大企業で1Dayタイプが主流になる一方で、中小企業は長期タイプも模索

続いて、実施予定のインターンシップのタイプ(期間)を聞いてみたところ、圧倒的に1Dayタイプ(半日~1日程度)のインターンシップが多くなっています[図表4]。最も多い「1日程度」タイプを予定している企業は全体で59%、企業規模別では大企業が最も多く、67%と3分の2に及びます。「半日程度」のタイプを予定している大企業は29%と他の企業規模よりは少なくなっていますが、1Dayタイプのいずれかを予定している企業は全体で84%、大企業でも76%に達します。
第98回 大卒求人倍率が8年ぶりに低下ー新卒・既卒を問わない専門スキル重視の通年採用を拡大
逆に、1Dayタイプを実施しない企業の割合は、大企業で24%、全体では16%にすぎません。特に、中堅企業では1Dayタイプを実施する企業の割合が高く、実に92%に達します。先の[図表3]と併せて見ると、実施時期は「1~2月」と遅めで、1Dayタイプで人数を集めるやり方が中堅企業の特徴のようです。効率性を重視していると言えます。中堅企業では、「1週間程度」タイプや「2週間程度」タイプの実施割合も相対的に低く、いずれも大企業や中小企業よりも10ポイント以上低くなっています。
中小企業では、「2週間程度」タイプのインターンシップを実施している割合が18%と大企業(14%)よりも高くなっているほか、「3週間~1カ月程度」タイプが6%、「1カ月以上」タイプが9%と、いずれもどの企業規模よりも高くなっています。1Dayも実施する一方で、「複数日程~長期」タイプのインターンシップを実施する企業も53%と過半数に達するなど、自社に適したインターンシップを模索する動きが最も盛んであると言えそうです。

早期化に拍車がかかる中小企業の新卒採用

自社の2021年新卒採用活動スケジュールの予定を回答してもらったところ、最も多かったのは「ほとんど変わらない」とした企業で、全体で66%と3分の2の割合でした[図表5]。ただし、次いで多かったのは、「1カ月超早まる」とした企業で、全体で17%という結果でした。
第98回 大卒求人倍率が8年ぶりに低下ー新卒・既卒を問わない専門スキル重視の通年採用を拡大
企業規模別に見ると、経団連による縛りが解かれる大企業でもっと早期化が進むかと思われましたが11%と意外と少なく、中堅企業が15%、中小企業では20%と、企業規模が小さくなるほど前倒し傾向が強くなっています。大企業が早くなると見越してのスケジュールなのかもしれません。「1週間以内早まる」から「1カ月超早まる」とした企業の合計、つまり「早まる」と回答した企業は、全体で29%、企業規模別では大企業で27%、中堅企業で25%、中小企業で31%となっています。ちなみに、「遅くなる」と回答した企業は皆無でした。

意外と進まない「通年採用」

政府が採用スケジュールの維持を打ち出してはいるものの、経団連が自主的に設定していた指針を廃止すると表明した影響は少なくないでしょう。ただ、1年目の2021年卒採用では若干の時期の早期化が予想されるものの、中長期的に見て「通年採用」への動きは加速するものでしょうか。ここでは、4月22日の「産学協議会」の提言にあるような、「新卒一括採用」と「通年採用」の併用ではなく、二者択一としての新卒採用の「通年採用化」の可能性について聞いてみました[図表6]
第98回 大卒求人倍率が8年ぶりに低下ー新卒・既卒を問わない専門スキル重視の通年採用を拡大
「すでに通年採用を実施している」企業が15%ありましたが、残りの企業はどう考えているのでしょうか。最も割合が多かったのは、「いずれ通年採用を実施すると思う」の39%で、次いで「通年採用に移行することはないと思う」の36%、「2021年卒採用から通年採用を実施予定」とする企業はわずか4%にとどまりました。
「いずれ通年採用を実施すると思う」企業においても、「いずれ」はどの程度の期間をイメージしているかは回答企業によってバラバラでしょう。数年以内をイメージしている企業もあれば、10年から20年というスパンで考えている企業もあるでしょう。「いずれ通年採用を実施すると思う」企業が4割近くあるとは言え、経団連が手を引くことで一気に採用戦線が様変わりすることはなさそうです。今回の「産学協議会」の提言にあるように、目安となる時期の論争はあるとはいえ、「新卒一括採用」は当分なくならないと考えたほうがよさそうです。

相談相手として頼られていない「父親」

ここからは、2020年卒業予定の大学生を対象として実施した「2020年就職活動状況調査」の結果を抜粋して見ていきます。まずは、先の「親対策」にも通ずる設問として、「就職のことでよく相談する人は誰か」を聞いたところ、文系・理系ともにトップは「友人」で6割以上の学生が選択しています[図表7]。次いで多かったのは「母親」で、文系では42%、理系でも36%に上ります。「父親」は、文系で26%、理系でも25%と同程度の割合になっていますが、理系では「大学の先輩」が35%(文系は26%)で「父親」よりも上にいます。理系では、研究室を通じてのタテのつながりが強く、それがこの結果となっているのでしょう。
第98回 大卒求人倍率が8年ぶりに低下ー新卒・既卒を問わない専門スキル重視の通年採用を拡大
「母親」と「父親」のポイント差は、文系で16ポイント、理系でも11ポイントもあります。「父親」は、子どもの就職という一大イベントにおいて、相談相手として頼られていないという悲しい現実、残念ながらこの傾向は調査開始以来ほとんど変わっていません。「親対策」の施策も、「母親」を主眼に置いた取り組みを考える必要がありそうです。

6割以上の学生が3社以上のインターンシップに参加

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