皆さんの会社では、社会保険・労働保険の手続きに、電子申請を利用していますか。「使い始めるまでの準備が大変そう」、「使い方が難しそう」のようなイメージから、最初の1歩が踏み出せない方も少なくないように見受けられます。しかし、利用できる環境さえ整えられれば、享受できるメリットは非常に大きいと感じます。そこで今回は、社会保険・労働保険の手続きの「電子申請の始め方」を解説します。
「社会保険・労働保険の電子申請」で日々の手続きをより楽に! 導入に必要なものを解説

電子申請のメリットとは?

電子申請のメリットは、いつでも・どこからでも申請ができることです。システムのためメンテナンスが入ることもありますが、緊急なものでない限り事前に連絡が届きますので、申請タイミングを可能範囲でずらしたり、急ぎであれば紙で窓口へ提出しに行く等の回避は十分可能です。自宅のPCからでも申請ができますので、在宅勤務との相性も良いです。

また、ペーパーレス化になることもメリットです。申請書だけでなく、提出が必要な添付書類もスキャンデータや写真データで良いですし、審査後の事業主控え等の書類もすべてデータで返却されます。

さらに、労働保険の年度更新手続きでは、申告書の提出に加え保険料の納付が必要ですが、電子申請を利用すれば、インターネットバンキングによる電子納付も可能です。

電子申請を始めるために必要な「電子証明書」

社会保険・労働保険の電子申請を行うために必要なものの1つ目が、「電子証明書」です。

紙での申請の場合、申請書に署名や印鑑を押しますが、電子申請だとそれができないため、本人確認ができません。電子証明書とは、紙での申請時の署名や印鑑、あるいは印鑑証明書のようなもので、間違いなくその会社・その担当者から申請がされたことを証明するための電子データです。紙での申請の場合に毎回署名や押印をするように、電子申請の度に電子証明書データを添付して申請します。

電子証明書の取得方法は、大きく3種類あり、いずれかの方法で取得します。

●マイナンバーカードを利用

マイナンバーカードは、申請時に電子証明書をつけるかを選べます。電子証明書がついているものであれば、企業での電子申請でも電子証明書として利用可能です。マイナンバーカードを読み取るための機器は別途必要ですが、家電量販店や通販で買えるもので問題ありません。

注意点は、“人事担当者等、事業主以外が電子申請を行う場合”です。原則、事業主のマイナンバーカードしか会社の電子証明書として利用できません。ただし、実務の観点から、人事担当者等、事業主以外のマイナンバーカードを読み取らせることも認められています。雇用保険関連手続きの場合、「事業主が指定する者個人の電子証明書の利用届」を電子申請の度に添付し、社会保険関連手続きの場合、「健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届事業所関係変更届」で代理人の届出を事前に行うことで、人事担当者等のマイナンバーカードが会社の電子証明書として利用できます。

●認証局で発行

社会保険・労働保険の電子申請で利用できる電子証明書を発行できる認証局が案内されているため、その機関にて電子証明書を発行することもできます。各認証局で取得方法や有効期限、発行方法等が異なるので比較検討をしてみると良いです。他の方法よりも発行費用がかかってしまうことがデメリットです。

●GビズIDを発行

「GビズID」とは、複数の行政サービスにログインできるアカウントです。補助金申請で必須となっているケースもあるため、聞いたことのある方もいるかもしれません。

アカウント発行には書類審査が入りますので、利用可能アカウントを所持している=認証済みの会社となり、前述のような電子証明書を準備する必要がありません。電子申請システムではGビズID用のログインフォームがあるので、専用フォームからログインするだけで、認証済みの会社による申請と扱ってもらえます。

また、GビズIDには複数種類がありますが、電子申請のためには「プライムID」の発行申請をします。今後どうなるかは不明ですが、現在、無料でID発行が可能な上、有効期限や更新制度はありません。

「電子申請用」のシステムは何を使う?

社会保険・労働保険の電子申請を行うために必要なものの2つ目が、電子申請用のシステムです。

無料で使えるものが、国が運営する「e-Gov(イーガブ)」というシステムです。特に利用申請等もなく使い始められますので、特にこだわりがなければ、まずはe-Govを使ってみるのが良いでしょう。

民間の電子申請システムも多くあります。従業員管理システム等に付随しているものも多いです。いずれのシステムも内部的にはe-Govを通して申請をしているので、民間システムでも申請内容の差異等の不安は感じる必要はありません。民間のシステムは、電子申請可能な申請書の種類に違いもありますので、自社でよく使う申請が対象かは事前確認しておきましょう。民間のシステムは有料ですが、使い勝手が良いものも多くあります。



電子申請を導入したからといって、毎回電子申請にしなくとも問題ありません。その時々で使い分けることもできますので、選択肢の1つとしてぜひ電子申請を導入してみてください。
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