最も多い残業時間は「月30時間未満」。一方、法定外の時間外労働を実施している企業も
労働基準法改正により、時間外労働のルールが大きく変わったが、中小企業における従業員の残業時間は減っているのだろうか。はじめに、「従業員の中で、最も多く残業している方の残業時間」について尋ねた。回答を経営者と人事・労務担当者別に見てみると、経営者では「月30時間未満」が63.9%で最も多く、以下、「月30時間~月45時間未満」(14.2%)、「月45時間~月50時間未満」(9%)と続いた。一方、人事・労務担当者の回答は、「月30時間未満」の36.2%が最も多く、「月30時間~月45時間未満」(23.8%)、「月50時間~月80時間未満」(16.2%)だった。順位は経営者・人事担当者共に同様だったが、各回答結果の割合は異なり、経営者のほうが従業員の残業時間は短いと感じていることがわかった。労働基準法では、36協定で設定出来る時間外労働の上限を「月45時間」と定めているが、この上限を超えて残業している人が多い職場も一定数あることがうかがえる。
社員からの残業希望に対する対応について本レポートでは、「繁忙期は在宅勤務なら可にしている」や「自分でどのくらいの時間が必要か自己申請の上、上司と確認してからなら可能」、「副業を認める。繁忙期と閑散期で調整する」などの回答を例に挙げていた。
残業時間管理の課題に対してどのような対応を進めているのか?
続いて、「残業規制が厳しくなってから、実施している対策」について、上位3つまで聞いている。その結果、最多であったのは「有給休暇の消化率を上げる」で30.1%。以降、「なるべく月45時間内の残業を守る」が29.4%、「これまで以上に勤怠管理を徹底する」が28.9%と続いた。特に労働基準法の改正により厳しくなった内容について対策をしている人が多いことがわかる。さらに、「自身の立場から従業員の健康を守るのに必要なのはどのようなことか」を上位3つまで尋ねている。43.5%と最多だったのは「休暇や休養」。次点は、「メンタルケア」の38.7%、3番面は「残業時間の調整」で31.8%であった。休暇や休養は従業員側の意識も重要となり、メンタルケアには専門的な知識も必要となる。経営者や人事・労務担当者のみで、更なる対策を進めることには限りがあるのが現状のようだ。
産業医を活用している中小企業経営者の割合は3割未満
「従業員の健康に関して、誰に相談しているか?」との問は、上位3つまで選んでもらっている。結果は、「産業医」が25.5%でトップ。以下、「社労士」の24.3%、「知り合いの経営者」が16.3%と続いていた。健康に関する相談は医師に確認するのが最適だが、産業医がいない企業では、社労士や同じ立場の経営者など、健康面の専門家でない相手を相談先としており、万全な対応ができない企業もあることがうかがえる。産業医を活用している企業の「具体的な活用方法」とは?
上記で「産業医を活用している」とした回答者に「産業医をどのように活用しているか」聞いている。上位3項目は「従業員の健康指導」(51.6%)、「ストレスチェックやメンタル相談」(41.4%)、「過重(長時間)労働者面談」(33.3%)であった。産業医は専任する事業場への定期的な巡視が義務付けられており、従業員が健康的に働ける状態か確認することが職場環境の改善・整備につながっているようだ。