三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社は2024年11月8日、「2024年冬のボーナス見通し」に関する調査結果を発表した。本記事では、以下、調査結果に関する同社調査部の見解をもとに公開されたレポートを転載する。

『2024年冬のボーナス見通し』に関する調査―民間企業は“好業績”と“人手不足”から4年連続の増加見込みに

2024年夏のボーナス~一人当たり支給額は3年連続で増加、支給労働者数も過去最多に

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)における2024年夏のボーナスの一人当たり支給額は、前年比+2.3%と3年連続で増加した(図表1)。当社の事前予想(前年比+2.9%)にはわずかに届かなかったものの、3年連続で2%台と堅調な伸びとなった。業種別では、燃料価格の下落で昨年度の業績が大幅に改善した電気・ガス業(前年比+14.6%)や、人手不足の中、人員確保のため待遇改善が急務となっている飲食サービス業等(同+17.5%)の伸びが大きかった。企業規模別では、業績堅調で収益的に余裕のある大きめの事業所(30人以上)で増加幅が大きかった(同+4.2%)。

ボーナスが支給された労働者の割合は84.3%(前年差+4.3%ポイント)と大きく上昇し、2002年以来の高水準を記録した。特に、小規模事業所(5~29人)での支給割合上昇が顕著だった(同+17.7%ポイント)。

なお、ボーナスが支給された労働者の割合上昇に加え、雇用者数の増加が続く中、支給労働者数は4,297万人(前年比+6.5%)と、過去最多を更新した。その結果、夏のボーナスの支給総額(一人当たり支給額×支給労働者数)は17.8兆円(同+8.9%)と3年連続で増加した。

今回の夏のボーナスでは、企業業績改善による労働者への利益還元と、深刻化する人手不足解消のための待遇改善の動きが、支給額の増加と支給労働者割合の上昇につながった。もっとも、企業規模別で対応は異なり、すでに支給割合の高い大企業では一人当たり支給額を増額する一方、中小零細企業では新たにボーナスを支給する傾向がみられた。
図表1 夏のボーナス実績:平均支給額(前年比)と支給月数

2024年冬のボーナス見通し(1)民間企業~企業の好業績と人手不足を追い風に、4年連続で増加する見込み

厚生労働省「毎月勤労統計調査」ベースで見た民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)の2024年冬のボーナスは、一人当たり平均支給額が40万5,573円(前年比+2.5%)と4年連続での増加を予想する(図表2)。ボーナスの堅調な増加が続く背景に、企業の好業績と人手不足がある。

企業の経常利益(全規模、金融保険業を除く全産業、季節調整値)は、2020年中盤以降、増加傾向にあり、直近2024年4~6月期には過去最高を記録した。その結果、企業の内部留保(利益剰余金)も、大企業を中心に増加が続き、2024年6月末時点で588兆円と、同様に過去最高を更新した(全規模、金融保険業を除く全産業、財務省「法人企業統計」より)。

また、経済活動の回復とともに人手不足は深刻さを増し、労働需給は逼迫している。日銀短観・雇用人員判断DIは非製造業・中小企業を中心に大幅な「不足」超が常態化し、企業の人手不足感が深刻化する中、完全失業率は2021年1月以降、2%台の低水準での推移が続いている。

人口動態面から、人手不足は当面続くことが予想される中、来年以降も人員確保のためのボーナス増加の流れは続くとみられる。もっとも、特に人手不足が深刻な中小企業の中には、毎年続くボーナス引き上げ競争に追随できる体力がない企業も多く、大企業と比べボーナス額の引き上げ幅は小幅にとどまるとみられる。また、今後、企業体力に劣る中小企業の中には十分な引き上げを行えない企業も増えてくる可能性があり、企業規模間での格差が拡大していくと考えられる。
図表2 冬のボーナス予測:平均支給額(前年比)と支給月数
支給労働者割合は夏に続いて大幅に上昇し、85.8%(前年差+3.9%ポイント)となると見込まれる。これは、コロナ前2019年の水準を大幅に上回り、2007年以来の高水準である。特に、これまでボーナスの支給に消極的だった中小企業において、同割合の上昇が顕著となるだろう。

