ポストオフによって変化したものは「賃金」などさまざま
現在、「役職定年制度」や「役職任期制度(一律の年齢や期間で組織長などの役職を外れる制度)」、またはそれに準ずる制度の運用により、役職を外れる「ポストオフ」を導入している企業もあるだろう。ミドル・シニア世代の活躍が重要性を増すなか、ポストオフ後の社員が「新しい環境に適応している」と感じるポイントは、どのような点にあるのだろうか。はじめに、「ポストオフ前と比較したときの変化」を尋ねると、「下がった・減った」という回答が最も多かったのは「賃金」で、82.8%という結果に。以降、「周囲からの期待の大きさ」が56.1%、「仕事量・労働時間」が52.9%と続いた。
反対に、「変わらない」と「上がった・増えた」の項目の合計値が多くなった項目は、「1日に会話する人の数」(51.1%)、「自分で判断し主体的に進める度合い」(55.2%)、「顧客満足や組織業績の向上への影響力」(56.7%)、「仕事の成果の見えやすさ」(60.5%)、「新しいことを勉強する時間や機会」(62.3%)だった。
失ったものは「給与や期待」。その反面、「時間や余裕」を得られたと回答
次に、「ポストオフによって失ったものと得たもの」の自由回答を分析すると、「給与」や「期待」、「情報」を失ったという回答が多く見られた。一方、得られたものとして、「時間」や「自由」、「余裕」との回答が多くあがった。「専門性や知識の習得」で、ポストオフ後は適応感が良好に
続いて、「ポストオフに向けて準備していた/意識して行っていたこと」を尋ねた。ここでは、ポストオフ後の新環境について、回答者を「好適応群」と「普通・適応苦労群」に分けて、回答結果をまとめている。その結果、部長ポストオフで好適応だった人が挙げたのは、「専門性の高い知識やスキルを身につける」が49.5%で最も多く、以下「役職や地位などの権威を振りかざすことがないよう心がける」が48.4%、「最新の知識を学び続ける」が45.3%と続いた。
また、課長ポストオフで好適応だった人の上位は、「役職や地位などの権威を振りかざすことがないように心がける」(46.2%)、「プレイヤー業務を手放さない」(36.3%)、「社内の人脈を広げる」(28.6%)という結果だった。役職以外の現場業務を遂行するための知識の更新や、立場を持ち出さないフラットな関係性の構築が、ポストオフ後の適応感を高めるポイントといえそうだ。
適応感を高めるには「上司からの尊重と高い期待」や「インクルーシブな風土」が重要
さらに、成果や居場所、やる気など「現在の仕事への適応感」を高める要因について、複数要素からの影響を比較検討できる「重回帰分析」を行い、「環境」と「個人」のそれぞれの要素から「適応感」につながる要因を探った。その結果、「環境要因」では「上司からの尊重や高い期待」と「インクルーシブな風土(誰にでも発言権があり、年齢によらずよい仕事が評価される)」の2項目が、ポストオフ後の適応感を特に高めていることがわかった。
また、「個人要因」においては、「拡張・協同ジョブ・クラフティング(同僚と共感したり、助け合ったりしながら役割範囲や人との関わりを広げる)」という本人行動が、ポストオフ後の成果や居場所作り、活力を生み出すことにつながっていることが明らかとなった。
上司によるマネジメントを「放任型」、「伴走型」、「放置型」の3タイプに分類
続いて、「ポストオフ者に対する上司のマネジメント行動」を尋ね、内容を「尊重と高い期待」、「伴走」、「放置」の3種類に分けて分析した。その結果、ポストオフ者の受けているマネジメントは、以下の3タイプに分かれることが判明した。タイプ1:「放任型」
「尊重と高い期待」、「伴走」、「放置」がいずれも高く、全体の26.5%という結果となった。
タイプ2:「伴走型」
「尊重と高い期待」、「伴走」が高く、「放置」が低い。このタイプは全体の47.4%と、最も多くを占めた。
タイプ3:「放置型」
「尊重と高い期待」と「伴走」が低く、「放置」が高い傾向にあり、26.1%となった。