自衛隊は若年定年制および任期制という退職制度を導入しているため、退職した自衛官はその後の生計を立てるため、民間企業や団体等へ再就職することになります。しかし、こうした制度については、企業の人事担当者にもまだまだ広く周知されていないのが実情です。人材不足に悩む企業にとって、厳しい任務の中で多様な能力や人間性を育んできた自衛官は、まさに採用すべき人材と言えるでしょう。

そこで今回は、退職航空自衛官の再就職を援護する防衛省 航空幕僚監部 人事教育部募集・援護課長の杉谷氏と、外部パートナーとして再就職活動を支援する株式会社パソナ キャリアアセット事業本部 ネクストキャリア営業部 自衛隊就職支援室 室長の宮本氏にご登場いただき、退職航空自衛官を企業が採用するメリットや、制度に関する課題点およびその対応策などをお話いただきました。(以下敬称略)

【出演者】


  • 杉谷 康征氏

    ■杉谷 康征氏
    防衛省
    航空幕僚監部人事教育部募集・援護課長

    1995年3月、航空自衛隊に入隊。入隊後から主に地対空誘導弾の運用に係る業務に従事。2010年4月に第3高射群第11高射隊長 兼 長沼分屯基地司令に就任。2011年8月より、航空幕僚監部 人事教育部 援護業務課において、就職援護業務を経験。その後、2020年6月、自衛隊静岡地方協力本部長に就任。2023年10月より現職。隊員の募集や退職航空自衛官の就職援護、予備自衛官の招集に関する業務などを担い、航空自衛隊を人事領域で支えている。

  • 宮本 真知子氏

    ■宮本 真知子氏
    株式会社パソナ
    キャリアアセット事業本部 ネクストキャリア営業部 自衛隊就職支援室 室長

    大学卒業後、リース会社にて人事・営業を経験。その後、日本語教師を目指すため退職し、国内日本語学校にて日本語教育に従事。2005 年、パソナ入社後人材派遣コーディネーター・再就職支援コンサルタント、パソナグループ新入社員ビジネスマナー研修インストラクター、ジュニアボード・副役員などさまざまな職務を経験。2020年より、任期制自衛官就職支援事業に携わり、 2021 年からは、自衛隊就職支援室 室長として退職航空自衛官の再就職支援における、事業運営・企画立案、補導教育・援護教育企画立案・講師、アドバイザー統括などを行う。

防衛省航空自衛隊杉谷氏、パソナ宮本氏

精強性を維持するための自衛隊退職制度。
2024年度は1,000人以上の航空自衛官が退職予定

――まずは自衛隊の退職制度についてご説明ください。
防衛省航空自衛隊杉谷氏
杉谷 有事への対応が求められる自衛隊は、精強性を維持することが必要不可欠なため、若年定年制および任期制という退職制度を採用しております。退職する年齢は、定年制の航空自衛官(幹部、准尉、曹)の大部分が50歳代半ば、任期制の航空自衛官は20~30代半ばという若さです。

2024年度には、定年制で年間約700人、任期制で年間約600人、合計で年間約1,300人の航空自衛官が退職し、その後は民間企業などへ再就職する予定となっています。こうした中、各自衛官が退職後の生活に不安を抱くことなく、職務に専念できるよう、当部署を中心として再就職の支援を行っております。

――人事教育部募集・援護課では、具体的にどのような支援を行っているのでしょうか?

杉谷 退職後、すぐに新たな職場で働けるような状態にするのが、我々に課せられた使命です。そのため定年制の場合は定年退職する概ね3年前から、任期制の場合は入隊3年目以降から、「就職援護(就職支援)」という名で再就職をサポートします。

具体的な就職援護施策としては、再就職に必要な知識や技能についての教育・訓練や、今後のライフプランについて考える講習等を実施し、またどんな仕事を志望しているのか個別にヒアリングも行っています。さらに再就職先を斡旋する自衛隊援護協会という組織と、本人との間に立って、求人情報を取り次ぐなど、橋渡し的な役割も担っております。

――自衛官の再就職に関してはパソナさんでもご支援されているそうですが、どのような形で関わられているのでしょうか?
パソナ宮本氏
宮本 弊社は、防衛省からの委託により、任期制の自衛官の方々の再就職支援を首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)と愛知県にて行っております。任期制の方々への就職援護は例年6月くらいから始まるのですが、まずは自衛官に対し担当アドバイザーを1人つけ、1対1の面談を皮切りに、応募書類の添削指導、面接トレーニング、就職活動に必要な内容を学ぶ為の就職補導教育を行うなど、年間を通じて就職活動に必要な適切なステップを踏みながら、企業とのマッチングの場となる合同企業説明会へつなげていきます。

合同企業説明会では、企業の人事担当者様が会社概要や事業内容についての説明や、自衛官の方々からの疑問・質問に答える事で、直接コミュニケーションを図ることができ、より企業理解を深める事が出来ます。実際、多くの自衛官の方々が合同企業説明会を通じて応募先の検討や、再就職先を決定するため、双方にとって非常に有効なイベントと言えます。

チームワークや瞬時の判断力は、航空自衛官ならではの強み

――退職した航空自衛官を採用することで、企業にはどのようなメリットがあるとお考えですか?

杉谷 まず企業の方々が口を揃えておっしゃっていただけるのは、「身元がはっきりしている」ということ。自衛隊という国の組織に所属しているので、安心して採用いただけると思います。それとこれはすべての自衛官に共通していることですが、厳格な命令系統の中で日々職務を行っているため、上下関係やルールをしっかりとわきまえた上で、理性を持って立ち回ることができるのも特徴の一つと言えるでしょう。

他にも、・・・

協力:防衛省航空自衛隊


この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。

●航空自衛官の特有とも言える採用メリットとは?
●活躍の幅を広げている、航空自衛官の再就職先の現状
●退職航空自衛官の再就職における課題~新規求人開拓と周知に向けた取り組み
●近年のトレンドにも対応しているキャリア・スキルアップ支援の全容
●パソナの支援のもと、変わりつつある就職活動の形

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