日本能率協会総合研究所(以下、JMAR)は2020年11月、「テレワークにおけるコンプライアンス上の課題」に関する調査結果を発表した。調査期間は2020年9月4日~6日で、2020年7月~8月に週1回以上テレワークを経験した会社員・公務員・団体職員(経営層は除く)の1,000名から回答を得た。これにより、テレワーク環境におけるリスク管理と、コンプライアンス上の課題などが明らかとなった。
半数がテレワーク中に「不快な行為を受けた経験あり」。セキュリティリスクやコンプライアンス遵守のため対策すべきことは

約4割が「第三者がのぞき見できる環境」にあり。不十分な情報漏えい防止策

働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大下においてテレワークが浸透する中、「情報漏えい」などのリスクが高まっている。では、ビジネスパーソンの情報漏えいに関する意識はどうだろうか。

「テレワークを行う場所」は、回答者の9割以上が「自宅」とし、「サテライトオフィス」や「飲食店」など他人の目がある場所でテレワークをしている人は1割未満だった。また、「テレワーク時の使用端末」は、「会社貸与の端末」が79.6%、「会社から許可された私物の端末」が18%と、大多数は所属先のセキュリティチェックをクリアしたものを利用しているという。その一方で、「会社からの許可がない私物の端末」を利用している人も8%おり、1割未満であるが、セキュリティリスクが存在する状況も判明した。
「テレワークにおけるコンプライアンス上の課題」の図表1
また、「のぞき見対策の実施状況」を尋ねると、「対策をしている」が28.3%、「のぞき見される環境にない」が28%と、合わせて6割弱は対策が実施できているようだ。その一方で、「のぞき見防止対策を取っていない」という人も43.7%おり、コンプライアンス上、大きなリスクが存在していることが明るみに出た。
「テレワークにおけるコンプライアンス上の課題」の図表2

2人に1人は「テレワーク中に不快行為」を受けた経験が。その具体的な内容とは

続いて、「テレワーク実施中に何らかの不快な行為をされたことがあるか」と尋ねた結果、「不快に思ったことはない」が45.6%となり、過半数は何らかの行為に不快感があることがわかった。具体的には、「高い負荷を伴う業務依頼」が24.4%で最多に。以下、「行き過ぎた叱責や人格否定の発言」が18.4%、「頻繁に仕事の進捗についての報告を強要」17.4%と、共に2割弱が回答した。さらに、その行為の多くは上司から受けたものであることもわかった。
「テレワークにおけるコンプライアンス上の課題」の図表3

6割以上がテレワーク下でも生産性を保っている

また、「テレワークによって生産性は変化したか」を質問したところ、「向上した」が19.4%、「変化はない」が約半数の46.7%となり、合計で6割以上がテレワークでも生産性を保っていることがうかがえる。一方で、「低下した」も27.7%と、3割弱が課題を感じていることもわかった。
「テレワークにおけるコンプライアンス上の課題」の図表4

約8割が今後もテレワーク頻度を「維持または増やす」ことを希望

最後に、「今後テレワークをどの程度の頻度で継続したいか」を尋ねた。すると、「頻度を上げたい」が22.7%、「現在の利用頻度を維持したい」が55.5%となり、およそ8割が今後も現在と同程度以上にテレワークを実施したいと考えているようだ。一方、「利用頻度を下げたい」が16.3%、利用したくないが4.7%と、消極的な反応を見せた人も合わせて21%となった。課題はあるものの、全体としてはテレワークに対する前向きな姿勢が見られた。
「テレワークにおけるコンプライアンス上の課題」の図表5
情報漏えいや不快行為など、対策が必要とされる課題は散見されたものの、新たなワークスタイルに前向きな姿勢のビジネスパーソンが多いようだ。企業の情報セキュリティやコンプライアンスが守られるように、引き続きテレワーク推進と並行してリスク管理を進めていく必要がありそうだ。

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