6割以上の企業で正社員を採用予定。3年連続で6割を超えるも3年ぶりに前年を下回る
の状況が続くなか、企業は正社員の採用に関してどのように考えているのだろうか。はじめに帝国データバンクは、2024年度(2024年4月~2025年3月入社)の正社員の採用状況について尋ねた。すると、「採用予定がある」と答えた企業は前回調査(2023年2月実施)から1.5ポイント減の61.5%(増加する:23.7%、変わらない:29.2%、減少する:8.6%の計)だった。雇用動向は3年連続で6割を超えたものの3年ぶりに前年を下回り、前年度までの勢いがやや鈍化した。
「採用予定がある」とした企業からは、「運転職の平均年齢が上昇しているため、定員確保に苦慮している新卒・中途ともに、女性ドライバーの雇用や定年退職者の継続雇用に力を注いでいる」(運輸・倉庫)、「働き方改革などで労働時間の減少や休日を増やす傾向があり、人員を多く採用しなければならない」(医療・福祉・保健衛生)といった声が聞かれたという。
一方、「採用予定はない」とした企業からは、「社員募集をしても応募がなく、中小企業の雇用は難しくなっている」(飲食料品卸売)といった声が複数あがったほか、「人件費がかさんでいくのに販売価格は大して上がっておらず、雇用はしたいがしにくい状況に陥りつつある」(飲食料品・飼料製造)との意見もあったとのことだ。厳しい経営状態から採用を控えざるを得ない企業もあるとうかがえる。
正社員の採用予定は大企業で8割超。中小企業は約6割と、企業規模が小さいほど割合は低く
続いて同社が「正社員の採用予定がある割合」を規模別にみたところ、「大企業」は84.9%と全体(61.5%)を大幅に上回った。一方で、「中小企業」は57.5%、うち「小規模企業」は39.9%となり、企業規模が小さいほど割合が低くなる傾向がみられた。
また、同割合を業界別でみたところ、2024年問題が懸念されている「運輸・倉庫」が69.7%で最も高く、同様に人手不足が深刻化している「建設」(66.6%)のほか、「サービス」(66.6%)も6割を超えて並んだ。
正社員採用予定が最多の業種は「旅館・ホテル」。2024年問題が懸念される「医療・福祉」、「人材派遣」なども上位に
さらに同社は、「正社員の採用予定がある割合」を細かい業種で調べた。すると、コロナの落ち着きによる人流の増加やインバウンドの好調で人手不足感が高まる「旅館・ホテル」(80%)が最も多かった。以下、「2024年問題」が懸念される「医療・福祉・保健衛生」(79.2%)、「人材派遣・紹介」(78%)でともに8割に迫り、ITエンジニア不足が顕著な「情報サービス」(73.3%)も7割を超えた。また「人材派遣・紹介」をみると、採用が「増加する」とした企業は44.2%と4割を超えた。
4割近くの企業で多様な人材採用を強化。「女性」が最多、「外国人」も増加の動き
最後に同社が、今後の「『女性・高齢者・外国人・障がい者』の雇用および採用状況」を尋ねたところ、いずれかの人材について「採用予定がある企業」は8割に迫ったという。なかでも、「採用を拡大する企業」は4割近くとなり、企業で多様な人材の採用を強化する動きがみられたとのことだ。そこで同社は、「採用予定がある人材」の内訳を調べた。すると、「女性」が72.6%で最も多く、以下、「高齢者」(50.2%)、「外国人」(31.6%)、「障がい者」(30.4%)と続いた。
同様に、「採用を拡大する企業」の割合をみたところ、「女性」(19.4%)が最も高かった。一方、「外国人」(16.7%)および「障がい者」(13.8%)の割合は「高齢者」(10.9%)を上回る結果となり、特に「外国人」は「採用を拡大する企業」の割合が「変わらない」を上回った。