Vol.03
NEXT HR キーパーソン特別インタビュー
人事部門こそが第4次産業革命の成功の鍵を握る(前編)
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介
日本の高い技術力がアドバンテージに。一方で旧来型雇用モデルが招く弊害も
寺澤第4次産業革命は日本企業にとってチャンスなのでしょうか?チャンスにするためにどうしなければならないのでしょうか?
伊藤産業構造審議会の新産業構造部会という審議会で、2年間にわたって第4次産業革命のあらゆる事象を徹底的に研究してきました。かなり元気の出るビジョンが描けていると思いますので、ぜひご覧ください。
まずはチャンスの面からお話します。ご存知の通り、サイバー(ネット上)のバーチャルデータを巡る競争では圧倒的に日本企業は負けました。グーグル、アマゾンなどのプラットフォーマ—に利益の源泉を持っていかれました。しかし、製造業におけるセンサーから取得したデータ、自動車産業では走行データ、医療・高齢者介護業界では様々な人の営みにおける「リアルデータ」を活用してビジネスに役立てることには一日の長があります。特に、ものづくりにおける高い技術力と相まって考えると、アドバンテージはまだまだあります。
また、日本が置かれている状況にチャンスがあります。短期的には経済成長への最大の足かせである人手不足、中長期的には日本の人口減少という問題があります。そうした中では、日本の場合、第4次産業革命によって雇用を奪っていくというリスクは、相対的には少ないとみています。むしろ、日本は第4次産業革命によって生産性を高めて雇用不足を解消していかなければならないというニーズの方が強いので、国際的に言われている第4次産業革命が与える影響を日本流にソフトランディングできるのではないかと思っています。
一方、ピンチの面もあります。第4次産業革命によって、ある分野と別の分野の技術を融合させて新しい技術を産み出し、ビジネスのやり方を変える企業が勝ちます。UberやAirbnb、あるいはアマゾンといった会社では、異なる分野の技術、人を組み合わせることで生まれたサービスが、ビジネスのやり方を変え成功しています。そうした中、日本型雇用システムの特徴である「タコツボ/縦割り型」の流動性の低いシステムは、「異なるもの同士を組み合わせる」ことは非常に不得手です。第4次産業革命で新しい付加価値を産み出そうとしたときに、必ずしも適していない面が目に付きます。そういった意味からも旧来の日本型雇用モデルを変えていかなければならない理由もここにもあります。
経済産業省 産業人材政策室長 参事官
伊藤 禎則 氏
1994年東京大学法学部卒、通産省入省。コロンビア大学ロースクール修士、米国NY州弁護士登録。日米通商摩擦交渉、エネルギー政策、筑波大学客員教授、大臣秘書官等を経て、2015年より現職。経産省の人材政策の責任者。政府「働き方改革実行計画」の策定に関わる。経営リーダー人材育成指針、ITスキル認定制度の創設等も手がける。
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