そもそも「人事評価制度」とは?
極端な話、どれだけ時給がよかったとしても、組織の中で“認められている”と感じられなければ、モチベーションは上がらないものですよね。努力や成果を認めてほしいと思うのは、アルバイトやパートのスタッフであっても同じです。アルバイト・パートを雇用する企業から受ける相談のなかには、「ふさわしい賃金や待遇を用意しているはずなのに、熱心なスタッフが次々と辞めていく……」というものも。
これらの企業に共通するのは、社員がアルバイトスタッフを「バイト君」などと呼ぶほか、勤続年数で一律に昇給するなど、働く側の承認欲求に無頓着な点です。
一方で、スタッフの呼称を「キャスト」や「クルー」と変えたり、スキルによってリーダーに任命し、賃金に差をつけたりして承認欲求を上手に満たし、サービスの向上へとつなげている企業もあります。
このように、承認欲求に着目した手法にはさまざまな種類があり、なかでも現場に取り入れやすく、効果を実感しやすいのが「人事評価制度」です。
一般的に、「人事評価制度」は正社員に対して用いられるものです。そして、多くが各社員の能力に対し、適正な処遇を維持することを目的としています。
しかし、アルバイト・パートに対して導入する場合は、スタッフのやる気アップが最大の目的。それぞれのスタッフの長所をきちんと褒めて、働き甲斐を感じてもらうために行うのがポイントです。
この制度の良いところはスタッフの“やる気アップ”に限りません。その他の導入のメリットをご紹介しましょう。
“やる気アップ”の他にもある! 「人事評価制度」のメリット
●仕事ぶりを“見える化”することでサービス向上につなげられる
気持ちいい接客や気配りなど、アルバイト・パートに求められる抽象的な要素を数値化することで、各スタッフの苦手分野が明確になり、努力目標の設定に役立つ。その結果、店舗全体のホスピタリティを高めていける。
●勤務態度やスキルに応じて、公平な形で処遇に差をつけられる
処遇が一律だったり、不公平だったりすると優秀な人ほど不満をためやすい。人事評価制度によって、勤務態度の良好なスタッフ、あるいはスキルの高いスタッフが明確になり、処遇に差をつけやすい。
●スタッフとの大切なコミュニケーションツールになる
自身の努力に対して、正当な評価を得られることはスタッフにとってうれしいこと。面談の形で真剣に伝えることで、より強い信頼関係を築くことができる。
企業や店舗が取り入れている「評価制度」の実例
「人事評価制度」と一口に言っても、内容や運用方法は企業や店舗によって千差万別。何を評価するかによって、制度の名前も変わります。そこで、実際にある評価制度の中から代表的なものを3つご紹介しましょう。実際に取り入れられている「評価制度」3種類
●一定期間の勤務態度を評価するオーソドックスな「人事評価制度」
基本的な対応やチームワークといった日々の勤務態度を、“よくできている=3点”“普通=2点”“できていない=1点”のように数値で評価する制度。評価の点数によって、時給アップやバイトリーダーといった役割を用意するなど、処遇に差をつける。
●どのくらい難しい仕事ができるかを評価する「グレードランク制度」
「基本的な仕事ができる=Aランク」「担当部門のスケジュールを組むことができる=Bランク」など、スキルでランクを決定する制度。各スタッフへはランクに応じた時給が支払われる。
●専門性やスタッフの長所を評価する「マイスター制度」
「笑顔マイスター」や「スピードマイスター」など、特定の専門性に対して承認を行う制度。マイスター1つにつき★1つとして名札やバックヤードに貼ったり、★の数でエプロンの色を変えたりして、獲得している評価を公にする店舗や企業もある。
スタッフたちへの評価は、「時給」や「役職」、「インセンティブ」などに反映するのが一般的ですが、その他に“ごほうび”を用意するのも一つの手段。
店舗や企業によっては「他店視察制度」といって、優秀な成績をおさめたスタッフに「リッツカールトンホテルに宿泊し、ホスピタリティを学んでもらう」など、報奨を兼ねた遠方の同業他社の視察をスタッフ教育に役立てているところもあります。