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人事労務担当者が従業員の休職時にとるべき対応
まずは休職者に対し、休養に専念すること、うつ病が軽快したら復職ができることを伝え、安心させた方がよい。そして、休職制度について説明をする。その際には制度や休職中の窓口などが一覧できるリーフレットがあるとわかりやすい。記載しておく項目としては、以下の内容があげられる。・休職可能な期間
・療養から復帰までの流れ
・復職の条件
・傷病手当金
・社会保険料などの負担
休職中に従業員が負担する社会保険料については、毎月会社の預金口座に振り込んでもらうか、復職をした後の給与や賞与、もし退職する場合には退職金から控除するなどの方法が考えられる。
賃金の控除は賃金全額払いの原則(「労働基準法」の24条)に違反するおそれがあるので、あらかじめ明文規定を設ける。規定の有無にかかわらず、内容を説明したうえで、個別に同意を得なければならない。また、控除の方法は従業員の生活に支障をきたさないようにした方がよい。
また、うつ病の従業員から、突然、診断書が郵送されてきて休職申請がなされることがある。休職者と連絡が取りづらいことが原因であるが、こういった連絡は1回すればよいというわけではない。面談や電話ができないのであれば、郵便や電子メールも使って複数回連絡の実施をする。
休職者と話す際は、本人の意向や必要性を踏まえ、家族を同席させることは有用だ。むしろ積極的に家族と連携すると、本人からは得られない健康状態や治療状況、生活状況などの情報を得ることができる。
そして、休職者の主治医にも休職制度や傷病手当金を説明しておくとよい。復職にあたって初めて主治医と会うのではなく、休職時から関係を築くことが肝要である。
以上の対応をするために、人事労務担当者や産業保健スタッフ、管理職が連携するための社内窓口を一本化することが望ましい。
休職中の状況把握
次に、休職中は、仕事を気にせず、療養に専念してもらう必要がある。そのため、会社貸与の携帯電話やパソコンがあれば休職する際に引き取り、私物による社内ネットワークへのアクセス制限をすることを検討する。ただし、復職時にパソコンや携帯電話を再貸与することを説明し、「退職勧奨」と誤解されて病状が悪化することを防止しなければならない。休職中も定期的に休職者に連絡を取り、面談や電話をするなどして生活状況や健康状態などを確認する必要もある。休職者に負担がかからない範囲で、病状や原因についてヒアリングをすると、その情報は復職時の資料にもなる。
なお、定期的な報告を従業員に義務づけるのであれば、あらかじめ就業規則に規定を設けておくべきである。明文規定がなかったとしても運用としては可能だが、私生活の状況を報告することになるので、趣旨を説明した上で本人の同意を得た方がよい。単に口頭で承諾を得るだけでなく、企業側から説明したうえで、その内容を理解した旨の文書に従業員のサインをもらっておくことが無難である。
特にうつ病発症が、職場のストレスが要因となっている場合、休職当初は会社関係者と会おうとしないことがあるので、あえて一定の連絡しない期間を設け、その後に比較的抵抗の少ない電話での話し合いから始めるとよい。
健康状態が回復してきたら面談を始めることになるが、最初は管理職や人事労務担当者ではなく、産業医や衛生管理者(衛生推進者)などの産業保健スタッフが月に1回担当し、徐々にほかの関係者が面談したり、回数を増やしたりすることが考えられる。面談する場所についても、最初は自宅付近の喫茶店といった所で実施し、慣れてきたら会社に来てもらうようにする。本人から情報が得られなければ、家族に連絡することも検討する。
以上の対応は、必ずしも規定を形式的に実行するというのではなく、病気の状況に応じて柔軟に対応した方がよい。
人事が間違えないための、うつ病休職する従業員との関わり方【後編】