【2024(令和6)年度版:法改正一覧】労働基準法ほか人事労務関連13項目の要点を解説<社労士監修>
2024年4月から「労働条件通知書」に追加となる項目
2024年4月から変更になる点は、いわゆる「労働条件通知書」の記載内容です。労働条件通知書とは、「この労働条件で働いてもらいます」ということを企業から労働者に伝えるための書面で、「労働基準法」第15条にて使用者に義務付けられているものです。労働条件通知書に記載する内容は「労働基準法施行規則」に定められています。今回、この施行規則に改正が入り、下記の労働条件を追加で記載することが求められます。(1)就業場所・業務の変更の範囲(全労働者)
「就業場所」と「業務の内容」は改正前から労働条件通知書に必須で記載する項目でしたが、今回、「変更の範囲」が新たに追加されました。「変更の範囲」とは、“今後変更される可能性があるか”、ある場合は“変更される範囲”のことです。例えば、「入社直後は本社勤務だが、今後は全国の支社に異動になる可能性がある」、「入社直後は営業職で、今後も営業職以外に従事することはない」のようなことを明文化しておきましょう、という意味です。従来は、入社直後のものを記載することで足りましたが、4月からは先の例のような配置転換の見込みまで記載が求められます。
なお、パート・アルバイトや有期契約労働者を含むすべての労働者が対象です。有期契約労働者の場合、契約更新の際にも明示が必要になります。
(2)契約更新上限(有期契約労働者)
今回の改正により、有期契約の更新のタイミングごとに、契約更新の上限の明示が必要になります。更新の上限とは、「通算4年まで」や「更新回数は3回まで」のようなものです。上限がない場合には記載は不要です。また、新たに上限を設ける場合と上限を短縮する場合には、その理由の説明も求められるようになります。
本内容は、契約更新のある有期契約労働者のみが対象で、無期契約の方は対象外です。
(3)無期転換の申込みができる旨・転換後の労働条件(有期契約労働者)
無期転換とは、「有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者からの申込みにより、無期労働契約に転換されるルール」のことです。今回の改正では、この権利が発生する契約更新のタイミングで、無期転換を申し込むことができる旨を明示することが必要になります。また、無期転換の申し込みができる対象者には、無期転換後の労働条件の明示も新たに求められます。
今回の改正の留意事項
今回の改正の対象は、2024年4月1日以降に締結・更新される労働契約です。そのため、既に労働契約を締結している方には、改正後の内容で改めて労働条件通知書等を出すことまでは求められていません。もちろん、労働条件の明確化のために、全労働者に再度新ルールでの労働条件通知書を渡すことも問題なく、厚生労働省もそれが望ましいと明言しています。また、前述(1)の「就業場所・業務の変更の範囲」は、入社段階では具体的な配置転換の見込みまでわからないというケースも多いと考えます。その場合でも、「変更の範囲として『会社の定める営業所』や『会社の定めるすべての業務』のような記載をすべき」というのが厚生労働省の見解です。逆を言えば、 “将来のことはわからないから”と変更の範囲を記載しないと、「将来的に配置転換はない」と捉えられてしまうため注意が必要です。
さらに「就業場所」については、テレワークを行うことがある場合は、就業場所としてテレワークを行う場所が含まれるように明示することも求められています。
なお、厚生労働省のホームページでは、今回の改正に対応した「モデル労働条件通知書」が公開されています。実はその中で、「就業規則を確認できる場所や方法」の記載欄も追加されています。これは、今回の施行規則改正によるものではなく、「就業規則を労働者が必要なときに容易に確認できる状態にする必要がある」との通達改正によるものと厚生労働省は公表しています。就業規則の周知自体は「労働基準法」にて定められている就業規則の有効要件の1つですので、前述の(1)~(3)と併せて確認しておきたいところです。
さらに、「労働基準法施行規則」と同時に「職業安定法施行規則」も同様の改正がされ、「労働者の募集・職業紹介事業者への求人申し込み時に明示すべき労働条件」も記載の追加が求められます。追加される具体的な項目は、前述の(1)(2)に加え、「有期労働契約を更新する場合の基準」の明示です。こちらも2024年4月から対象ですので、現在求人を出していたり、今後出そうとしている企業は、早いタイミングで記載内容の見直しをすることを推奨します。
労働条件通知書、求人時の労働条件のいずれも、厚生労働省がリーフレットやQ&A、雛形等を公表しています。4月までにチェックし、漏れなく対応しましょう。
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