学生と企業の間で、「勤続年数の捉え方」や「情報源」にギャップ
続いて、小野氏は今回の調査で新たに追加した「希望する勤務期間と独り立ちまでに要する期間」や「就活や採用活動で活用している情報源・媒体」に関する結果について話した。学生に入社した会社にどの程度勤めたいか尋ねたところ、「4年以下」と「終身」という回答がそれぞれ約30%という結果になった。一方、企業向けに、新卒社員がプレイヤーとして独り立ちするまでどの程度の期間が必要かという質問では、企業の約80%が「最大4年を要する」と回答。これらのことから小野氏は、「人材を戦力化したタイミングで、約30%の新卒が離職するリスクが高い」と、学生と企業で入社後の勤続年数の捉え方に差があることに言及した。
違いは4番目以降で、学生は「合同説明会」(25%)、「就職支援課などの大学機関」(22%)、「ゼミ・研究室(14%)」を情報源として挙げていた。それに対し、企業側は「合同説明会」が11%、「大学機関」が8%、「ゼミ・研究室」が7%と回答。これらを受け、小野氏は「学生は企業発信の情報のみでなく、身近な情報をもとに企業を選定している」と学生の情報収集方法について考察を述べた。
学生は「社会との接点」、企業は「学生コミュニティへのアプローチ」が求められる
今回の調査結果をふまえ、小野氏は学生と企業それぞれに対し、今後の採用・就職活動に関して提言をした。学生には、就職活動に向けて行っている取り組みについて、約6割の学生が「行っている取り組みはない」と回答したことを受け、「自らのコミュニティの外へ出るべき」と話した。これは、企業が学生に「学業」や「サークル活動」といった学内での活動に次いで、「社会貢献活動」や「ビジネス経験」、「海外留学」といった学外の活動経験を求めているため。また、今後、学生は就職活動を通じて「社会との接点を創出し、自らの価値を高めることが企業とのマッチングの近道となる」と語った。一方、企業に対しては、「学生コミュニティに積極的にアプローチしていくべき」と提言。学生は「ゼミ・研究室」や「就職支援課などの大学機関」も就職活動の情報源として活用している。学生の就職活動は、前提として、先輩や友人の口コミに影響される傾向がある。ただ、企業が学生コミュニティにアプローチをかけるケースは現状少ない。採用競争を優位に進めるポイントとして、「求める学生が属するコミュニティからまず1人を採用し、その新卒学生を通じて来期以降の採用につなげることが、質の高い母集団を形成することになる」と一歩踏み込んでポイントを述べた。