人手不足が続くなかで、外国人材のニーズが高まっている。外国籍社員(インターナショナル人財)の積極的な雇用に取り組む企業の1つが、『焼肉きんぐ』や『丸源ラーメン』など多彩なブランド展開を見せる株式会社物語コーポレーションだ。だが同社にとってインターナショナル人財は「単なる労働力ではない」という。

そこで今回、外国人材の紹介と活用戦略立案で知られるリフト株式会社の代表取締役・杉村哲人氏が物語コーポレーションを訪問。同社の経営理念推進・D&I本部 本部長である横浜任氏に話をうかがい、インターナショナル人財を採用・育成する意義に迫った。(以下敬称略)

【対談者プロフィール】


  • 横浜 任氏

    ■横浜 任氏
    株式会社物語コーポレーション
    執行役員 経営理念推進・D&I本部 本部長

    叔父が経営する焼肉店で修業後、焼肉を中心としたレストランのチェーン店を経営する大手外食企業に入社。事業部長を経験したのち、2005年に物語コーポレーションに入社。店長職を経験したのち、本社にて営業企画、丸源事業部長、採用や広報の部署長を経て2021年より現職。物語コーポレーションの人事領域全般および経営理念推進に関する業務を担っている。

  • 杉村 哲人氏

    ■杉村 哲人氏
    リフト株式会社 代表取締役
    一般社団法人 外国人雇用協議会 理事

    早稲田大学政治経済学部卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。中堅・中小企業に対する 新規事業進出支援などに携わる。2015年「Diversity & Inclusionを実現する」というミッションを掲げ、リフト株式会社を設立。「外国人材活用のための新しい選択肢、戦略の提供」を目指し、人材紹介から定着支援まで、幅広くサービス展開を行う。
    2021年一般社団法人 外国人雇用協議会の理事に就任。外国人材関連の講師実績多数。

リフト杉村氏、物語コーポレーション横浜氏

日本における外国人材の雇用は大きな転換点を迎えた

--まずは外国人材の雇用に関して、ここ数年の日本の状況やトレンドについて振り返っていただけますか。

杉村 円安の影響で、諸国と比べて日本の賃金は相対的に下がっています。実は、コロナ明けからこのまま外国人に働き続けていただけるのか、コロナ禍で落ち込んだ訪日外国人労働者の数が元の水準に戻るのは難しいのではないか、という不安を抱いていました。

横浜 確かに現在の日本は、経済的な点だけを見ればいい働き先とはいえません。ところが「それでも日本で働きたい」という人がたくさんいらっしゃいます。
物語コーポレーション横浜氏
杉村 はい。その不安もいまのところ杞憂となっています。2022~2023年にかけて在留外国人は毎年30万人ずつ増加し、2024年は過去最高の34~35万人増と見込まれています。

横浜 つまり、お金だけではないわけです。安全・便利・清潔さ。弊社を志望する留学生に「なぜ日本で働きたいのか?」と聞くと、よく「安心して生活できるから」という答えが返ってきます。

杉村 例えば、夜に女性が一人でコンビニに行けるような安心感のある生活環境が、日本の魅力の一つとされています。こうした安全で便利な暮らしが、日本で働く人々から母国へ伝わり、多くの外国人が日本を働き先として選ぶ理由となっているようです。

とはいえ、日本の就労人口約6,500万人に対し、外国人労働者は約200万人で、割合は約3%にとどまります。この数字は、G7各国の中で最も低く、例えばアメリカの約18%、イギリスの約10%強と大きな開きがあります。
リフト杉村氏
そんななかで、月5,000~7,000人のペースで急増しているのが“特定技能”の在留資格で働く人たち。とりわけ物語コーポレーション様をはじめとする外食業界での受け入れも多く、この動きを牽引しています。外食業界では、上場されている企業が特定技能による採用を「働き手を確保するための戦略」としてIRでアピールする例も増えています。

横浜 私たちは社員全員に「リーダーを目指してください」と伝えています。外食業におけるリーダーとは、たとえば店長です。日本人でも外国籍社員でも、試験を受ければ公平に昇進できる仕組みを取り入れています。ただ、特定技能1号の在留資格は、制度上「人手不足を補うための一時的な労働力」という側面が強く、長期的なキャリア形成にはつながりにくい仕組みです。一方で、我々は外国籍社員を単なる労働力ではなく、我々と異なる文化や価値観を持ち、議論を交わしながらともに成長する仲間であると考えています。そのため、これまでは専門知識や技術を活かせる「技術・人文知識・国際業務(技人国)」で働けるポジションでのみ正社員のインターナショナル人財を採用してきました。

そこへ2024年、特定技能2号の就業先として外食業が追加されました。これは、習熟した技能と経験を持ち、現場のリーダーができる水準が求められる在留資格で、これなら我々の考えともマッチすると考え、この在留資格での採用もスタートさせたのです。2024年12月1日時点で、特定技能のインターナショナル人財は計13名が在籍しています。

杉村 技人国のビザは、文系の人にとっては狭き門でした。特定技能2号の分野追加は、多くの業界において革命的な転換点になったと思います。

協力:リフト株式会社


この後、下記のトピックが続きます。
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●ダイバーシティ推進の先にある、イノベーション創出と組織の成長
●多様性のある組織が大事にすべき「意思決定」の重要性
●外国人材の採用や育成、定着に向けた多角的な取り組みの全容
●外国人材の採用・定着率向上につながっている最大の要因
●人材不足が進む中、物語コーポレーションが目指すスタンスとは?

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