東京都・神奈川県を中心に鉄道事業や不動産業などを営む小田急電鉄では、事業モデルの転換と従業員の挑戦を支援する風土づくりを目指し、2017年より本格的な組織改革を推進してきた。風土づくりをOSに、各種施策をアプリに例え、どちらか片方で終わらない両輪での取り組みを進めることで、今ではさまざまな成果も出始めている。本講演録では、その取り組みで第12回 日本HRチャレンジ大賞の「大賞」を受賞した小田急電鉄株式会社 人事部 課長 内海健史氏がお話した独自の施策内容や成功に繋がったポイントなどを紹介。また、講演の後半で行われた同賞の審査委員長の学習院大学 名誉教授 今野浩一郎氏とのパネルディスカッションの模様もお届けする。

第12回 日本HRチャレンジ大賞『大賞』

小田急電鉄株式会社

小田急電鉄が取り組む「事業変革に必要な風土づくり」と「社員の挑戦を引き出す制度構築」

創りたい未来を実現するための基盤としての風土づくりと、社員の挑戦を引き出す制度を両輪とした総合的な変革の取り組み。 年度計画の策定を所属員全員参加型で行う「未来創造会議」をはじめとした社員同士の対話の機会を多く設けるとともに、挑戦を引き出す制度として、新規事業のアイデア公募制や、労働時間の20%を所属部署とは異なる社内プロジェクトに参画できる制度を構築。新規事業4件が事業化されるとともに、これまで本社社員の延べ15%が社内プロジェクトに参加するなど、総合的に優れた取り組みであると、高く評価されました。

プロフィール

  • 内海 健史 氏

    内海 健史 氏

    小田急電鉄株式会社 人事部課長/小田急研修センター所長

    1999年、東北大学法学部卒業後、小田急電鉄株式会社に入社。駅などでの現業研修の後、経理系部門に従事。2005年から同社の海外人事派遣制度により約1年間台湾に駐在し、現地の日本観光協会台湾事務所にて訪日インバウンド業務に取り組む。台湾から帰国後、広報・宣伝業務や小田急箱根ホールディングス株式会社出向時の経営計画策定など、多様な業務を担当してきているが、現在の人事部門所属歴が最も長く計10年を越える。2018年から現職で、未来価値創造やキャリアオーナーシップを意識した会社人事制度・風土改革に取り組む。

  • 今野 浩一郎 氏

    今野 浩一郎 氏

    学習院大学 名誉教授/学習院さくらアカデミー長

    1973年東京工業大学大学院理工学研究科(経営工学専攻)修士課程修了。神奈川大学、東京学芸大学を経て学習院大学経済学部経営学科教授。2017年から学習院大学 名誉教授、学習院さくらアカデミー長。主な著書に、『正社員消滅時代の人事改革』(日本経済新聞出版社)、『高齢社員の人事管理』( 中央経済社)、『同一労働同一賃金を活かす人事管理』(日本経済新聞出版)など多数。

小田急電鉄が取り組む「事業変革に必要な風土づくり」と「社員の挑戦を引き出す制度構築」

チャレンジするカルチャー構築に向けた小田急電鉄の「組織風土改革」とは
小田急電鉄株式会社 人事部課長/小田急研修センター所長 内海 健史氏

なぜ小田急電鉄は組織改革が必要となったのか?

まずは小田急電鉄が組織風土改革に取り組むことになった経緯からご説明させていただきます。改革の必要性としては、中長期的に事業環境を見据えた際、鉄道の線路を引いて、その上に商業施設やレジャー施設、住宅開発を行い、鉄道の輸送人員を増やすという人口増加と経済成長に支えられた事業モデルからの転換が求められていました。また、鉄道の根幹としての強い安全第一の意識が小田急の信頼感を構築してきた一方で、「失敗は許されない」文化に繋がる側面もあり、チャレンジすることが生まれにくいという課題感もありました。こうした背景の下、2017年から本格的に組織風土改革をスタートさせた次第です。

ではそれをどのように進めていったのか、経営戦略と人財戦略の流れをご紹介したいと思います。風土づくりについては、2017年に人事部と経営戦略部で検討プロジェクトを始めたことを皮切りに、「未来創造会議」の実施などを継続的に展開。さらに翌年以降は、挑戦を引き出す制度として、「事業アイデア公募制度climbers」や「プロジェクト人財公募制度」をスタートさせたほか、人財マネジメントポリシーの策定、65歳定年延長導入、管理職人事制度の改正など、新しい経営ビジョンを踏まえた各種人事制度の見直しも実施しました。

風土改革の基本的な考え方についてもご説明しますと、私たちは風土改革の取り組みについて、OSとアプリを例に、新しい取り組み・制度(=アプリ)を作るだけで終わらないように、風土づくりと両輪で推進しました。ここで言うアプリとは、「climbers」や「プロジェクト人財公募」、各部事業の改善・イノベーションなどを意味し、OSとは、未来創造プロセス(未来創造会議)、各部の関係の質向上の取り組みなどを指します。つまり、風土づくりによるOSのアップデートを続けることで、新しい取り組みにチャレンジできるカルチャーの構築を目指すというわけです。

この後、下記のトピックで、講演録が続きます。
続きは記事をダウンロードしてご覧ください。

【講演】
チャレンジするカルチャー構築に向けた小田急電鉄の「組織風土改革」とは
小田急電鉄株式会社 人事部課長/小田急研修センター所長 内海 健史氏

●なぜ小田急電鉄は組織改革が必要となったのか?
●風土づくりのための未来創造プロセス
●未来に挑戦する人財とアイデアを育てる具体的な施策とは

【パネルディスカッション】
風土改革を「OS」と「アプリ」に例え、それぞれ具体的にどのように取り組んだのか
小田急電鉄株式会社 人事部課長/小田急研修センター所長 内海 健史氏
学習院大学 名誉教授/学習院さくらアカデミー長 今野 浩一郎氏(ファシリテーター)

●各部門の特性に応じた自律型の風土づくりへ
●新しい制度の浸透には「経営層」の理解・支援が不可欠



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