Vol.03

NEXT HR キーパーソン特別インタビュー

人事部門こそが第4次産業革命の成功の鍵を握る(後編)

経済産業省 産業人材政策室長 伊藤 禎則 参事官
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

長時間労働の是正と教育を通じた人材育成、生産性向上につながる人材投資をセットに

寺澤第4次産業革命に対応するためにビジネスのやり方を変えていくことが求められます。付加価値の源泉である働く人達と経営はどのように変わっていかなければならないのでしょうか? 昨今の“働き方改革”がそこに相当するものだと思いますが、その本質はいかがなものでしょうか?

伊藤「働き方改革」という言葉をあらゆるところで目にしますが、率直にいって人によって多義的な使われ方をしています。働き方改革の本質は、「企業」と「働く人」の関係が変わってきているということです。「企業視点」なのか「働く人視点」なのかで少し力点の置き方が変わってきますが、「企業と働き手」という、閉じた「一対一対応」ではなくなってきています。これまで、企業は、教育や福利厚生、安全・安心を保障する代わりに、働き手に対して滅私奉公やモーレツ社員として働くことを求めてきましたが、そのシステムを維持できなくなってきています。よって、働く人と企業は新しい関係を作っていかなければならないのです。

その中で、政府の働き方改革実現会議を行ってきましたが、一丁目一番地を長時間労働の是正に設定しました。そこが変わらないと他も変わってこないのです。そこで初めて上限付き罰則付きの労働時間上限規制が導入されることになりました。労働時間上限規制の導入を出発点として長時間労働を是正し、働き手と企業の関係を変質させ、国レベルで生産性をどう高めていくかに切り込んでいかなければなりません。

一人ひとりの生産性を高めるためのキーとなるのが「教育・人材投資」です。長時間労働の是正と教育を通じた人材育成、生産性向上につながる人材投資をセットで行われなければなりません。

経済産業省 産業人材政策室長 参事官
伊藤 禎則 氏

1994年東京大学法学部卒、通産省入省。コロンビア大学ロースクール修士、米国NY州弁護士登録。日米通商摩擦交渉、エネルギー政策、筑波大学客員教授、大臣秘書官等を経て、2015年より現職。経産省の人材政策の責任者。政府「働き方改革実行計画」の策定に関わる。経営リーダー人材育成指針、ITスキル認定制度の創設等も手がける。