賃金が最低賃金以上となっているかのチェックの方法は次のとおりです。
(1)時給の場合:時間給≧最低賃金額
(2)日給の場合:日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額、ただし特定(産業別)最低賃金には日額で定められている場合がありますので、この場合は日額を比べてチェックします。
(3)月給の場合:月給÷1か月の所定労働時間≧最低賃金額、ただし基本給が月給制で手当が時間給制などの場合は、それぞれ時間額に換算して合計した金額を最低賃金額と比べます。
また、最低賃金額との比較には次の賃金は算入しません。(a)結婚手当など臨時に支払われたもの、(b)賞与など1ヶ月を超える期間ごとに払われたもの、(c)時間外労働、休日労働、深夜労働に対する賃金、(d)精皆勤手当、通勤手当、家族手当
派遣社員の場合は、派遣元と派遣先の都道府県が違う場合、派遣先の最低賃金が適用されます。派遣会社以外では事業所ごとにその所在地で最低賃金が適用されます。
サービス業などで地域の事業所(店舗など)ごとに時給を定めている会社や、パート・アルバイトなど地域の事業所ごとに時給が違う場合もよくあります。他県の店舗に応援などに行く場合は、もともと所属している事業所からの指揮命令を受けて他県で一時的に就労すると考えられますので、原則として、もともと所属している事業所の最低賃金が適用されます。例えば最低賃金777円の千葉県内の従業員が最低賃金869円の東京都内の店舗へ応援に行って就業した場合、千葉県の777円が適用されます。また、千葉県の事業所から東京の研修に参加する場合も、短期間のものであればこの従業員には千葉県の最低賃金を適用すればよいことになります。
これらに違反して、行政官庁(労働基準監督署)の是正指導に従わなかった場合、悪質だとみなされた場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは50万円以下の罰金に処せられることがあります。
東京都の最低賃金金額改正一覧によると、昭和48年の最低賃金は181.25円でした。昭和63年に500円台、平成4年に600円台、平成12年に700円台、平成22年に800円台になり、現在は869円となりました。地域別最低賃金で働いた収入が、生活保護の給付水準を下回るという「逆転現象」も問題となっており、2009年には民主党が最低賃金1,000円をマニュフェストに掲げ注目を集めましたが、今回の改正で逆転現象が残るのは北海道のみとなりました。
最低賃金の引上げは企業の負担が多くなるので、雇用や経常利益などにマイナスの影響を及ぼすイメージが強いものです。厚生労働省では経済産業省と連携し、最低賃金引上げにより、大きな影響を受ける中小企業に対する支援事業を実施しています。生産性の向上等の経営改善に取り組む中小企業の労働条件管理などの相談を受け、ワンストップで対応する相談窓口の開設による支援体制の整備、最低賃金引き上げの影響が大きい業種が業界を挙げて賃金底上げのための環境整備に取り組む場合の助成金による支援、最低賃金の大幅な引き上げが必要な地域で、最低賃金が800円以上になるよう賃金水準の底上げに対する支援対策補助金などの支援が実施されています。詳しくは下記ホームページからご確認ください。
HRプロスクール 講師 富山節子
(株式会社ブレインコンサルティングオフィス 取締役)