そのような人たちの中には、発達障害を持っている人が少なからずいると考えられている。諸説あるが、発達障害の人は人口の 1% から 10% とも言われており、決して珍しい存在ではない。
発達障害の人たちとどのようにつきあっていけばいいのか。まわりの少しの配慮でそのような人たちが元気に働けるとしたら、職場自体の雰囲気や生産性にもよい影響があるだろう。
(厚生労働省「発達障害の理解のために」より)
■ 発達障害ということばが示す範囲は幅広い
「AD/HD(注意欠陥多動障害)」「LD(学習障害)」「アスペルガー症候群」などのことばは、あなたも耳にしたことがあるのではないだろうか。俳優のトム・クルーズがLDの一種である識字障害であることは有名だ。このように、障害を抱えながら、社会的に成功していたり、通常の仕事は問題なくこなせる人も数多く存在する。
上の図を見ていただきたい。ひとことで発達障害といっても、その範囲はかなり幅広く、さまざまな特徴がある。共通点といえば、行動やコミュニケーション、社会適応などに問題を抱えている「生きにくい」人たちだということだ。
発達障害という概念が広まる前には「ふつうの人」と捉えられていたので、このような人たちの「生きづらさ」はなかなか理解されず、「性格が偏っている」「なまけている」「能力が低い」などと見られがちだった。
そもそもは、子供の問題が中心に考えられてきたが、発達障害は、「先天性な脳の特性」というべきものであり、おとなになったからといって治るわけではない。社会に出てからもさまざまな問題を抱えることが多いため、「おとなの発達障害」も注目されるようになったのが、近年のことだ。平成17年4月からは、「発達障害者支援法」が施行されている。
ところが、発達障害という言葉が広まるにつれ、理解が深まるどころか、言葉自体が拡大解釈されることも増えている。
「あの人アスペ(アスペルガー症候群)っぽいよね」などと軽々しくウワサすることは、相手を傷つけこそすれ、その人の「生きづらさ」を理解し、職場の同僚として、ともに働いていこうという方向性とは正反対である。そのような心ないレッテル貼りは、くれぐれも、つつしみたいものだ。
■ お互いに働きやすくするために工夫しよう
発達障害にあてはまるような行動をする人が職場にいたら、素人診断を振り回すのではなく、お互いに働きやすくなるような工夫を考えたい。具体的には、次のようなことが考えられる。
・「適当に」「だいたい」「きちんと」「きれいに」などと指示をすると伝わらないことが多いので、より具体的に表現する。
・頭で指示をするとわかりにくいようであれば、簡単なイラストや写真をを見せたり、見本を示したりする。
・だいじな用件は、口頭だけでなく、紙に書いてわたしたり、メールに書いて送るようにする。
・ただ「やっておいて」ではなく、いつまでに、なにをするのか、ふせんに具体的に書いて、すぐに目につくところに貼っておく。
・まかせっぱなしにするのではなく、定期的に状況を聞き、アドバイスしたり励ましたりする。
・相手がこだわっているところは、仕事に大きな支障がない限り尊重する。
ただしこれは、あくまでも一般的な例であり、それぞれの発達障害に応じた情報を、ネット上のサイトや書物などで集めるとよいだろう。
ちょっとめんどうかもしれないが、だれもが自分と同じように考え、行動すると思っていては、さまざまな立場や文化の人がいっしょに仕事をするという、これからの職場ではやっていけない。相違点の多い相手とも、互いに尊重しながら働くという意味合いからも、発達障害の人たちとのつきあい方を考えてみてはどうだろうか。
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/セクハラ・パワハラ防止コンサルタント/産業カウンセラー
李怜香(り れいか)