経営×人事×タレントマネジメント
Vol.11 世界で勝ち抜く「次の日立」創りに向け、グループグローバルな人財マネジメントへの移行を推進
経営リーダー候補と社長のランチミーティングは年20回
次世代リーダーの育成については、どのように取り組まれていますか。
グローバルリーダーシップディベロップメント(GLD)を2012年度から新たにスタートさせました。成長戦略を具現化するために必要な経営人財をグループグローバルで確保、育成し、特に重要なキーポジションに、必要があればグループ外から採用して、最適な人財を配置できる状態にするというところが、目ざすゴールです。プロセスとしては、まず、各社・各部門の事業戦略、成長戦略上、重要な経営リーダーのポジションをKP(Key Position)として選定し、KPごとに求められる役割や人財要件を定義して、ジョブディスクリプションを作成しています。次に、それに見合った候補者をKPごとにGT(Global Talent)として選抜し、その候補者をアセスメント(評価)した上で、本人の強みや弱みを踏まえ、タフアサインメントを中心とする個別の育成プランを策定・実行しています。
もちろん、選抜される人は日本人とは限らないわけですね。
国籍も、年齢、性別も問いません。3年目の2014年度からは「勝てるリーダー」を創り込んでいく取り組みを開始し、KPのうち、特に重要な約50ポジションをKP+として選定し、GTのうちKP+の候補者500名ほどをGT+として選抜しました。そして、このGT+の選抜や育成、アサインメントなどについて、本社の人財委員会で議論しています。人財委員会の構成は、日立製作所の会長、社長、担当役員、該当部門の長とHR責任者、そして事務局として我々が入っています。セッションは基本的にKP+ごとに実施し、2016年度は32回行いました。
32回もですか。トップのコミットメントがないとできませんね。
そうだと思います。GT+の育成施策として、500名ほどのGT+の中でも次を狙えるくらいのトップ100を中心にアセスメントを行い、さらに社長とのランチミーティングも行いましたが、1回に4〜5名を呼んでじっくり1時間の直接対話、これを20回、行いました。この他にも、GT+と社長・副社長が経営課題について直接議論する場を設ける等、経営陣に直接育成に携わってもらうことで、GT+の視野を広げ、視座を高めたいと考えています。
本社人財部門はメンバーのほぼ半分が非日本人
お話を聞いていると、2011 年度に取り組みをスタートされてから、非常に大きな変革を相当なスピード感でやり遂げてこられたという印象です。
やはりトップの強いコミットメントと、冒頭に申し上げた危機感、この2つが原動力になっていると思います。ですが、まだまだこれからです。当社のビジネスにおいては、今、国と会社を超え、ひとつの事業としてオペレーションを推進することが必須になっています。例えば、鉄道事業に関しては、グローバルCEOはイギリスにおり、日本にも日本のCOOがいて、M&Aも進めているので、その地域にも従業員が大勢います。今後は、国と会社を超え、組織と人をいかにマネジメントしていくかということが、ビジネスの成長を左右するわけです。そこで、今、導入を進めているクラウド型システムを使った新人財情報システムを、国と会社をまたがるタイムリーな情報共有や意思決定支援に活用していくといったことを、いろいろ考えているところです。
作ってきた人財マネジメント基盤を、次はビジネスの成長につなげていくと。
また、グローバルリーダーシップディベロップメントに関しても、選抜者は年齢が比較的高い日本人男性が多く、女性や非日本人はまだ少ないのが現状です。多様な人財をいかに確保し育成するか、優秀な若手にいかに早くから経営リーダー候補としての経験を積ませるかということは、今後の重要な取り組み課題です。
最後にお聞きしますが、人財部門自体も変わることが求められてきたのではないでしょうか?
おっしゃる通りです。人財統括本部は、本社に置くグローバルHR部門と、日本を始め世界各地域に置くリージョナルHR部門に大きく分けました。本社人財部門の陣容は、中畑執行役常務がトップで、グローバルHR部門を統括するのは、Levent Arabaciで、在勤地はアメリカです。彼が毎月1回は日本に出張してくるので、ディスカッションしながら大きな方向を決め、その方向に沿ってプロジェクト単位で仕事を進める形に変わりました。そのプロジェクトを取りまとめているImtiaz Shaikhも、Levent同様アメリカ在勤で、Imtiazの下にリクルーティング、ラーニング&ディベロップメント、タレントマネジメントなどさまざまなプロジェクトがありますが、メンバーのほぼ半分の20人ほどが非日本人です。日本人と非日本人が入り混じり、みんなでディスカッションしながら個々のグローバルな取り組みを進めていっている状況です。
HRも大きくトランスフォーメーションされていると。今日はありがとうございました。
瀧本 晋
株式会社日立製作所 人財統括本部 グローバルタレントマネジメント部 部長
1992年日立製作所入社。日立製作所 情報通信事業部にて、事業部内の文書管理、採用・教育、人事を担当。2000年日立製作所 採用企画部にて、全社技術系採用に携わる。
2005年日立製作所人財戦略室にて、組織・人財産開発、2010年から日立アメリカに出向して、人事を担当。2016年から現職。
楠田 祐
HRエグゼクティブコンソーシアム 代表(元 中央大学大学院 客員教授)
NEC日本電気など東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授を7年経験した後、2017年4月よりHRエグゼクティブコンソーシアム代表に就任。2009年より年間500社の人事部門を6年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問なども担う。年間50回以上のセミナーに登壇。2014年は日本テレビNEWS ZEROのコメンテーターも担った。シンガーソングライターとしてもプロ活動している。
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