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Learning Analyticsが企業の教育研修を変える?

〜コンピュータによる学習活動の分析と利用とは〜

上智大学 理工学部情報理工学科 教授 田村恭久氏

Learning Analytics (LA)とは、学習における細粒度の活動履歴データを自動的に収集・分析し、フィードバックに用いることを指します。今までもテストなどの結果をフィードバックすることはありましたが、近年はメールなどのコミュニケーション、教材のページ閲覧、さらに受講者の脈拍や発汗などの生理データも研究で扱われるようになりました。そこで今回は、LA研究の第一人者である、上智大学理工学部情報理工学科・田村恭久教授をお招きして、LAの研究や実務展開の状況をご紹介いただくとともに、企業内研修における適用の可能性や課題についてお話しいただきました。

Learning Analyticsとは

まずは今回のテーマである「Learning Analytics」について説明します。Learning Analyticsとは平たく言えば、LMS(Learning Management System/学習管理システム)などを利用して学習する際、講習の最中あるいはその後に出てくるアウトプットを収集・分析し、それに対してどのようなフィードバックを行うか、その川下の部分を指します。もう少し具体的に説明すると、学生や受講者がシステムをどのように利用して学んだのか、学習履歴を分析し、フィードバックすることです。工程としては、まずデータを収集(xAPI、IMS Caliper、Adaptive Data Collector)し、次にデータ蓄積・フィルタリング(形式変換、クレンジング、前処理)、分析(統計処理、ビッグデータ解析、人工知能)を経て、出力/フィードバック(可視化、ダッシュボード、学習者適応、リコメンデーション、Eポートフォリオ)を行うという流れになります。

学習履歴データの電子化と細粒度化

学生や受講者がいかに学んだか、その評価・分析自体は、最近始まったことではありません。昔は紙媒体で、テスト回答、レポート記述、成績表、履修履歴などを通じて行っていました。ところが2000年頃になると、例えば大学ではLMSが普及し、その上に教材やテストを置いて、そこで評価するという形になりました。やっている中身はあまり変わりませんが、紙媒体から電子媒体に変わったということです。そしてここで機械可読データとして評価ができるようになりました。

次に2000〜2010年頃になると、携帯・スマホ、SNSなどを通じて、LMS上のQ&Aやメール、SNSメッセージなどで行えるようになりました。さらに2010〜2015年頃になると、教育現場にタブレットPCが普及し、教材アクセスやカメラ映像、音声、位置情報などクライアントサイドでのデータ収集が可能になりました。そして今後は、ウェアラブル機器の普及によって、心拍、血圧、発汗、視線など、生理状態から解釈することが予想されています。

データ粒度別の状況と把握対象(仮説)

「学習達成」「コミュニケーション」「挙動」「生理データ」という4つのデータ粒度別に、現状と把握対象を説明します。「学習達成」(テストの成績など)は実運用段階にあり、学習達成の度合いや単元の内容理解などが把握対象です。「コミュニケーション」(メール、SNS、電子掲示板の内容など)は研究段階にあり、把握対象は批判的思考力、コミュニケーション能力、学び方の学習などが挙げられます。「挙動」(ページめくり、マウス挙動、視線など)も研究段階にあり、リテラシースキルや学び方の学習が把握対象です。「生理データ」(心拍、血圧、発汗など)も研究段階にあり、把握対象としては自己観察や内省力等のメタ認知スキルが挙げられます。まだ研究段階にある「コミュニケーション」「挙動」「生理データ」に関しては、個別知識ではなく、スキルを測る材料になり得るものです。

レポートはまだ続きます。気になる内容の続きはダウンロードしてお楽しみください。

提供:サバ・ソフトウェア株式会社

田村 恭久

上智大学 理工学部情報理工学科 教授
田村 恭久氏

1987年上智大学大学院博士前期課程修了。同年日立製作所システム開発研究所。1993年上智大学助手。1996年博士(工学)。専門分野は教育工学。研究テーマはeラーニング、電子教科書、学習行動分析(ラーニングアナリティクス)、協調学習支援、スキル学習支援など。学習分析学会理事長、日本eラーニング学会会長、ISO/IEC JTC1/SC36 (Learning Technology) WG8 (Learning Analytics) project co-editor、ICT Connect 21 技術標準化WG座長、JEPAフェロー。