学生に不評な面接でのAI活用
次に、面接へのAIの活用についての学生の思いを見てみましょう[図表4]。こちらも「どちらともいえない」と態度を保留した学生が5割を超えていますが、エントリーシートと比較して、「反対である」とした学生が格段に多くなっています。こちらもそれぞれの理由の一部を紹介します。
【賛成】
・主観が入らない。面接官と相性が悪かったということがなくなるかもしれないから(神戸大学、文系)
・その企業の技術に対する姿勢の指標となる。ある程度の公平性が担保される(東北大学、理系)
・面接の合否基準は渡されていると思うが、面接官によって価値観が異なるので、面接官Aでは合格できたのに面接官Bと面接したため落選したということがあると学生側としていたたまれないと思うから(早稲田大学、文系)
・地方組にとって、東京へ行くのは経済的にも重荷になるので、動画やスカイプ等でできるのは魅力的だから(同志社大学、文系)
・一定の基準以外の要素で判断されることがないため(千葉大学、文系)
・経費削減、人工知能は合理的であると考えるので納得がいく(大阪市立大学、文系)
・人だけだと見た目や雰囲気に流されていい評価をしてしまうことがありそうだから(青山学院大学、文系)
【どちらともいえない】
・AIの判断基準が分からないから、何とも言えない。もしかすると、人が面接するより公平ということもあるかもしれないが、特別な能力がないと受からない、などとなったら困る。(大阪大学、文系)
・作業の効率化を図るには利用するべきであると思う一方で、本当に正しく判断できるか心配になるため(九州大学、理系)
・印象という曖昧な基準をAIが測れないと思うので印象を重視する面接の場合は不適切、それ以外では有用に思う(宇都宮大学、理系)
・人と人で話して判断するのが面接だと思うので、採用という企業にとっても大事な選考過程において機械を入れるのはおかしいと思う(宮崎大学、理系)
・効率面を考えると賛成だが、ロボットに人生を決められたくない(龍谷大学、文系)
・AIと話すことに対して慣れていないため、また別に対策が必要になる。しかし、感情論ではないところはメリットになると考える(東洋大学、文系)
・人と話したほうが楽しく話せるが、個人差なく合否判定ができるのは良いと思う(福岡大学、文系)
【反対】
・これからともに働くことになる人たちなので、じかに言葉を交わしながら、判断するべきだと思う(大阪大学、文系)
・機械によるパターン化された人材選択は効率こそ良いが、人事の方の目で選んでくれたほうが会社のために働く気になれる(大阪大学、文系)
・AIのバグの危険性、人柄が伝わるのかどうか疑問、容姿で判断されそう(名古屋大学、文系)
・AIが面接の何を見ているのか分からないから。人間ならある程度の反応はあるがAIの場合、こちらが一方的に話すだけであり、恐らく熱意といったものはAIでは伝わらないのではと感じる(京都大学、理系)
・せっかく直接会うので人間に見てもらって、人柄や雰囲気を些細なところからでも感じてほしいから(慶應義塾大学、文系)
・面接では話の内容だけではなく目の動き、声の出し方なども相手への印象に微妙に影響するのでそれは実際に人間相手でないと評価できない(慶應義塾大学、文系)
・この先、AIよりも人とコミュニケーションをとる機会のほうが多いはずなので、AIを活用する意味を理解できない(関西学院大学、文系)
・本来人間同士で行うコミュニケーションをAIが行ったとしても、望ましい結果にならないと思うから(大阪府立大学、文系)
・一緒に働きたいかどうかは働く人が見ないと分からないのではと考える(法政大学、文系)
・将来がかかっている採用面接をAIで判断されるのは納得いかない。一緒に働く社員の目で見て考えてほしい(大分大学、文系)
企業側から見た面接の果たす役割は、もちろん自社で活躍してくれそうな人材であるかを見極めることもありますが、それだけではありません。自社への応募動機を形成、あるいは強化して志望度をより高めること、これも面接が果たす大きな役割です。スマホやPC等の端末に向かっての無機質なAI面接では、この役割は果たせないのではないでしょうか。また、面接は企業が学生を見ているだけでなく、学生も同時に企業を見て確認しているわけで、学生は「合う・合わない」の感触をどこで感じればよいのでしょうか。AIを活用した選考は、まだまだ改善すべき点がある気がします。