株式会社マイナビは、2024年12月6日に「2024年10月の最低賃金改定(1,055円)に関する調査レポート」を発表した。本調査は2024年11月1日~6日に、パート・アルバイトを雇用する企業、およびパート・アルバイト従事者を対象に実施され、企業769社/個人473名の回答を集めたもの。本記事では、同社が調査結果について「非正規雇用市場における採用・求職動向レポート(2024年9-10月)」としてまとめたものから抜粋して紹介する。
パート雇用【最低賃金1,055円】への改定。企業の66.9%が対応するも、半数以上が「負担」と回答

【個人向け調査】アルバイト就業者の時給に対する意識。納得しているは4割弱

厚生労働省が2024年8月に公表した、各都道府県で決定された最低賃金の改定額は1,055円となった。前年度+51円はこれまでで最大の引き上げ幅となる。

今回、マイナビが調査において「最低賃金の全国平均額1,055円について納得しているか」を尋ねたところ、アルバイト就業者の39.5%が「納得している」と回答。その内訳は、「納得している」が15.4%、「どちらかといえば、納得している」が24.1%だった。
【個人】2024年最低賃金改定への納得感
さらに、同社が「適正だと思う最低賃金」についてパート・アルバイト就業者に尋ねたところ、最も多かったのは「1,200円~1,299円」(27.4%)で、平均は1,297円となった。一方で、同対象者に「現在の時給」を聞いたところ、「1,000円~1,099円」が31.3%で最も多くなった。なお現在の時給については、「1,200円未満」で働くアルバイトが64.6%を占めており、適正だと考える水準に達していない実態が明らかになった。
【個人】適正だと思う時給/現在の時給の比較

【企業向け調査】6割以上が人員調整等により「賃金引き上げに対応」

次に、企業を対象に「2024年10月の最低賃金改定を受けてパート・アルバイトの賃上げを行ったか」を聞くと、合計66.9%の企業が「賃上げを実施した」と回答した。その内訳は「最低賃金を下回ったため、最低賃金額まで賃上げした」(39.8%)、「最低賃金を下回ったため、最低賃金額を超えて賃上げした」(13.0%)、「元々最低賃金を上回っていたが、さらに賃上げした」(14.1%)だった。
最低賃金改定後の賃上げの有無
続いて、「賃上げを実現するために行った施策」について尋ねた結果、トップは「正社員の削減」(19.1%)だった。また、そのほかの回答からも、非正規社員も含めて人員体制を調整しながら対応した企業が多いことがうかがえた。
最低賃金改定後の賃上げを実施するために行った施策

最低賃金改定で「企業の負担感」はどう変わったのか?

最後に、アルバイトを雇用している企業に「最低賃金の負担感」について聞いたところ、「負担に感じている」(負担に感じている+やや負担に感じている)とする回答は計53.3%となった。なお、「負担に感じている」と答えた割合を業種別にみると、特に高かったのは「飲食・宿泊」と「小売」で、いずれも6割を超える企業が負担を感じていることがわかった。
現在の最低賃金の負担感
人手不足で求人ニーズが高まり、採用が困難な売り手市場が続く中で、3社に2社がパート・アルバイトの賃上げを実施していることが明らかとなった。この状況について、マイナビのキャリアリサーチラボ研究員・宮本祥太氏は、「企業の持続的な賃上げに向けては『人への投資』を生産性の向上に繋げ、付加価値を高めるというサイクルが欠かせない」と指摘する。企業は賃上げの実行と合わせて、非正規人材のスキルアップやモチベーション向上の施策にも取り組む必要があるだろう。今後の最低賃金1,500円への引き上げが議論される中、企業と就業者双方のニーズのバランスを取りながら、持続可能な雇用環境の整備が求められる。

出典:https://career-research.mynavi.jp/reserch/20241206_89359/

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