「健康保険証」廃止後の新たな仕組みとは?
健康保険証の廃止後は、基本的にはマイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」による受診が基本となります。マイナ保険証は、2021年から既に利用が開始されており、顔認証による本人確認や健康診断などの履歴情報を別の医療機関の医師や薬剤師と共有することが可能となり、高額医療費制度の手続きが省略できるなど、医療のデジタル化促進において大きな役割を果たすと考えられています。
一方で、今まで会社の人事労務担当者が行っていた健康保険証の手続きとは異なり、マイナンバーカードを保有する本人や被扶養者が自身で健康保険証利用の手続きを行う必要があり、注意が必要です。
その他にも2025年12月1日の健康保険証完全廃止前に従業員の方に周知が必要な5つの項目についてまとめてみました。
(1)制度改正について
まず医療機関の受診方法の改正の概要について、あらためて周知します。ニュースや新聞記事で目や耳にしている事柄ではありますが、会社からの通知によって、より身近に改正を実感し、心構えを持つことができますので、「2024年12月2日以降、健康保険証が発行されないこと」、「2025年12月1日までは経過措置があること」など、概要について伝えておきます。改正の概要については保険者(健康保険事業の運営主体)のホームページなどを参考にまとめるとよいでしょう。(2)現行の健康保険証について
現在発行されている健康保険証については、経過措置として基本的には2025年12月1日まで利用することができます。それまでに保険証の有効期限が到来した場合や、退職や事業所の異動等で保険資格の異動が生じた場合、保険証は失効となります。失効後も健保組合等によっては、組合の施設利用や健康診断の際に健康保険証を利用できるケースもあるようですが、医療機関を受診することはできませんのでご注意ください。
経過措置の期間中、退職等で使用できなくなった保険証については、保険者へ返す必要があるため、会社へ返納するよう伝えておきましょう。2025年12月2日以降については、保険証の自己破棄も可能となります。
(3)マイナンバーカードの健康保険証(マイナ保険証)利用について
新しい医療機関受診の仕組みの根本となるのが、マイナンバーカードを保険証利用する仕組み、「マイナ保険証」です。マイナ保険証を利用するためには下記の3つの手順が必要です。1)マイナンバーカードを取得する。
2)マイナンバーカードの保険証利用登録を行う。
3)会社へマイナンバーを提出する。
この3つの手続きについては、被保険者や被扶養者本人が行わなければならないため、保険証の利用が完全に廃止になる前に、あらかじめ手続きするよう、従業員の方へ注意を促しておきます。手続きの詳細については厚労省のページ等に案内が掲載されています。
(4)「資格情報のお知らせ」について
健康保険証利用の登録をしていても、マイナンバーを会社に提出していない場合、マイナ保険証を利用することができません。マイナ保険証利用希望者へ、被扶養者分も含めマイナンバーが提出済かどうか、確認しておくことも大切です。各保険者から、現在登録されている被保険者や被扶養者の資格情報について記載した「資格情報のお知らせ」が発行されます。協会けんぽの場合は、2024年9月に会社宛に送付されています。現在保険者に登録されているマイナンバーの下4桁が記載されており、マイナンバーが未登録の場合は記載がありません。正しいマイナンバーが登録されているか、必ず確認しておくよう伝えましょう。
「資格情報のお知らせ」は保険証の代わりに使用することはできませんが、カードリーダーが使えない場合、マイナ保険証と一緒に窓口に提出することで受診することができます。
(5)資格確認書について
前述の「資格情報のお知らせ」とは別に、マイナ保険証を持っていない、もしくは利用登録をしていない方を対象に、保険者から資格確認書が発行されます。健康保険証の代わりに資格確認書を医療機関の窓口で提示すれば、受診することができます。現在健康保険証を持っている方で、マイナ保険証を持っていない方、マイナンバーが保険者に未登録の方については、2025年9月以降に保険者から資格確認書が発行されます。資格確認書には有効期限があり、協会けんぽから発行するものについては4~5年の予定となっています。マイナ保険証の登録が間に合わなかった場合や利用を考えていない方も、その間スムーズに医療機関が受診できる旨、伝えておきましょう。
2025年12月2日以降、入社等で新たに加入者となる場合は、本人からの申請に基づいて会社を経由して発行されます。資格取得届に資格確認書希望有無欄が設けられる予定となっており、入社時に希望有無を忘れず確認するようにしましょう。
出展:協会けんぽ「健康保険証とマイナンバーカードの一体化(マイナ保険証)に関する制度のポイント」
1年間の経過措置はありますが、早めに周知し備えておきましょう。
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