後半戦で大きく盛り返した中堅企業
ここからが今回の本編になります。HR総研が、2021年3月12~24日に企業の採用担当者を対象に実施した「2021年および2022年新卒採用活動動向調査」の結果を紹介します。今回は、2021年4月から従業員301名以上の企業に義務化された正規雇用労働者の中途採用比率の公表(改正労働施策総合推進法)への取り組み状況のほか、2022年卒採用に向けたインターンシップやセミナー・説明会の実施状況について取り上げます。まずは、今年4月入社者の採用計画数に対する充足率を見てみましょう(以下では、従業員数300名以下を中小企業、301~1000名を中堅企業、1001名以上を大企業と称します)。採用計画数に対する充足率は、企業規模によって大きく異なります[図表4]。
これに対して、中堅企業では「100%以上」53%、「90~100%未満」17%で、合計すると「90%以上」が70%と善戦し、「70%未満」は17%となっています。「100%以上」が5割を超えているのは、内定辞退を見越して多めに内定を出したものの、内定辞退が予想を下回った結果だろうと思われます。それが「90~100%未満」での大企業との数字の開きにもつながっているのではないでしょうか。
昨年10月実施の「2021年&2022年新卒採用動向調査」時点では、採用計画数に対する充足率で苦戦していた中堅企業(充足率100%以上:大企業55%、中堅企業19%)ですが、その後の採用活動で大きく盛り返したようです。中堅企業の中には、大企業と内定者が競合する企業も多く、採用活動前半戦では内定者を大企業に奪われるケースが多かったのに対して、後半戦は大企業の採用活動が落ち着き、大企業との競合が激減したことで内定承諾率が高まったものと推測されます。
中小企業では、「100%以上」32%、「90~100%未満」19%で、合計すると「90%以上」は51%と約半数にとどまります。「70%未満」は36%にも達し。そのうちちょうど半分は「30%未満」(18%)となっています。企業規模による明暗がはっきり表れているといえます。
企業規模による「新卒重視」の傾向差が明らかに
続いて、改正労働施策総合推進法を念頭に、新卒採用とキャリア採用の関係性を見ていきたいと思います。改正労働施策総合推進法とは、労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的とし、中途採用に関する情報の公表を求めることにより、企業が長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供している状況を明らかにし、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進しようとするものです。今回の改正により、常時雇用する労働者が301人以上の企業では、インターネットの利用や事業所への掲示など、求職者が容易に閲覧できる形で「直近の3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率」をおおむね年に1回、公表日を明らかにして公表することが必要となります(法令上の表記は「中途採用」、HR総研のアンケートでは「キャリア採用」と表記していますが、ここでは両者とも同義とします)。まずは、2021年4月入社の「新卒採用人数」と2020年度1年間の「キャリア採用人数」の比率です。大企業では、「新卒採用がキャリア採用より多い(2倍以上)」が53%と半数以上を占めるなど、依然として「新卒重視」の傾向が続いていることが分かります[図表5]。
一方、中堅企業は、「ほぼ同じ」の割合こそ大企業の16%よりも多い27%であるものの、「キャリア採用が新卒採用より多い」は逆に大企業の27%より少ない23%となっており、一概に大企業より「キャリア採用」が進んでいるとも言い切れない状況にあります。