建設業界というと、男性中心のイメージが強い。実際、全国の建設現場に赴き、監督業務に携わり、将来は経営幹部となることが期待される総合職は男性、本社・支社で支援業務に携わる一般職は女性という構図が一般的だ。

 建設業界大手の鹿島建設でも、それは変わらない。2013年4月1日現在、総合職社員に占める女性比率は3.3%。一方、一般職社員では女性比率が87.9%となっている。

 しかし、鹿島建設はこの数年にわたって、女性の活躍推進に積極的に取り組んでいる。女性技術者の建設現場への配属を進めているのだ。そこで、今回は同社の女性活躍推進の施策について土山淳子人事部担当部長に訊いた。

1965年から女性総合職を採用

──鹿島建設では、女性の活躍推進にかなり昔から取り組んできたようですね。

 人数は少ないものの1965年に新卒の事務系女性総合職、1967年から新卒の女性技術者を採用している。建設業界というと男性中心の世界ではあるが、弊社には女性が社長を務めていた時期もあり、同業他社よりは女性を活用しようという意識が強かったのではないだろうか。

 ただし、1991年ごろからの8年間、女性の新卒は一般職採用のみであった。総合職採用を再開したのは1999年だ。男女雇用機会均等法が改正されたことがきっかけとなり、建築系社員の採用をはじめに、徐々に実績を積んでいった。

─一般職から総合職への職務変更も、かなり以前から行ってきたと聞きました。

 総合職へ職務変更した女性のなかには、関連会社の役員になっている者もいる。総合職への職務変更は今後の活躍が期待できる30代の人材が対象だ。部署長の推薦と本人の了解の下、選考試験を経て職務変更となる。もちろん、候補者全員が総合職に登用されるわけではない。1999年には推薦を受けた20人のうち総合職に登用されたのは9人だった。

 また、毎年実施しているわけではなく、ここ10年くらいの間では、2000年が6人、2003年が10人、2008年が17人、2012年が8人となっている。

女性技術者を積極的に現場配属

──総合職採用を再開してからは、女性の技術者を積極的に建設現場に配属しているそうですね。

 弊社で、女性の職域を拡大しなくてはならない分野として考えられたのが、現場と営業だった。言い換えれば、この2つは女性が男性と同じように働く環境にはなかったということになる。また、弊社はモノづくりが本業であり、現場を重視していて、男性社員でも現場経験がないと提案などが通りにくい風土がある。

 そこで、女性の総合職採用の再開に当たっては、事務系でも現場を経験させることを前提にした。現場の事務系の仕事というのは経理、総務や労務管理、近隣対応、式典の準備など、多岐にわたる。現場で施工の監督業務をするのは技術者だが、それ以外の仕事は事務系社員が行う。

──事務系以外の女性総合職、つまり女性技術者が、現場配属を前提に採用され始めたのはいつ頃からですか。

 2005年からだ。主に内勤業務となる設計に携わる女性総合職社員は、それ以前から採用していたが、2005年からは、鉄骨をどうする、コンクリートをどうすると、現場に勤務しながら、工事を遂行していく役割(=施工担当)を担う女性技術者も採用するようにした。

 弊社の場合、セクションごとに人事担当者がいて、人事部と連携しながら、事務系、土木系、建築系、数理系などの職種別の採用を行っている。そのセクションごとの人事担当者と連絡を取り合い、2005年から土木系、2006年から建築施工系の女性技術者が採用された。

 大きな建物を建てたい、橋を架けたいという女子学生は増えている。たとえば、大学によっては建築コースに進む学生の4割くらいは女子学生になっている。男性だけを採用していたら、人材がいなくなる。モノ作りに興味を持っている人材は男女を問わずに採用して、力を発揮してもらうことが重要だと考えている。

 採用数は最初1~2人だったが、2008年頃から事務系も合わせて毎年25人前後の女性総合職を採用している。応募してくる女子学生が多くはないので、結果として採用人数としてはまだ少ないが、女性総合職の人数は確実に増えている。

女性を現場に配属するメリット

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