株式会社リクルートは、2024年11月18日に「企業の給与制度に関する調査 2024」の結果を発表した。本調査は、企業で等級制度や人事評価制度、給与制度の策定・整備に関する業務に、責任者もしくは中心的な立場として関わる人を対象に行われたもので、合計3062人から回答を得ている。調査結果から、正社員の基本給の決定方法や、昇給幅などの実態が明らかとなった。
【給与制度の最新調査】人事責任者の24.6%が「年功的な運用から脱却できていない」。“給与制度のアップデート”が課題か

基本給は「職能給の割合が高い」企業が4割以上

物価上昇や政府の賃上げ促進税制への対応を受け、2024年春闘では多くの企業が賃上げに踏み切り、基本給の水準を上げる“ベースアップ”は33年ぶりの高水準となった。では、企業はどのような給与制度を定め、給与を決めているのだろうか。本記事ではリクルート社の企業の給与制度に関する最新調査を紹介する。

まず、「正社員の基本給の構成要素のうち、一番比率が高いもの」を同社が尋ねた結果を確認すると、「職能給」と答えた人が最も多かった。具体的には「管理職」では48%、「非管理職」では41.3%と、ともに4割を占めた。なお「職能給」とは、個人の職務を遂行する能力を基準に給与を決定する制度で、日本で広く普及している。

また、管理職回答の2位は、いくつかのグレード(等級)を設定し、該当するグレードに従って給与を決定する「グレード給」(14.6%)だった。他方、非管理職回答の2位は「職務給」(14.1%)で、業務の内容を基に給与を決定する制度となる。第1位の職能給が「人」基準であるのに対し、職務給は「仕事」基準と解説されることが多い。
基本給の構成要素について

基本給決定には約8割の企業が「当期(現在)の査定」を考慮

次に、「基本給を決定する際に考慮されている項目」を明らかにすべく、7つの給与制度(職能給、職務給、グレード給、役割給、成果給、年俸給、勤続給)ごとに考慮される項目に違いがあるかを同社が整理したところ、大きな違いは見られなかったという。また、大まかに「当期」もしくは「前期」のどちらが重視されているのかを比較すると、79.8%の企業が「当期」(現在またはこれから迎える査定期間)を考慮していた。一方の「前期」(直前または間もなく終了する査定期間の成果や実績等)は19.8%と2割を下回ったことから、当期の期待を基に基本給を決定している場合が多いようだ。
基本給の構成要素について

最高評価査定時の昇給幅は「2%未満」が半数超

次に、「最高評価査定時の昇給幅」を尋ねた結果、「2%未満」と回答した人の割合は管理職が50.6%、非管理職が56.2%と、いずれも半数を超えた。他方で、「5%以上」との回答は管理職が24.5%、非管理職が21.1%となった。
最高評価査定時の昇給幅について

「給与テーブル」を9割近い企業が策定。従業員への公開状況は?

次に、「給与テーブルの策定および公開状況」について、「給与テーブルを策定している」と回答した人の割合は、管理職:89.9%、非管理職:86.5%だった。およそ9割近くが給与テーブルを策定し、基本となる給与額や昇給額を定めて運用しているとわかる。さらに、「全ての従業員に給与テーブルを公開している」としたのは、管理職:47.6%、非管理職:43.5%だった。一方、「従業員には公開していない」は管理職:15.6%、非管理職:16%であり、「給与テーブルを策定していない」と合わせると、4社に1社程度であることが判明した。
給与テーブルの策定・公開

人事責任者の24.6%が「年功的な運用から脱却できていない」ことを問題視

最後に、同社は「給与制度運用の課題・改善の必要性を感じること」を尋ねた。すると、管理職の回答で最多となったのは「年功的な運用から脱却できていない」の24.6%で、職位や勤続期間等によって制度の見直しに時間がかかっている実態がうかがえた。一方、非管理職では、「評価者によって評価結果にバラツキがある」が26%でトップだった。人事制度の運用に関わる人事でも、管理職層と被管理職層では課題が異なっているようだ。
給与制度運用の課題
今回のリクルート社の調査結果は、人事制度のコア運用に携わる人事責任者・担当者の声をまとめたものであり、人事現場における実態が明らかとなった。企業規模や業種などによって各社で給与制度は異なっている前提はあるものの、制度の見直しや改善検討に非常に参考となる貴重な情報となっている。本記事では、調査結果の一部を抜粋して紹介したが、自社の現状や課題と照らし合わせて、内容を把握してみてもよさそうだ。

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