信頼できる人のために努力する「貢献あこがれ」メンタリティ
「社会貢献」……この言葉は、いまや採用面接で聞かない日は無くなりました。彼らが口を揃えてそう言うのも、もっともな背景があります。身近なところでは、震災や災害のボランティア経験です。被災地での活動を通じて「人に役立つことの大切さを学んで絆を体感した」、「こんな無力な自分でも、目の前の人に貢献できて“ありがとう”と言ってもらえたことがとても嬉しかった」、「仕事もそんな風にしていきたい」と話す学生にたくさんお会いします。社会情勢では、2001年に米国エンロン社の会計不正問題が発覚、国内でも食品偽装や耐震偽装問題といった不祥事が続き、企業そのものの在り方を問う大きな動きがありました。厚生労働省が新入社員の働く目的を調査したところ、2000年までは一貫して5%程度しかなかった「社会のために役に立ちたい」という項目が、2000年を境に急増し、2012年には15%にまで上昇しました。その後、同様の調査結果は公表されていませんが、おそらくいまはもっと上昇しているのではないでしょうか。「仕事を通じて社会に貢献する」という意識が、若い世代を中心に広がっていることは間違いありません。
しかし、いまどきの新入社員が言う「社会貢献」の文脈には、少々違和感を持つことがあります。「社会的な問題を解決できる人材になる、そのために難しい仕事に挑戦したい」というよりは、目の前の人に感謝してもらえることで世の中の役に立っている感覚がほしい、人とつながっていたい、そんなふうに見て取れるのです。つまり、社会貢献という言葉の根っこには「つながっていたい」という欲求が隠れています。
その一方で、「一人でいたい」という気持ちも強く持ち合わせています。4月の新入社員研修で、1週間の長期プロジェクト型のプログラムを実施した際、グループワークのときは紛糾しているにも関わらず、昼食に1人で行く姿を目にしたときは非常に驚きました。気の合う相手とは一緒にいたいが、気の合う相手を自ら作るのはおっくう、気の合わない人と空気を読みながら調子を合わせるのはもっとおっくう、気を休めるためにも1人の時間が必要、そんな気持ちが働いているのです。
ですから、素のままの自分を受け入れて認めてくれる、面倒見の良い先輩やOJTリーダー、上司がそばにいると、「その人のために頑張ろう」という純粋な思いから、俄然底力を発揮します。彼らは基本的に成長欲求が高いので、信頼できる人(=素の自分を受け入れてくれる人)のために一生懸命努力します。その姿勢は、素晴らしい強みといえるでしょう。
次回は、ストレスに弱いと言われる《「勝手にプレッシャー」メンタリティ》について解説するとともに、5つのメンタリティを持つ新入社員に対し、どのような育成が必要となるのか、そのヒントを「10の成長力」に分けてご紹介します。
- 1
- 2