従業員の「メンタルヘルス対策」として注目の涙活

イベントの後半では、吉田氏から「涙活」を始めたきっかけや普段の活動について紹介があった。元々は高校の教師だったという吉田氏。様々な生徒との相談に向き合うなか、泣くことによって行動がポジティブに変容していく生徒に目が留まったそう。そこから、涙について深く調べるようになり、脳生理学者・医師でもある東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂氏と出会い、親交を深めていく。この出会いがきっかけとなって、感涙を広めながら人の心の健康をサポートする「感涙療法士」の認定資格を有田氏と創設するのにつながる。

涙活を実際にスタートしたのは、2013年1月。以来、多くの学校や病院、自治体などに向けて、動画の視聴や詩の朗読などを通じた涙活の取り組みを行っている。吉田氏は企業への活動にも触れ、「研修の一環として声がかかることもあります」と従業員向けに講演を行っていることも紹介した。2015年12月に「労働安全衛生法」が改正され、ストレスチェックの義務化を機に、「涙活」は企業からも注目されるようになったという。

また、涙活はうつ病の予防や緩和への効果も期待できることがわかっている。そのため、従業員のメンタルヘルス対策として社員向けの研修に導入する企業が増加中だそうだ。研修以外にも、様々な企業とコラボレーションを展開している吉田氏。例えば、面白法人カヤックと涙活を取り入れた「涙の就職説明会」を共同開催している。涙活は、企業の人事領域において、幅広く活用され始めているのだ。

イベントの最後に、参加者と涙活体験の気づきをシェアする機会が設けられた。参加者から「日本人は、そもそも泣くのが苦手では」という質問が挙がると、吉田氏は「泣くことが恥ずかしいという文化が日本にはありますが、その先入観は捨て、泣くことは健康に良い、体に良いという考えを、もっとみなさんに持ってほしいですね」とポジティブなメッセージで答えた。続けて、吉田氏は涙活を実施するうえでのポイントを挙げ、「泣くのが苦手な人もいるかもしれませんが、あえて作品に感情移入しながら泣いて、ぜひリラックスを実感してほしい」とイベントを締めくくった。

能動的に涙を流すことで、リラックス効果をもたらすという「涙活」。仕事のストレスや職場の人間関係によって、心の病気を抱える人が多い現代において、涙を流すことはメンタルヘルス対策として有効であることが今回の取材でわかった。メンタルヘルスの不調は、仕事に対するパフォーマンスやモチベーションの低下を招く。従業員のエンゲージメントにつながる「涙活」の時間を、職場や自宅などで設けてみてはいかがだろうか。

【参考リンク】
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