部下たちに聞きたい「8つの質問」
今回ご紹介する理論は、ADPリサーチ・インスティチュートが19ヵ国において実施した大規模調査「エンゲージメントを測定する8つの文章」(※)とその結果です。※出典:『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2019年11月号特集記事「組織図には表れないチームの力が従業員エンゲージメントを高める」
調査をリードしたのは、同社の人材・パフォーマンス部門長でもあるマーカス・バッキンガム氏。同氏は、ご存知『さぁ、才能(じぶん)に目覚めよう』の著者でもあります。「ストレングス・ファインダー」を試されたことのある読者の皆さんも多いのではないかと思いますが、これを一躍有名にした人でもあります。
さて、「エンゲージメントを測定する8つの文章」の設問は次の通りです。
2)「仕事上で、自分に期待されていることを明確に理解している。」
3)「所属チームのメンバーと価値観が共通している。」
4)「仕事で毎日、強みを発揮するチャンスがある。」
5)「チームメイトが私をサポートしてくれる。」
6)「優れた仕事をすれば、認められることがわかっている。」
7)「会社の未来は明るいと強く信じている。」
8)「仕事では常に、成長が求められている。」
当連載をご愛読くださっている読者の皆さんには、以前ご紹介した「ギャラップQ12(キュー・トゥエルブ、従業員エンゲージメント計測の12の質問)」(※)と似ている、重なる質問が多いことに気づかれたかもしれません。それもそのはず、バッキンガム氏らは、1980~90年代にギャラップ社が行ってきた関連調査を引き継ぎ、アップデートして今回の調査を策定しているからです。
チームの状況がエンゲージメントを左右する
バッキンガム氏ら調査チームは今回の結果を分析し、「何が従業員のエンゲージメントを高めるのか」についてアプローチを試みています。興味深いことに、その結果として調査から見えたのは、従業員のエンゲージメントは一般的によく言われる「企業文化」のような大局的なことと必ずしも相関が強い訳ではなかったということです。さらに、個人の資質に帰結されるものでもなかったのです。では一体、何が従業員のエンゲージメントを左右していたのでしょうか。それは、「チームの力」です。これは必ずしも組織図に明記されている組織だけに限らず、見えない組織~各人が属している複数のプロジェクトワークなども含まれるとのこと。オフィシャル、アンオフィシャルを問わず、編成されている「チームの力」に最も左右されるということがわかったというのです。そう言われて考えてみると、日々私たちが最も多くコミュニケートし、情報を交換し、ムードなどを含めて影響を受けているのは、いま稼働しているチームメンバーたちですよね。
そしてこの調査結果から、最高のチームにする方法が導き出されています。それは、「チーム(メンバーは誰なのか)」と「(実態としての)チームリーダー(は誰か)」を明らかにし、その上で下記を実行することがポイントだといいます。
2)目配りを感じさせるチームを作る
3)共に学ぶ
4)どこで働くかよりも誰と働くかを重視する
5)あらゆる仕事をギグワークのようにする
チームメンバーたちに「自分に期待されていることを明確に理解できる」、「強みを発揮するチャンスがある」ような場を提供しているリーダーが、全幅の信頼を獲得することができるということです。最高のチームリーダーとは、メンバーそれぞれが「自分のことを理解してもらっている」、「集中して仕事ができている」と感じさせるような存在を指すのです。
なお、5)の「ギグワークのように」については、企業人・組織人ではあっても、あたかもフリーランスであるように働けるようにするということです。これは、メンバー本人が主体的に裁量権をもって業務を遂行できるような状態を作る、提供することを意味しています。やりがいを持てる職場とは、“任せてくれる”、“縛られ(過ぎ)ない”場であるということですね。皆さんの職場はどうでしょうか。経営幹部の皆さんのマネジメントスタイルはいかがですか?
そもそも、「私の長所を理解した上で、長所を発揮できる仕事を与えてほしい」、「貢献、成長できる機会を常に与えてほしい」というのがメンバー全員の本質的な欲求であり、好業績チームを支える基盤であるとバッキンガムらは述べています。
「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」記事には、リーダーが信頼関係を築き、目配せしてくれていると感じてもらうためにできる簡単な“2つの問いかけ”が紹介されています。
「私に手助けできることはありますか?」
これなら誰でも、毎週のチームメンバーとの会話としてルーティンを組むことができますよね。ぜひ、あなたの上司としての業務に取り入れてみていただければと思います。
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