【図解付き】「定額減税」や「在職老齢年金」とは? 2024年度の給与計算を徹底解説/社労士監修コラム集
2024年4月の改正のポイントはここ!
2024年の法改正で、「労働基準法」で定められている「労働条件の明示」について、明示事項の追加がなされました。具体的には、有期労働契約の締結時や更新時に、「有期労働契約の通算契約期間」や「更新回数の上限の有無」を明確にする必要があります。また、通算契約期間や更新回数の上限を新設したり、現行よりも短縮する場合には、その理由を事前に説明をすることが求められます。こちらの事前説明方法については、説明すべき事項を資料にして配布するような形でも大丈夫ですが、たとえば「当初、予定していた事業が〇〇の理由により縮小することとなったため」というように、対象者に分かりやすく説明をすることが重要です。
次に、「有期労働契約を更新しない」と決定した労働者に対しては、できるだけ早く通知をする方が良いでしょう。「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」では、「有期労働契約を3回以上更新している場合」や、「契約期間が通算1年を超えた労働者」に対しては、少なくとも契約の期間が満了する30日前までに、雇止めを通知する必要があります。
もし、労働者から「雇止めの理由について証明書」を請求されたときは、企業側はそれに応じる義務がありますが、その理由については「契約期間が満了したから」という理由では不十分で、別の理由を説明することが求められます。例として、「担当の業務が終了となったため」、「業務遂行能力が当社の求める基準に達していないと認められるため」、「業務命令に従わず、勤務態度が不良であるため」といった理由が挙げられます。
しかしながら、説明を受けた労働者の視点に立った場合、「そんな話は聞いたことがない」と雇止めに不満をもち、「雇止めの撤回」をめぐる労使トラブルに発展するケースがあります。たとえば、雇止めの理由が「業務遂行能力の不足」だった場合、労働者から「雇止めになるまで企業側から指導や教育がなかった」ということで、雇止めの無効を求める紛争に発展するような場合があるのです。
そもそも有期労働契約とは、契約期間が定められており、その期間が到来すれば労働契約は当然に終了するのですが、労働条件の明示において「労働契約を更新する場合がある」となっている契約の場合は、契約の更新についての期待感が労働者に生じやすいことに留意することが必要です。たとえ「次回の労働契約を更新しない」とした労働契約であったとしても、職場から「次も期待しているよ」といった言動があったことにより、労働者側に期待感が芽生え、雇止めが「解雇」と受け取られてトラブルに発展することもままあるのです。
では、雇止めが解雇と受け取られてしまうことへの対策についてお話ししましょう。
雇止めが「解雇」と受け取られないようにするには?
解雇とは、会社側が労働者に対して労働契約を一方的に打ち切るもので、一般的には正社員などの無期雇用労働者に対して使うことが多いです。この解雇について、理由が「合理的なものでなく、社会通念上受け入れられないもの」である場合は、 “解雇権の濫用” として無効とされることがあります。これを「解雇権濫用法理」と呼びますが、これが有期雇用労働者にも準用(類推適用)されることがあるのです。これは、「労働契約法」(第19条)で定められており、有期労働契約の更新が形骸化していて実質的に無期雇用労働者と変わらないものであったり、すでに述べたように労働者側が労働契約の更新について期待感を持つことに合理的な理由がある場合に、「解雇権濫用法理」が有期雇用労働者にも用いられることがあります。「労働契約法」では、そのような状況下で労働者が有期労働契約の更新の申込をした場合、会社側はその申込を了承したものとみなされます。
会社側としては、雇止めが「解雇」と同視されないようにするために、現場の上司に対し有期雇用労働者の契約内容を正確に把握してもらいながら、業務上の指導・教育を実践してもらうよう要請することになります。
また、労働契約の更新を形式上のものとせず、更新前には面談で労働条件の確認をきちんと行い、労働者の誤解を招かないようにすることで、労使トラブルの芽が生じないよう留意することが重要です。
いかがでしょうか。有期雇用労働者の雇止めが正社員の解雇並みに気を遣うものであることがお分かりいただけたと思います。「労働条件の明示」を明確にしておくことは労使トラブル防止の第一歩となりますので、労働契約の締結時から留意されるようにすることをお勧めします。
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