危機感の少ない理系学生

コロナ禍からの業績回復により、企業の採用意欲が高まっており、「売り手市場感」が一層強まっています。また、早期インターンシップへの参加が早期選考や早期内定につながるなど、学生の就職に向けた危機感や不安感が低下し、プレエントリー社数や説明会参加社数、面接社数などの就職活動の活動量が前年より減少している可能性があります。以下は、過去と比較しながら就活生の活動量を分析します。

まずは「プレエントリー社数」です。文系学生の3月上旬時点でのプレエントリー社数を、過去3年間(2022~2024年卒)で比較した結果が[図表3]です。2024年卒で最も多いのは、「1~20社」で、次いで「21~40社」となっています。全体的な傾向に大きな変化は見られません。参考までに、「0社」と「1~20社」を合わせた「20社以下」(以下同じ)の活動量の少ないグループは、2022年卒から順に58%、57%、56%とほぼ変化はなく、かえって微減しているくらいです。「20社以上」の内訳を見ても大きな変化は見られず、活動量は2023年卒と変わっていないといえます。
[図表3]プレエントリー社数の比較(文系、単一回答)
一方、理系の場合、過去3年間の「20社以下」の推移を比較すると、2022年卒から順に72%、69%、77%と大きく変動しています[図表4]。「0社」は2023年卒よりも減少しているものの、「1~20社」は11ポイントも増加しており、その代わりに「21社以上」のほぼすべての区分で2023年卒から減少しており、2024年卒の活動量は確実に減少していると考えられます。企業の採用意欲は文系よりも理系学生のほうが高く、学生にもその意欲が伝わっているようです。このことは、理系学生のほうが就職活動への危機感が少ないことを示しています。
[図表4]プレエントリー社数の比較(理系、単一回答)

セミナー・会社説明会への参加社数は微減

次に、企業ごとに開催される「セミナー・会社説明会への参加社数」を確認しましょう。2022年卒からの3年間を比較した結果は、文系学生が[図表5]、理系学生が[図表6]です。まず、文系の場合、最も多かったのは「6~10社」(22%)で、次いで「4~5社」(18%)、「11~15社」「21社以上」(いずれも9%)と続きます。全体的な傾向は過去2年と同様です。ただし、活動量の多い「6社以上」(「6~10社」~「21社以上」の合計、以下同じ)を比較すると、2024年卒では47%と初めて半数を下回り、2022年卒と2023年卒では9%だった「0社」が2024年卒では13%へと増加しています。これにより、活動量が減少している傾向が見られます。

理系の場合は、「6社以上」のへの参加割合は過去2年とほぼ同じですが、「6~10社」が増えた一方、「11~15社」が減少し、「0社」が増えた一方、「4~5社」が減少するなど、こちらも活動量が減少していることが分かります。
[図表5]個別企業セミナー・説明会参加社数の比較(文系、単一回答)
次に、「セミナー・会社説明会へ初めて参加した時期」については、文系学生と理系学生を合わせた過去3年間の比較を行います。最も多かったのは「前年6月以前」で、2024年卒は2023年卒よりわずかに減少しましたが、依然として16%で最も多い時期となりました[図表7]。次いで、「前年7月」と「前年8月」が引き続き増加し、これらを合わせた「前年8月以前」(以下同じ)に初めて参加した学生の割合は39%で、ほぼ4割に達しています。一方、「本年2月」と「本年3月」はそれぞれ参加率が減少し、2年前の2022年卒と比較すると半分程度となっています。「前年8月以前」といった早い時期に初めて参加する割合が高い一方、「まだ参加していない」学生の割合も増加しており、二極化の傾向が見られます。ただし、「まだ参加していない」学生の中には、インターンシップから直接選考プロセスに進んだ学生も含まれる可能性がありますので、必ずしも活動が遅れているとは断言できません。
[図表7]個別企業セミナー・説明会に初めて参加した時期の比較(単一回答)

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