「人的資本経営」と「従業員の睡眠」には、実は密接な関係があります。人的資本経営は、従業員の健康とパフォーマンスを向上させることで、企業の価値を高める経営戦略と言われ注目を浴びています。食事や運動など健康施策の中でも「睡眠」は従業員のメンタルリスクや仕事のパフォーマンスに大きな影響を与える要素ということもわかってきました。それだけでなく睡眠不調は、周りとの人間関係・コミュニケーションにも影響があることが最新の研究でもわかってきたのです。今回はそんな睡眠改善と人的資本経営の関係性についてお話をしていきます。
人事担当者が知っておくべき「人的資本経営」と「睡眠」の意外な関係性とは
サトウ 未来
著者:

Lifree株式会社 代表取締役/快眠コーチ サトウ 未来

中学・⾼校と最優秀選⼿賞また県のベストメンバー選ばれる元アスリート。⼤学で健康/スポーツ学科卒業後は「健康・美くしさ」を探求するため⼤⼿エステ会社へ⼊社。わずか2年で関⻄技術ランキング1位/売上全国3位を獲得。

しかし、サプリメントや他⼈に頼りきるのではなく、カラダを本質から改善することの必要性と感じ、またこれまで2万⼈以上のクライアントの身体と心に関わる上で、理想の状態を作るには「⽇常のライフパターン」や「生活習慣・⾏動変容へのサポート」が重要と考えLifreeの前⾝となるEXEUP株式会社に⼊社。

店⻑、4店舗マネージャーへと昇進。同時に2012年から健康経営のための企業研修の開発・ディレクションを⾏う。そして、Wellbeingな組織、個々が良いパフォーマンスで働く支援をする為             2018年Lifree株式会社を設⽴し代表となる。

これまで企業180社以上100,000⼈以上のサポートを⾏い実績を積む。

資格:睡眠上級指導⼠/日本睡眠学会会員/アクションラーニングコーチ/オンラインファシリテーター/フランス式アロマテラピー上級講師/お風呂のソムリエ
Lifree株式会社

人事担当者が意外と知らない「睡眠不調」による組織への悪影響

皆さんこんにちは!スリープコーチのサトウ未来と申します。

私はこれまで180社10万人以上の睡眠に悩むビジネスパーソンを、朝からスッキリ目覚め日中パフォーマンスを発揮できる状態を作れるようにサポートをしてきました。

私たちが幼い頃に大人から「よく寝ましょう、早く寝ましょう!」そう言われてきた「睡眠」ですが、多くの人が知らない「組織・チームへの影響」について、今回はお伝えをしていきます。

皆さん、ご存じでしょうか?

睡眠不足は個人の生産性(記憶力・判断力・計画力・問題解決能力など)を低下させるだけではなく、人間関係や周りからの評価まで悪化させるという研究結果がでているのです。

特に部下を抱えるリーダーの睡眠不調は深刻なものとされており、

(1)チームメンバーへのパワハラな行動に現れる
(2)チームの士気の低下
(3)チームのエンゲージメント低下を招く
(4)非倫理的行動が増加し、道徳意識が低下する

という組織への悪影響を及ぼす結果まで出ているのです。
人事担当者が知っておくべき「人的資本経営」と「睡眠」の意外な関係性とは
こういった背景から、海外ではリーダーの睡眠改善は非常に重要視されています。管理者やマネジメントを行う立場の人は、部下の管理の前に、まずは自分自身のセルフマネジメント、ストレスマネジメントの大きな基盤となる「睡眠改善」をしていく(※)。そうすることで本人自身、そして周囲の人々との関係における不要なストレスも軽減し、パフォーマンスを発揮できるチームや組織作りに繋げているのです。

