「ターゲット層の集客」に苦労した企業
2022年卒採用についての最後の項目は、「2022年卒採用を実施して苦労したこと」です。全体で最も多かったのは「ターゲット層の応募者を集める」の42%、次いで「応募者の数を集める」が40%、「内定者フォロー」が28%、「応募者フォロー」が24%などとなっています[図表5]。企業規模別に見ると、「ターゲット層の応募者を集める」ことに最も苦労したのは中堅企業のようで、50%と半数に及びます。また、中小企業では、「ターゲット層の応募者を集める」の40%に対して、「応募者の数を集める」が43%と順位が逆転しています。ターゲット層にこだわるのではなく、とにかく応募者そのものを集めることが優先であるという切実な実態がうかがえます。
また、2020年10月に調査した「2021卒採用時で苦労したこと」では、「オンライン面接」や「オンライン説明会」、「採用スケジュール遅延」が上位に挙がっていましたが、今回は上位にはなく、コロナ禍2年目となった採用活動で、これらにしっかりと対応できた企業が多かったことがうかがえます。ただ、「オンライン説明会の開催」や「オンライン面接の実施」を選択した大企業はいずれも10%前後にとどまるのに対して、中堅企業ではそれぞれ21%、17%となるなど、オンライン対応にまだ苦労している企業も少なくないようです。
依然として新卒採用に慎重な中小企業
ここからは、2023年新卒採用の活動状況について見ていきます。まず、「2023年4月入社の大卒(大学院含む)採用計画数」を見ると、いずれの企業規模でも最も多いのは「前年並み」で、大企業では67%、中堅企業では60%と、ともに6割を超えている一方、中小企業では33%と3割程度にとどまっています[図表6]。次に、「2023年卒採用における自社の課題」について、本調査と2022年卒採用動向調査(2020年10月調査)の回答を比較すると、どちらも「ターゲット層の応募者を集めたい」が顕著に高いものの、特に2023年卒では54%と過半数を占め、2022年卒の45%から9ポイント増加しています[図表7]。[図表5]で見たように、2022年卒採用で最も苦労したことは、引き続き2023年卒採用でも最大の課題となっているようです。
一方、「オンライン・WEB化対応を進めたい」は2022年卒の18%に対して2023年卒では5%まで下がっており、苦労はしたものの多くの企業で必要なオンライン・Web化対応はおおむね完了し、課題解決ができている企業が多いことがうかがえます。ただし、採用活動のオンライン化が進んだことで、採用活動における応募学生とのコミュニケーションの密度と内容が希薄化する傾向にあり、学生に対する企業のグリップ力が弱まり、ひいては内定辞退されやすい状況となるなど、次の課題を生み出す結果となっています。