どのような成果が生まれているんですか?
この1年半で、次期グローバルリーダー候補者として、非日本人100名以上を含めた300名超を特定しました。このタレントプールをデータベース化して、本人が何をやりたいのか、会社の戦略を踏まえてその人財をどう活かすのかという両面から、育成や適所適材を実現させていきます。
タレントプールの3割ほどがすでに非日本人ですか。早いですね。
2015年秋には本社の人財委員会を立ち上げました。各事業部の優秀人財を発掘し、その人たちがどういう特性を持っているか、人事によるインタビューと人財要件に基づくアセスメントを行い、その結果を踏まえて、アサインメントを始めとする育成計画などを人財委員会で議論するという流れで進めています。グローバルでも各リージョンの人財委員会がスタートし、私たちもそこに参加していますが、今後、各リージョンのタレントのデータベースがつながると、もっと議論が簡便になると思います。グローバル人財マネジメントのプラットフォームとして、タレントマネジメントのシステムを新たに導入する予定です。
国や地域を超えた異動の検討なども、やりやすくなりますね。
新しい施策をほかにも始めます。今、グローバルの各キーポジションの将来職務要件を明確にして、職務記述書の作成を全員にお願いしていますが、これを全社員に公開します。そうすると、例えば、マーケティングのトップのポジションで仕事をしたいと考えている若手がいれば、その職務記述書を見て、「こういうスキルが必要だから伸ばしていこう」と考えるでしょう。
自律的成長の指針にするという意味で、職務記述書を公開すると。それはいいですね。
お話をお聞きして、Shared Valueという考え方を軸にした経営戦略にも、それを支える人事施策にも、味の素さんの独自性が強く打ち出されているように感じます。
似通った人事制度はどこの企業でも作れます。味の素らしさというものが、そこにないといけないと考えています。味の素らしさとは何かというと、まず、ASV(Ajinomoto Group Shared Value)です。こうした経営に移行できている企業はまだなかなかありません。また、一人ひとりを大事にし、一人ひとりを活かす企業であるというところも、もっとメッセージを出していきたいと思っています。
そういう味の素らしさというものは、日本人だけでなく、世界中の人々にも響くのではないでしょうか。
そう思います。グローバルリーダー研修でも、各国から集まった社員にこうした味の素らしさを伝えていますが、最後には、そうしてくださいと言わなくても、社会価値と経済価値を連鎖創出させる考え方を入れ込んだプレゼンテーションを熱っぽく語ってくれています。また、海外で幹部として採用した優秀な非日本人と話をすると、味の素のShared Valueの考え方や、人を大事にするところがいいと思ったということをよく聞きます。
一般的な欧米系グローバル企業とは違った、そういうものを求める非日本人は意外にいると思います。差別化ができますね。
ビジネスと社会貢献が一体化した取り組みを社員が考えて提案し、それを会社として実現させる例も出てきています。例えば、ベトナムの現地法人では、現地の子供たちが栄養バランスのよい食事をとれるように、日本型給食の小学校への普及に取り組んでいますが、これは社員のアイデアから始まったものです。
上から言われたからではなく、社員が自分たちで押し上げていくと。
こういう流れが大きくなっていくと、味の素は世界的に面白い会社になると思っています。
非常に期待できますね。今日はありがとうございました。
味の素株式会社 グローバル人事部 次長
1983年、農林水産省入省。1990年にフルブライト奨学生として米国Georgetown 大学へ留学し、MBAを取得。1993年からはコンサルティング会社にて、組織再編、新規事業実施などにともなう組織構築、人材開発などに関するコンサルティングを担当。その後、人事に転じ、ファイザー株式会社、日本べクトン・ディッキンソン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社の人事部長を歴任。2014年7月に味の素株式会社へ入社し、2017年4月から現職。味の素グローバル戦略推進に向けた、グローバル人事制度の構築と実施をリード。
1983年、農林水産省入省。1990年にフルブライト奨学生として米国Georgetown 大学へ留学し、MBAを取得。1993年からはコンサルティング会社にて、組織再編、新規事業実施などにともなう組織構築、人材開発などに関するコンサルティングを担当。その後、人事に転じ、ファイザー株式会社、日本べクトン・ディッキンソン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社の人事部長を歴任。2014年7月に味の素株式会社へ入社し、2017年4月から現職。味の素グローバル戦略推進に向けた、グローバル人事制度の構築と実施をリード。
HRエグゼクティブコンソーシアム 代表(元 中央大学大学院 客員教授)
NEC日本電気など東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授を7年経験した後、2017年4月よりHRエグゼクティブコンソーシアム代表に就任。2009年より年間500社の人事部門を6年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問なども担う。年間50回以上のセミナーに登壇。2014年は日本テレビNEWS ZEROのコメンテーターも担った。シンガーソングライターとしてもプロ活動している。
NEC日本電気など東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授を7年経験した後、2017年4月よりHRエグゼクティブコンソーシアム代表に就任。2009年より年間500社の人事部門を6年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問なども担う。年間50回以上のセミナーに登壇。2014年は日本テレビNEWS ZEROのコメンテーターも担った。シンガーソングライターとしてもプロ活動している。