さらに、雇用者数が過去最多を更新中であることもあり、ボーナスが支給される労働者数は4,409万人(前年比+5.9%)と大幅に増加し、3年連続で過去最多を更新する公算が大きい(図表3)。
図表3 冬のボーナス予測:支給労働者数と支給労働者割合
一人当たりボーナス支給額と支給労働者数の増加を反映した2024年冬のボーナスの支給総額(一人当たり支給額×支給労働者数)は、17.9兆円(前年比+8.6%)と4年連続の増加が見込まれる(図表4)。これは、物価上昇率を上回る大幅な伸びであり、家計の実質可処分所得を押し上げる。

これまでは、人々が物価の伸びを上回ってボーナスが持続的に上昇するとの確信を持てなかったことから、消費の押し上げにはなかなかつながらなかった。しかし、今冬のボーナスも予想通りの伸びを示せば、夏に続き2季連続で物価を上回る高い伸びとなるため、消費者マインドが上向き、消費の回復につながることが期待される。
図表4 冬のボーナス予測:支給総額(前年比、実額)
なお、実勢を示す全労働者一人当たりのボーナス支給額は前年比+7.4%と、支給労働者割合が前年から大幅に上昇することから、支給事業所の一人当たり支給額を大幅に上回る伸びとなる見込み(図表5)。
図表5 冬のボーナス予測:全労働者ベースの平均支給額(前年比)
業種別では、製造業では53万3,901円(前年比+1.9%)、非製造業では38万0,895円(同+3.0%)と前者は4年連続、後者は3年連続で増加が見込まれる(図表6)。夏と同様、非製造業の方がやや高い伸びとなるとみられる。

ボーナス動向の実勢を示す全労働者ベースの一人当たり支給額でみると、製造業(前年比+4.2%)、非製造業(同+8.4%)と、労働者数の増加と支給割合の上昇が顕著な非製造業で大きく増加するだろう(図表7)。
図表6 冬のボーナス予測:支給事業所ベースの平均支給額(前年比、業種別)
図表7 冬のボーナス予測:全労働者ベースの平均支給額(前年比、業種別)

2024年冬のボーナス見通し(2)公務員~ボーナスは3年連続で増加、6年ぶりに70万円を超える見込み

内閣人事局の発表によると、国家公務員(管理職および非常勤を除く一般行政職)の2024年夏のボーナス(期末・勤勉手当)は65万9,400円(前年比+3.5%)と2年連続で増加した。給与法改正でボーナスの基準となる基本給が約1.1%増加したほか、ボーナス支給月数が昨夏から0.05ヵ月分(勤勉手当、期末手当がそれぞれ0.025ヵ月分)引き上げられた。高めの伸びだったが、コロナ前2019年夏のボーナスの水準には届かなかった。

2024年冬のボーナスの平均支給額は70万8,200円(前年比+5.0%)と、3年連続で増加すると予測する(図表8)。支給額が70万円を超えるのは2018年以来で、夏よりも冬の方が多かった期末手当が夏冬均等に支給されるようになった2019年以降で初めてとなる。ボーナスの基準となる基本給が2.76%増加するうえ、ボーナス支給月数が昨冬から0.05ヵ月分(勤勉手当、期末手当がそれぞれ0.025ヵ月分)引き上げられる。公務員の給与・ボーナスは、今後も民間の賃金上昇に追随する形で増加が続くとみられる。
図表8 冬のボーナス予測(国家公務員)
本調査から、2024年冬の民間企業のボーナスは、前年比+2.5%と4年連続で増加が見込まれることがわかった。また、支給労働者割合は前年比+3.9%ポイントの85.8%と、前年から大幅に上昇しており、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も前年比+5.9%の4,409万人と、3年連続で過去最多を更新することが予測される。いまだ続く賃上げ競争のなか、人材確保に向けてはボーナス額も大きな訴求ポイントとなるだろう。本調査結果を参考に、自社のボーナス支給額等について今いちど精査してみてはいかがだろうか。



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