればビジネス上、非常に便利なツールである反面、本人の思考や文章力などを測る採用選考時のエントリーシートにおいては、本来それが持つ意味を根底から覆してしまうツールにもなり得ます。エントリーシートが本来の役割を果たせないとなると、これまで以上に面接のウエートが高まらざるを得ないということでしょう。
図表11 エントリーシートの導入取りやめ意向

人事は学生の何を見ているのか

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