JALがAIチャットボットを試験導入

ここからは、就職ナビとは離れて、個別の企業の新しい動きをいくつかご紹介したいと思います。
まずは日本航空(JAL)です。同社は、志望学生とのコミュニケーションチャネルとして「JAL就活AIチャットボット“AIまるこ”」(チャットボット:自動会話プログラム)を試験導入しました。これは、NTTレゾナントが提供する「goo AI x DESIGN」を活用したもので、「先輩社員にチャット上で気軽にOB・OG訪問を行える」をコンセプトに、AI社員が応募者から寄せられる各種質問に会話形式で回答するサービスです。「goo AI x DESIGN」のHR領域への導入としては初のケースになります。NTTレゾナントの「gooのAI」エンジンは、「教えて!goo」の約3000万件のQ&Aデータを学習しており、JALが保有するOB・OG訪問時によくある質問への回答データなどを組み合わせ、仮想の「JALで働く先輩社員」を作り上げるというものです。学生はOB・OG訪問をすることなく、業務内容や働き方、採用情報など、JALの社員に聞きたい疑問を気軽にいつでも質問ができることになります。

学生は、「LINE」上で、QRコードもしくは、「友だち追加」から「AIまるこ」と検索して友だちになることで利用が可能になります。今回の導入対象は、2020年度入社の新卒採用のうち「業務企画職」に限定され、期間は2019年3月1日~6月30日までの予定。今後、ニーズや技術的な検証結果を踏まえ、他の職種や中途採用への展開を検討していく方針のようです。学生はいつでも気軽な会話を通じて企業理解を深められるだけでなく、企業にとっても採用担当者の問い合わせ対応への負荷軽減につながる面白い施策だと思います。

住友生命はWEB面談導入

続いては、住友生命保険です。同社は、地方の学生と本社で働く社員とがインターネット上で直接対話することで、業務理解を深めてもらい、入社意欲を向上させるべく、「WEB面談」を導入しました。「WEB面接」ではなく、あくまでも「WEB面談」で、採用の合否とは切り離し、学生が率直に質問できる場をつくることが目的です。

主な対象は総合職を志望する地方在住の学生で、希望者は資産運用や商品開発などに従事する本社社員と1時間程度、平日を中心に面談できるようにするとのこと。地方の学生の窓口は、札幌、仙台、名古屋、福岡の各都市の拠点になるものの、地方拠点には営業や販売部門の社員が多く、本社が担う業務の現場に詳しい社員は必ずしも配属されていません。学生からの専門的な部分にまで踏み込んだ質問に対して、地方拠点では満足な回答ができておらず、本社から社員を休日に出張させることもありましたが、対応には限界があり、地方の優秀学生を逃さないためにも今回の導入に至ったようです。国内の生命保険会社では初の試みになります。

パナソニックは、職種確約コースに「人事」と「経営戦略」を追加

2019年入社の採用活動から事務系の職種確約コース(初期配属)を設けていたパナソニックは、2020年入社の採用から同コースの対象職種を拡充すると発表しました。これまでは、「経営経理職」と「法務・知財職」だけでしたが、新たに「人事職」と「全社経営戦略職」を加えました。

「人事職」の対象は、「パナソニックの企業価値最大化のための“人・組織・風土”の実現にチャレンジし経営貢献したい方」「人事部門の仕事に興味を持ち、会社活動の担い手である“人”に関わる仕事に携わりたい方」としているだけで、特に資格等の条件はつけていません。これに対して「全社経営戦略職」の対象は、「パナソニックのコーポレート戦略部門で経営企画、財務IR戦略、事業開発 M&A、次世代モビリティ事業戦略など全社経営戦略に関わる仕事に挑戦したいという強い希望をお持ちの方」「事業での幅広い経験を通じて企画力を高め、企画のスペシャリストとして経営に貢献したい方」「経営学修士課程や、経営・財務などの分野を専攻している方で、ビジネスレベルの英語(TOEICスコア 750程度)、又は中国語(HSK 5級程度)を活用できる方」との条件を課しています。また、提出する自己PR書には、「パナソニックの経営・競争環境を分析し、課題を抽出した上でその解決策の提案」「上記の実現のために自らの果たしたい役割」「これまで困難な目標を達成するために、多様な人々とコラボレーションをして取り組んだ経験について、自らの役割を明確にし、具体的に記述」を求めるとともに、4月下旬から5月上旬に2回予定されているWebセッションへの参加も条件になるなど、他の3職種と比べるとハードルが高く設定されています。

意欲が高く優秀な学生を取り込む施策として、日本企業においても配属する職種を確約しての採用方法を導入する企業は、今後も増えてくるものと思われます。日本固有の「メンバーシップ型」雇用から、欧米の「ジョブ型」雇用へ向けての一歩につながる動きと言えます。

この記事にリアクションをお願いします!