従来の組織では、いかにチームメンバーや担当業務を「管理」するかという点に重きが置かれていたが、多様な価値観や働き方が広がりつつある現在においては、いかに個々人の能力を最大限に発揮し、チームとしてパフォーマンスを上げるかというチームマネジメントが重要視されてきている。企業にとって、チーム・組織をどのように強化していくかは重要な人材戦略の一つとして考える必要がある。
令和時代のリーダーに求められる4つのマネジメントスキルとは

「チームマネジメント」とは、チームを目標達成や生産性向上へと導くための手法

チームマネジメントとは、チームを牽引する管理職やリーダーが、部下やチームメンバーを目標達成や生産性向上へと導くための手法全般を指す。具体的にはチームメンバーが一丸となって助け合える関係を作り、チームワークの向上を目指しながら仕事に対するモチベーションを上げることが重要である。そのためには、チームを任された管理職やリーダーが強いリーダーシップを発揮し、チームとしての目的と目標を設定し、メンバーを牽引していくことが必要となるのだ。

もともとチームとは、「所属するメンバーが共通の目的や目標を持ち、その達成に向かって共に成し遂げようと取り込んでいる集団」のことを指す。この「チーム」を作り上げることこそがチームビルディングとなる。一方、同じ集団であっても、共通の目的や目標がない単なる人の集まりであれば「グループ」であり、共通目標の有無が「チーム」と「グループ」を分ける境界線といえる。

日々の業務に忙殺されて目の前のことしか考えられず、企業理念や共通の目的、周囲との協力関係も希薄化されがちだ。また、企業において働き方改革が推進される昨今、テレワーク就業に取り組む企業も増えているため、コミュニケーションがはかりにくい環境となっている。ダイバーシティの考え方も浸透してきているため、多様な価値観を持つメンバーをまとめていくことも必要となるだろう。
同じ目標に向かって共通認識を強めるとともに、コミュニケーション力や他者認識力、課題解決力を高めていくために、いまこそチームマネジメントを強化する必要があるのだ。

日本企業が抱える「人手不足対策」と「イノベーション創出」という課題

日本企業が抱える2つの課題に対してもマネジメント力がカギを握るのではないだろうか。

一つ目は人手不足対策。労働人口減少を迎える日本において、潤沢な人材資源を投じてビジネスを推進していくことは困難であることは言うまでもなく、一人ひとりの労働生産力を上げる必要が出てくる。業務プロセスや役割を見直しはもとより、アウトソーシングや単純作業の自動化といった要素も取り入れ、チーム全体でのパフォーマンスを向上させることが重要だろう。そうした全体のコーディネートにはマネジメント力が求められる。
また、チームメンバーとの丁寧な対話を通じて、メンバーのコンディションチェックや自己成長を支援することも個々のパフォーマンス向上には効果的といわれている。結果として、人材が長期定着し、離職防止にも繋がるのだ。

二つ目はイノベーション創出の必要性が高まっていることが挙げられる。
令和時代に入り、「失われた20年」は「失われた30年」になるという意見もある。急速なデジタル化に後れをとっている現状に、ソフトバンク孫社長の『日本はAI後進国』という発言は記憶に新しいだろう。既存事業を中心とした現状維持で自社の持続的成長を信じているビジネスパーソンはそう多くないはずだ。VUCA(Volatility:不安定さ、Uncertainty:不確定さ、Complexity:複雑さ、Ambiguity:曖昧さ)という言葉に象徴されるように、先行きのみえないビジネス環境のなかで、新たなビジネスを構築することが喫緊の課題であるのだ。
そうしたなかでは、個に閉じたパフォーマンスでは打開は難しく、意識的にチームを活性化させて、新たなアイディアや発想を生み出す環境が重要となる。そうした環境をつくりだすことが出来るかどうかはマネジメント力に掛かっている。

チームマネジメントを行うために必要な4つのスキル

どうすればチームマネジメントを効果的に実行できるのだろうか。まず、チームをより良き方向へと導くべき立場にあるマネージャーやリーダーには、チームメンバーが自身の特性や能力を発揮し、成果を上げる後押しする力が必要である。

1:コミュニケーション能力
人員を最適に配置することはチームマネジメントの中の大きな要素の一つ。そのためにはチームメンバーや部下のことをどれほど熟知しているか、という点が重要となる。ここでいうコミュニケーション能力とは、双方向の意思疎通、なかでもヒアリング能力(傾聴力)が重要だ。チームメンバーが何に喜びを感じ、モチベーションが上がるのか、また不得意なもの、どのような能力を伸ばしたいのか、各個人の内なる意識やキャリアビジョンに目を向けることが大切である。

2:目標設定能力
チームを牽引するためには、明確な目標設定が必要である。ここで注意すべきは、ただ「売上を上げる」といった数値目標だけではなく、自分たちはなぜこの仕事を行うのか、といったビジョンを共有し、その目的達成のためにやるべきことをチームでシェアすること。また、チーム全体の目標設定だけでなく、それを各メンバーに落とし込み、それぞれの特性に見合った多様な目標設定を行うことも重要だ。

3:課題抽出力、問題解決力
各個人の能力を活かせる環境作りはもちろん、管理職にはチームに問題があった場合の危機管理能力も求められる。チームとしての目標、個人としての目標がこのままでは到達できないと予測された時点で、いかに改善すべきか課題を洗い出し、解決していくかが試される。あわせて課題抽出力、問題解決能力も必要なスキルとなる。

4:指導力、コーチング力
管理職自らがチームメンバーの声に耳を傾け、適切なタイミングでメンバーが自らの課題やミッションに気付く手助け・支援が必要である。解決手段やプロセスをすぐに提示せずに自ら考えさせ、気づきや解決力を高めるコーチングも織り交ぜながら、適切に指導する能力がマネジメントには求められる。

チームマネジメントの実行ポイントと課題

令和時代のリーダーに求められる4つのマネジメントスキルとは
チームマネジメントの推進には、個人・チーム双方の成長が必要不可欠だ。成長を促すために挑戦できる業務や環境を用意し、成功体験を積ませることは有効な手段だが、そうしたマネジメントを丁寧に行うことは容易ではない。
日本企業における管理職の多くは、マネジメントのみを行うのではなく、自らもプレイヤーとして業務を行うプレイングマネージャーが多い。したがって、マネジメントに十分な時間を割けず、つい合理主義的なやり方に終始してしまうケースも少なくない。育成工数を気にするあまり、マネージャーが自ら業務を進めてしまう状況である。そうしたケースは短期的には効率的かもしれないが、長期的にみるとチームの成長機会を逃してしまっている可能性もあり、チームメンバーを信頼することができるか、失敗を成長機会として捉えることができるか、マネージャー自身のマインドセットと意思が重要といえるのではないだろうか。

ビジネス環境は複雑化し、ワークスタイルの多様化など企業を取り巻く環境は激変している。働き方改革はいかに生産性を上げて、ビジネスに貢献させていくかという第二章へと突入した。企業がおける人材戦略はますます重要になってきており、なかでもチームマネジメントが持つ役割は重要である。
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