組織図にない組織が活躍

──具体的には、どのような取り組みをされているのでしょうか。

 ダイバーシティ推進の柱となっているのは、2008年に発足した「女性リーダーカウンシル」だ。女性の上級管理職8人に加えて各部門からのサポートメンバーで構成されていて、さまざまなダイバーシティ活動を推進すると同時に、アソシエイトとのコミュニケーションを通して浮かび上がってきた課題について、経営陣に提言する役割を担っている。

 「女性リーダーカウンシル」はウォルマートから取り入れたものだが、大きな特徴はメンバーが全員ボランティアという点だ。活動は主に昼休みに行い、会社の組織図にも書かれていない。

 メンバー個々の自発性に任せることで、会社が用意した組織やポジョンではなく、メンバーが熱意を持って自発的に取り組んでいけるというメリットがある。

──会社の組織ではないという点は興味深いですね。その女性リーダーカウンシルの活動についてですが、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

 過去6年にわたってさまざまな取り組みを行ってきたが、直近で力を入れているのはDC(物流センター)で働く女性の活躍支援だ。「女性リーダーカウンシル」のサポートにより、2012年9月、三郷、昭島、川越の3つのDCで働く女性アソシエイトを中心に「DCカウンシル」を立ち上げた。ちなみに、全国に12あるセンターのうち2つは女性がセンター長を務めており、将来の女性リーダー育成に向けた意識は高い。

 「DCカウンシル」ができたことにより、働く環境や教育制度、ワークライフバランスなどについて、日常的に意見が交わされるようになった。加えて、「DCカウンシル」では昨年(2013年)、「女性が成長できる機会の創出」をテーマに3つの活動を行った。

 ひとつは「役員とのパネルディスカッション」だ。これには男女合わせて70~80人が参加した。

 事前に参加予定者から質問を集め、それにパネリストの役員4人が答えるという構成だったこともあり、非常に盛り上がった。質問としては、「今までのキャリアの中で大きなターニングポイントとなった出来事はありましたか?」「20代、30代、40代と仕事に対する考え方に変化はありましたか?」など。

 パネリストの役員はそれぞれ自身の経験を交えながら話してくれたので、聞く側にとっては興味深いものになった。生え抜きの者もいれば、外から転職して来た者もいる。結婚・出産を経験した者もいれば、そうでない者もいる。バラエティに富んだ話に、参加者は自分自身を重ね合わせることができたようだ。

現場の声を聞くため女性役員が動く

──「DCカウンシル」の取り組みとしては、ほかにどのようなものがありますか。

 2つ目の取り組みは「女性役員とのディスカッション」だ。「女性リーダーカウンシル」のメンバーでもある女性役員と、DCから参加したアソシエイトとの間で対話を行った。

 話されたことはさまざまだ。女性役員に、自分の今後のキャリア形成についてアドバイスを求めるアソシエイトもいた。役員は自分の経験を基にオープンに話してくれたので説得力があった、という声が多かった。

――現場で働く従業員が直接、役員と話す機会は、一般的な企業ではあまりないと思います。モチベーションアップにもなったことでしょうね。

 実は以前から「女性リーダーカウンシル」の活動のひとつとして「ヒアリングセッション」が頻繁に行われている。これは、役員が店舗やDC、本部に出かけて行き、アソシエイトとコミュニケーションを取るというもので、回数はすでに数十回を数える。

 年初に予定を決めて回るのではなく、現場のアソシエイトから聞こえてきたトピックを「ヒアリングセッション」を通じて深掘りしていく多忙な日々の中で、自分の時間をコントロールして活動に充てている。熱意がなくてはできない。だから、行くと熱い議論が起こる。

 現場のアソシエイトが何を障害と感じているのか、定期的に耳を傾けることは重要だ。障害となるものが変化していく可能性もある。その意味でも、「ヒアリングセッション」は重要な取り組みといえる。

店舗はダイバーシティ推進の現場

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