応募が増える反面、グリップが弱くなるとの懸念も

オンライン面接を実施している企業を対象に、オンライン面接の長所と短所をフリーコメントで回答してもらいましたので、それぞれ抜粋して紹介します。「遠方学生の応募の増加」や「スケジュール調整が容易」などの長所がある反面、「通信環境のトラブル」や「雰囲気をつかみづらい」などの短所もどうしても付きまとうようです。

■オンライン面接の長所
・遠方の学生にも負担をかけずに選考できる。会社としても出張費が大いに削減された(1001名以上、百貨店・ストア・専門店)
・面接官の日程調整等が効率化できた(1001名以上、人材サービス)
・学生の予約を取りやすい(1001名以上、情報サービス)
・日程の設定が容易になった。学生が参加しやすくなった(1001名以上、百貨店・ストア・専門店)
・コロナ禍であるため、今、オンラインを全く実施していないということも学生に悪い印象を与えると思われる(301~1000名、輸送機器・自動車)
・発言内容に集中できたこと(301~1000名、医療・福祉関連)
・経費の削減、ペーパーレスの推進(301~1000名、食品)
・応募者を獲得しやすい、広域の学生から応募が増える(301~1000名、情報処理・ソフトウェア)
・学生が対面よりリラックスして面接に臨んでいる印象を受ける(301~1000名、その他メーカー)
・今後主流になるであろう対面以外のコミュニケーションスキルや、IT活用スキルを確認できる(300名以下、コンサル)
・面接内容を録画できる(300名以下、その他メーカー)

■オンライン面接の短所
・細かいニュアンスや表情の変化が伝わりづらく、本音が見えにくい(1001名以上、旅行・ホテル)
・対面に比べてグリップが弱い(1001名以上、情報処理・ソフトウェア)
・体格や立ち居振る舞いのように、画面越しだと分からない部分がどうしてもある(1001名以上、百貨店・ストア・専門店)
・限られた時間内での意思疎通(1001名以上、電機)
・オンライン面接で評価の高い学生が対面では全くレベルが高くないなど、見極めが全くできていないことがあった(1001名以上、食品)
・回線トラブルが発生する可能性がある(1001名以上、情報サービス)
・学生の入社意欲の醸成が困難(301~1000名、食品)
・集団面接となると、全員の通信環境が整わないと面接にならない(301~1000名、商社)
・学生が内定承諾後の就活を続けやすい傾向にあった(301~1000名、住宅・インテリア)
・対面よりもどうしても空気感が読みにくく、学生の印象をつかみづらい(301~1000名、その他メーカー)
・ざっくばらんな会話がしづらい(300名以下、情報処理・ソフトウェア)
・待合室での様子など、面接前後の様子を観察できない(300名以下、情報処理・ソフトウェア)
・リアルでの学生が放つ人間性が伝わらない。学生に会社の立地や雰囲気を伝えられない(300名以下、その他メーカー)

大企業とそれ以外で内定充足率に明暗

ここからは内々定に関する調査結果を見ていきましょう。まずは、6月前半時点での内定充足率(採用計画数に対する有効内々定者数の割合)です。全体では、「0%(内々定者ゼロ)」26%、「80%以上」(「80~100%未満」から「120%以上」の合計、以下同じ)28%となっています[図表7]
第124回 「学生の内定率」や「企業の内定充足率」上昇の裏側では何が起こっているのか
ただし、従業員規模別に見ると、「0%」は大企業6%、中堅企業15%、中小企業では実に41%と、従業員規模が小さくなるほど、極めて厳しい現状が見て取れます。同様に「80%以上」の割合も、大企業では46%と半数近くに達しているのに対して、中堅企業29%、中小企業に至っては22%と大企業の半分以下となっています。

参考までに、比較対象として2020年卒[図表8]と2021年卒[図表9]の同時期調査の結果データも再掲しておきます。
第124回 「学生の内定率」や「企業の内定充足率」上昇の裏側では何が起こっているのか
第124回 「学生の内定率」や「企業の内定充足率」上昇の裏側では何が起こっているのか
2021年卒の採用戦線では、新型コロナウイルス感染症問題が、採用活動が本格化する直前の2000年1月に日本でも騒がれ始め、2~3月には合同企業説明会が急きょ中止となったほか、各企業も従来の対面型の説明会や面接について未経験のオンライン化対応を迫られるなど、企業・学生双方に大きな混乱が生じました。それにより、それまでは前年よりも速いペースで進捗していた採用活動に大きくブレーキがかかる結果となり、6月の調査段階では逆に前年よりも大幅に遅れた進捗結果となったわけです。具体的な数値で見てみましょう。

2020年卒では「0%」と回答した企業は、大企業で10%、中小企業でも32%でした。ところが、2021年卒のデータを見ると、大企業でも18%と8ポイント増え、中小企業に至っては53%と21ポイントも増加しています。これとは対照的に「80%以上」を見てみると、2020年卒では、大企業で44%、中小企業でも32%もあったところが、2021年卒では大企業で38%と6ポイント減少し、中小企業で20%と12ポイントも減少しています。

今年の内定充足率は、大企業では2020年卒をわずかに上回るペースで進行しているのに対して、中堅・中小企業は2020年卒よりもかなり下回っています。大企業とそれ以外の企業との間で二極化が進行している模様です。

大企業でも内定者の半数がインターンシップ参加者である企業が2割に

次に、既に内々定者がいる企業で、かつインターンシップを実施した企業だけを対象にして、内々定者に占めるインターンシップ参加者の割合を確認してみました。ここでは、インターンシップから選考を進めたかどうかは関係なく、インターンシップと切り離した選考を展開した企業でも、あくまでも結果として、内々定者のうちインターンシップ参加実績者がどれだけいるかの割合になります。

全体では、「0%(参加者からはゼロ)」という企業は9%のみ、つまり、残り91%は少なくとも内々定者の中にインターンシップ参加者が最低1人はいるということです[図表10]
第124回 「学生の内定率」や「企業の内定充足率」上昇の裏側では何が起こっているのか
従業員規模別に見ると、「0%」が中小企業では21%もあるものの、中堅企業ではわずか3%、大企業に至ってはゼロです。大企業では採用人数も多いこともあり、「100%」はおろか、「60%以上」(「60~80%未満」から「100%」の合計)ですら皆無となっておりますが、「40~60%」、つまり内々定者の半数前後をインターンシップ参加者が占める企業の割合は、2割(19%)にも及びます。

企業規模が小さくなると、内々定者に占めるインターンシップ参加者の割合は高くなる傾向があります。例えば、中堅企業では「80~100%未満」が6%あるほか、中小企業では「100%」が1割近く(9%)もあります。「40~60%」以上の割合は、中堅企業は36%、中小企業では44%と4割前後にも及び、大企業の2倍前後にもなっています。採用活動におけるインターンシップの有効性を実感できる数字と言えるでしょう。

内定充足率は改善するも、楽にはならず

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