オンライン慣れした学生には、対面型面接がハードル
ここからは就活生による「就活川柳・短歌」です。まずは、【最優秀賞】からです。最終で 初の対面 意気込めど いきなり役員 何も話せず (神奈川県 白くまさん)
コロナ禍での面接形態は、従来からの対面型ではなく、オンライン面接が主流となっています。大手企業はもちろんのこと、昨年はすぐに対応できなかった中小企業でも、今年はオンライン面接を実施する企業のほうが多くなっています。オンライン面接に向けた入念な対策が奏功し、ついに最終面接にまでたどり着いたところ、最終面接だけはオンラインではなく、対面で行うことに。初めて体験する対面型の面接というだけもさぞかし戸惑い緊張し、いつもの力を発揮しづらい状況にもどかしさを感じたことでしょう。ましてや面接の相手が若手人事担当者ではなく、役員となればなおさらです。
オンライン面接ではあれば簡単に答えられた内容でも、対面型となると話は別です。上はスーツでも、下はジャージというリラックスできる格好で、無機質なPCモニターに向かって話すのとはわけが違います。上下を着慣れないリクルートスーツでびっしり固め、もちろんカンペを貼っておくこともできません。目の前には、すべてを見透かすような、眼光鋭い生身の人間がこちらを凝視しているのですから、緊張のあまり何も話せなくなるのも分からなくありません。
「最終」と「初」という、相対する単語を並べることで、作者の心の叫びが見事に表現された秀逸な作品だと思います。今年は、最終面接だけは対面で実施した企業が急増しており、同じ境遇に陥った学生が他にもたくさんいたはずです。きっと多くの学生から共感されることでしょう。
続いて【優秀賞】です。
落ち続け 頭によぎる YouTuber (神奈川県 ビーバーさん)
面接に落ち続けて終わりの見えない就活を続けることで、もう就職できないのではないかと自分の将来に不安を募らせる中、いつも見ているYouTubeに思いを巡らせ、いっそYouTuberの道をと真剣に考えた時期があると作者。現実逃避を始めたくなるほどの作者の苦しみを、「YouTuber」という現実逃避の象徴と思われがちな職業を出すことで、端的に表現されています。作者が望む「好きなことで生きていく」ということは、ある意味では幸せだと思えますが、好きなことが仕事になる辛さもあるはずです。大好きなYouTubeで気分転換しながら、悔いを残さない就職活動にして欲しいものですね。
「あなたらしい写真」を求めるのは無茶ぶり
佳作作品からも2点紹介します。あなたらしい 写真を撮るため 遊びたい (大阪府 浸水さん)
コロナ禍という閉塞的な環境の中で学生生活を送らざるを得ない今年の就活生にとって、「あなたらしい写真」を求められることは、ある意味で無茶ぶりだと言われても仕方がないのかもしれません。そんな作者の心の叫びが聞こえてくる、皮肉たっぷりな良くできた作品です。部活動・サークル活動に没頭したり、海外留学をしたり、全国・世界を旅して回ったり、ボランティア活動に勤しんだり、お酒を飲みながら夜遅くまで(あるいは朝まで)議論を戦わせたりといった、学生の時にしかできない貴重な経験をしたり、何より一生ものとなる学生時代の友人との密な時間を思う存分楽しめるよう、新型コロナウイルスが落ち着きを見せ、安全安心な社会が早く戻ってくることを祈るばかりです。
WEB面接 目線はカメラ 相手だれ (岐阜県 ラブさん)
オンライン面接での目線問題は、学生も面接官も悩ましく感じている課題です。この作者は、面接官の印象を良くしようと最後までカメラ目線を貫いた結果、面接官を一度も見ることができず、面接官がどんな顔だったのかさえ覚えていないという状況を、最後の「相手だれ」でうまく表現しています。
カメラ目線と相手を見るタイミングやバランスは、オンライン面接対策の中でも難しい問題の一つでしょう。たまにはカメラから目線を外し、相手がどんな顔をして、どのように話を聞いているのか、画面をしっかり見ながら話すこともしてほしいものです。相手が頷いてくれている様子を見ることができれば、きっともっと話しやすくなるはずです。