※参考:HRプロ「「睡眠改善」は企業や従業員にとってどのようなメリットがあるのか」

このことから、睡眠は”単なる個人の課題”に留まらず、組織の人と人との繋がりや信頼関係の構築、さらにその先の仕事や業績へも影響することがわかってきたのです。

「睡眠」という個人の隠れ不調が無意識で招いてしまう組織への悪影響のお話でした。

次は、2023年より開示義務が求められ重要視されている「人的資本経営」との関係について現場の視点からお届けをしていきます。

現場から見えてきた「人的資本経営」への投資としての「睡眠改善」とは

先ほどあったように、昨年の2023年から上場企業は人的資本開示が義務化され、開示項目の「健康・安全」分野に「精神的健康」「身体的健康」「安全」といった従業員の健康や安全配慮は、企業の成長や収益向上につながる重要な経営課題となっています。

どの企業も「選ばれる、価値のある企業」となるために、「働き方改革、人材確保、ESG、SDGs、ダイバーシティインクルージョン」など本格的な取り組みがされ始めています。

こう言った取り組みは、まさに「人的資本」に対する投資です。人材確保、ESG、働き方改革などを促進させる大きなポイントである「健康経営」は2022年の健康経営優良法人認定制度へのエントリー数が約1万7500社を超え、コロナ禍を経て3年で倍以上に増え、まさに「人的資本への投資としての健康経営」がいま、注目を集めています。

健康経営の中でも「睡眠改善」は最も生産性改善の費用対効果も高く(年間32.8万円/人)食事などとは10倍近く差があります。また同時にメンタルリスクの早期発見にも活用できる睡眠は従業員の仕事だけではなく、プライベートも含めたウェルビーイング向上に最も関与する支援と言えるのではないでしょうか。

実際に睡眠は従業員だけでなく、その家族も一緒に取組む方も少なくありません。働き盛りの30〜40代は子育て世代でもあり、小さな子供を抱える従業員はどうしても睡眠不足になりがちです。世界一睡眠が短い日本人女性は、睡眠をマスターすることで、ご自身の不要なストレスを解消し、子供の睡眠力や学力(記憶力)の向上、そしてぐるりと囲んで家族のコンディション向上にも役立っているのです。
人事担当者が知っておくべき「人的資本経営」と「睡眠」の意外な関係性とは

「従業員エンゲージメント」向上としての睡眠改善事例

人的資本経営に取り組む企業は「従業員エンゲージメント」も重要視されているのではないでしょうか?

また現場視点からも今、多くの企業で従業員エンゲージメント調査やサーベイを導入されていることを実感しています。

従業員エンゲージメントの向上は、企業と従業員の結びつきを強化し、働く意欲や会社への貢献意欲が高まり「離職率の低下」、「優秀な人材の確保」などにも大きなメリットがあると言われています。

しかし、従業員エンゲージメントの調査をしてもやりっぱなしとなり、その後の支援や施策がなかなかされておらず、従業員はデータを提供するのみになっている企業も少なくありません。

従業員エンゲージメントを高めるポイントには大きく3つあると言われています。

・働きやすい環境づくり
・社内コミュニケーション(心理的安全性の構築)
・企業理念やビジョンへの理解・浸透

上記の観点から従業員エンゲージメント施策として弊社の睡眠プログラムを利用いただいた実例があり、実際に従業員エンゲージメントの指標であるeNPS(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)の計測を実施し、コンサルティング企業様にてeNPS -20%改善の事例にもつながりました。

受講者であったリーダーからは、「コロナ以降は働き方改革やテレワークも加速し、仕事だけの繋がりが多くなりましたがチームメンバー一人ひとりへの”もう一歩超えたところ”への理解がより深まり、それによって仕事上でもスムーズな話し合いや健全な議論ができている」という声をいただきました。

やはり健康施策の中でも睡眠は現代人にとっての課題であり、誰もが必ず共通する睡眠や健康におけるコミュニケーションを取ることで新たな関係性を作り、仕事へも好影響となった実例でした。

企業は生き残りをかけて各社が価値向上に向けて取組みはじめ、また従業員も変化や新たなスキルアップ、リスキリングを求められています。企業は従業員との結びつきを強化し、これからの企業変革に向けて、人的資本の投資としての「睡眠改善」をすることを おすすめします。

「睡眠改善」をきっかけに従業員エンゲージメントの向上、人的資本経営の強化、そして個人と組織がウェルビーイングになることを願っています。
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