Vol.01

「NEXT HR」特別パネルディスカッション 講演録

次世代の人事、人事サービスの進化と未来(前編)

慶應義塾大学大学院 経営管理研究科(KBS) 特任教授 岩本 隆氏
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 北崎 茂氏
日産自動車株式会社 人事本部 日本人事企画部 担当部長 福武 基裕氏
株式会社日立製作所 ICT事業統括本部 人事総務本部 人財企画部 主任 中村 亮一氏
モデレーター:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

日立製作所における人財アナリティクスの取り組み

寺澤ありがとうございました。ビジネス環境が大きく変化する中で、ビジネスを成功に導くという人事の役割を果たすため、日産自動車の人事部門はコンセプトをしっかり練っていらっしゃるなと感じました。では、日立製作所の中村さん、お願いします。

中村私はICTの事業部で採用やダイバーシティ関係を担当していますが、今、社内で進めている人財アナリティクスの取り組みをご紹介します。取り組みを始めたきっかけは、採用担当に就いた時、会社の事業が変わっていこうとしている中で、人の採り方や見方も変えていくべきではないか、データを使って変えていけないかと発想したことでした。

まず、分析対象データとしたのは、学生と当社の社員の適性検査データです。よく優秀な人財、とがった人財と言われますが、どういう人なのか説明することは難しく、その像も人ごとに違います。そこをアナリティクスで“見える化”できないかということで分析を行いました。これまでの人財要件は、「モデル人財」、いわゆるハイパフォーマーにインタビューを行って要素を抽出してつくられるのが一般的でした。つまり、定性情報です。私たちは、事業・人事戦略、ハイパフォーマーインタビューという、従来からの定性情報に加えて、ハイパフォーマーのデータ分析、人財のデータ分析によって導き出した定量情報をもとに人財ポートフォリオおよび人財要件を設計し、その人財を採用するための選考プロセスを設計するという流れで取り組みを進めました。

結果として、内定者のタイプが大きく変わりました。実は日立では、人財を4つのタイプに分けており、あるタイプの内定者が多いことがわかっていたので、それを変えていこうと考えていたのですが、人財要件と選考プロセスを設計し、面接官を変えたことで、2割もの内定者のタイプが変わりました。7つほど設定した人財要件のコンピテンシー評価についても、全ての項目で、昨年の内定者より今年の内定者の方が高くなりました。

正直に言うと、ここまで成果が出るとは思いませんでしたが、そういうことができるようになったということです。これに続く取り組みもいくつか始めており、今年の冬のインターンシップは、テキストマイニングを活用して参加者を決めています。優秀な学生の情報から、そのテキストマイニングのデータをもとに優秀そうな学生を見つけ、実際にそれが私たちの感覚に合うか合わないか、機械学習の中で進めていくような形です。

こうした取り組みを「HRテクノロジー大賞」をはじめ、いろいろなところで評価していただき、社内でも認められて、今、ピープルアナリティクスの部門を立ち上げる準備を進めているところです。最近、いろいろな企業から話を聞きたいとご要望をいただくことが増えており、この分野への関心が高くなっていると感じますが、まだ世の中に成功事例が少ないのが現状です。今後、いろいろな企業が人事サービス会社の皆さんと一緒に成功事例をつくっていければ、この業界が盛り上がっていくのではないかと思っています。

寺澤ありがとうございます。製作所はこの取り組みで第1回HRテクノロジー大賞のイノベーション賞を受賞されましたが、素晴らしい試み、チャレンジの結果だと思います。今日もお聞きしていて、まさにデジタルHRを体現されているなと感じました。