レーティングを外すことによって、フィクストマインドセットからグロースマインドセットに変わっていってもらおうと。
また、レーティングを外すと同時に、マネージャーと部下の関係をもっと密にして、部下が成長するための対話をどんどんしていただくということをきわめて重要視しています。
マネージャーが部下のことをいかによく見て、対話をして、フィードバックできるかということが大事になるわけですね。
「この行動は良かったですね、だからこういういい結果に結びついたね」と具体的にほめてあげないといけませんし、改善してほしいところは、「次は頑張ってください」というのではなく、「これはこういう結果に終わったけれど、あの時どういうふうにすれば良い結果につながったと思う?」というように、一歩踏み込んでコーチングを含めた対話をしていかないと気付きにはなりません。
質の高い対話ができる力を、マネージャーの方々が持っている必要がありますね。そこはどのように?
今回の新しいパフォーマンスマネジメントを私たちはパートナリング・フォー・サクセスと呼んでいますが、このプロセスを導入するにあたって、部下を持つ全マネージャー、千人以上を対象に、HR全体で手分けして北海道から沖縄まで全国に行き、対面でワークショップを実施しました。20人ほどのクラスルームを合計60セッション以上行いました。
そんなにですか。すごいですね。
そして今回のプロセスについて理解していただき、ワークショップ形式で、このように部下と対話をしていきましょうという話をしてきました。新しいプロセスでは、マネージャーの役割がとても大きく、責任もより重いものになります。今までは期初に目標設定をすると、期末のレビューまでの間に中間レビューが1回だけでしたが、今回、それを2回に増やしました。オフィシャルで4回は絶対に対話をしましょう、しかも質の高い対話を、ということです。さらに、日頃のフィードバックはできるだけ早い時期にすることが大事です。「あの時の行動は…」と3カ月後に言われても響かないでしょう。
そうですね。リアルタイムで、デイリーにやらないと。
ですから、マネージャーの方々は大変だと思いますが、そこを理解し、「やっぱりこれからはこういうふうにやっていかなければチームとしての成長がない」という意識を持っていただかないと、前に進めません。ワークショップを通して意識の共有ができるよう、そこは本当に力を入れて取り組みました。
タレントマネジメントに関して、システムはどのように活用されていますか。
グローバル共通でクラウドベースのシステムを導入しています。今お話したパフォーマンスマネジメントについては、期初に目標設定をしてゴールを決めるところから、中間レビュー、期末レビューまで、すべてその中に記録していく仕組みです。
今日、いろいろお聞きして、AIGさんは先の読めないVUCAの時代に、人材の面でビジネスを支えていくための新しい取り組みを始められているなと感じました。ディベロップメントに非常に熱心な企業だという印象も受けましたが、教育に関してお話しいただけることはありますか。
今、AIGは、グローバルレベルでeラーニングやビデオなど様々なパターンを組み合わせたブレンディッド・ラーニングを導入し始めているところです。例えば、講師がインターネット上に教材をアップして、「あなたは、このトレーニングコースに参加してください。まず、このサイトにアクセスしてください」という形で研修が始まります。受講者は、東京でも沖縄でもサンフランシスコでもカイロでも、どこにいてもいいわけです。そのサイトに行って、アップされていつ動画の教材を見ていただき、そこに貼りつけてある記事も読んでいただく。そして、「ここで学んだことを次の1週間、このチェックシートを持って実践しましょう」というような形で行います。
なるほど、アクションラーニングのようですね。
Web上のシステムを使って、講師が「このテーマについてどう思いますか」と問いかけると、受講者がシステムの掲示板に意見を書き込んだり、マイクを使って生の声でディスカッションするといったことも始まりつつあります。あるテーマについての成功事例や、「こういう状況の時、あなたはどうしますか」といった質問に対してこのツールを使って情報を同時に共有し、何かあればマイクを通して質問することもできます。
ナレッジの共有ですね。いろいろな要素をブレンドして学んでもらうと。面白いですね。
日本でも今後、本格的に始めていこうと、日本語版を作成予定です。
教育も大きく変わりそうですね。今日はありがとうございました。
AIGビジネス・パートナーズ株式会社 タレントマネジメント部 部長
イギリスのUniversity of HullでMBAを取得後、2003年にAIGグループに入社。日本で5年間、教育とタレントマネジメントにかかわり、その後ニューヨークの本社へ異動。3年半タレントマネジメントとエグゼクティブディペロップメントマネージャーとして勤務。2011年に帰国後、タレントマネジメント・シニアマネージャー、グループ内保険会社の人事部長を経て、2015年11月より現職。
イギリスのUniversity of HullでMBAを取得後、2003年にAIGグループに入社。日本で5年間、教育とタレントマネジメントにかかわり、その後ニューヨークの本社へ異動。3年半タレントマネジメントとエグゼクティブディペロップメントマネージャーとして勤務。2011年に帰国後、タレントマネジメント・シニアマネージャー、グループ内保険会社の人事部長を経て、2015年11月より現職。
中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール) 客員教授
戦略的人材マネジメント研究所 代表
東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。2009年より年間500社の人事部門を5年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問も担う。主な著書:「破壊と創造の人事」(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)2011年は、Amazonのランキング会社経営部門4位(2011年6月21日)を獲得した。最新の著書は「内定力2015〜就活生が知っておきたい企業の『採用基準』」(出版:マイナビ)
戦略的人材マネジメント研究所 代表
東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。2009年より年間500社の人事部門を5年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問も担う。主な著書:「破壊と創造の人事」(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)2011年は、Amazonのランキング会社経営部門4位(2011年6月21日)を獲得した。最新の著書は「内定力2015〜就活生が知っておきたい企業の『採用基準』」(出版:マイナビ)