多くの経営陣にとって悩みの種である「ダイバーシティ経営」ですが、この対応が進むと他の経営課題解決の突破口になることをご存じでしょうか?これまで述べてきたこと以外に、IT環境の多様化や新たな社会要請への適応の観点から、ダイバーシティ経営を加速させるIT活用術を見つめてみることにしましょう。
ダイバーシティ経営を加速させるスマートなIT活用術

ダイバーシティ経営で生産性と効率性の向上・コスト削減を実現する

 多くの経営陣にとって悩みの種である「ダイバーシティ経営」ですが、この対応が進むと他の経営課題解決の突破口になることをご存じでしょうか?
 これまで述べてきたこと以外に、IT環境の多様化や新たな社会要請への適応の観点から、ダイバーシティ経営を加速させるIT活用術を見つめてみることにしましょう。

テレワークによる場所に縛られないIT環境(ワークプレイス・ダイバーシティ)

 働き方や働く場所の多様化として、テレワークや在宅勤務など、リアルタイムにネットにさえつながれば世界中のどこでもオフィス内にいるように仕事ができるリモートワークは、かなり以前から有益性が注目されてきました。
 加えて、クラウド・コンピューティングによって、場所を選ばず安く手軽に高度なIT環境が利用できるようになったため、インターネットごしに仕事をすることに対して、違和感や抵抗感がずいぶんとなくなってきました。
 これにより、ダイバーシティ経営の推進や生産性・効率性の向上、コスト削減といった経営課題解決の選択肢として、テレワーク・在宅勤務に取組みやすい状況が整ってきたといっても良いでしょう。
 既に、コールセンターはニアショア(地方都市など国内の離れた拠点でネットや電話回線を使って業務処理を進める形態)やオフショア(日本国内からかけた電話を海外コールセンター拠点につなぎ、安い人件費・賃料で業務処理する形態)が進んでいます。
 ネット環境などインフラが整っていれば可能なテレワークや在宅勤務は、遠隔地での業務遂行により賃料も人件費も安く抑えられることから、コスト削減に即効性があります。
 また、育児・介護・身体の障がいなどの事由から長時間自宅を離れられない方や、転勤に支障がある方も、サテライトオフィスや自宅で業務ができれば会社を辞めずに済み、会社側としても熟練した人財を手放して新たに採用や教育にコストをかけずに済むので、双方にメリットがあります。

実際にテレワーク・遠隔会議などをした企業のケース

 筆者が指導した長野県のある通信大手企業では、地理的要因から営業活動などの移動時間が長くかかり、そのために生じた長時間労働・残業・時短が改善されずに悩んでいました。
 そこで、その企業が販売しているクラウドシステムを使い、それまでわざわざ支社に戻ってこなしていた会議や営業日報をすべてネットやクラウドシステム上で済ませて直行直帰できるようにしました。
 すると、今までと同じ内容の業務処理を行いながら、平均しておよそ毎日2時間の時短になり、交通費も残業代も大幅に削減できました。そして、時間に余裕ができた分、社員はプライベートを充実させたり、平日でもゆっくり休むことができるようになったりして、結果、より集中して仕事に取り組むことができるようになりました。
 また、自社のITソリューションを実際に利用者として活用したことで、ユーザー目線でいろいろな改善点や上手な活用法も見つかり、製品の品質向上にもつながりました。同時に、そうした取り組みを成功事例として営業活動に利用できるようになったのも、うれしい副作用でした。

誰でもできる! テレワーク・在宅勤務・遠隔業務処理のITソリューション

 では、そうしたテレワークや在宅勤務、遠隔業務処理を利用するためには、何か特殊で高額なITソリューションが必要なのでしょうか。
 答えはNOです。既に使っているものや知っているものを活用して、簡単に対応が可能なので、特別なものを改めて用意する必要はありません。ですから、非常に安価に、場合によっては無料で導入することが可能なのです。
 以下に、3テーマで3ソリューション(計9ソリューション)ご紹介してみましょう。

①テレビ会議などに役立つもの
・Microsoftの「Office365」
 WordやExcelでなじみの深いMicrosoft Officeのクラウド版。Skypeでのテレビ会議も特に追加費用なく利用可能
・iPhoneやiPadの「FaceTime」
 iPhoneユーザーなら誰でも持っている「既に手のひらにあるテレワーク・ツール」で、顔を合わせた打合せや現場映像を生中継で共有も可能
・Googleの「G Suite」
 状況共有ツールやワープロ、チャットツールなど各種アプリケーションを備えたGoogleの総合ソリューション

②情報共有で生産性・効率性の向上に役立つもの
・サイボウズのグループウェア「kintone(キントーン)」
 遠隔地・本社・支社・海外など、離れていても同じファイルの共有やリモートワークに必要な業務システムを比較的カンタンに構築しやすい
・NTTレゾナントの「ビジネスgoo」
 セキュリティも安心で回覧・施設利用管理・シフト管理・交通費管理な    どをはじめ、交通費管理や各種情報共有などもしやすく初期費用0円~
・ネオジャパンのグループウェア「desknet's NEO(デスクネッツ ネオ)」
 上司が出張中で申請書に承認印が押されず業務が滞って……、というムダな状況も、ネット上のクリックひとつで申請・承認完了して業務効率化

③テレワークのためのIT回線(無線LAN・Wi-Fi)を整える
・各通信会社提供の無線LAN、格安SIM「Freetel」、公衆wi-fi
 各社の料金プランや対応エリア、つながりやすさで比較検討。駅やカフェなどの無料の公衆Wi-Fiと併用することでコストダウンできることも
・安全にネットを使うためのVPN(Virtual Private Network)の「Hotspot Shield」
 公衆Wi-Fiやホテルの無線LANでは情報漏えいなどセキュリティが不安なので、年間数千円で5台の端末で利用可能なHotspot Shieldが便利
・ノートPC紛失時に備えてシンクライアントを導入
 万一の事態に備えて、ノートPCにデータを保存せず、インターネット越しにデータやシステムを持って業務処理をする。Citrixの「XenDesktop」、VMWareの「Horizon」、NTTネオメイトの「AQStage」などがある

 また、リモートワークで懸念される電話の管理についても、各自が使っている個人のスマートフォンに代表電話番号からの呼び出しや転送、内線通話ができるNiftyの「ShaMo!(シャモ)」も注目のITソリューションです。

 今回ご紹介したもの以外にも、様々なITソリューションがあります。リモートワーク導入に関する以下のキーワードを参考に、自社でも検討してみるのはいかがでしょうか。

★ダイバーシティ経営でリモートワーク推進の際にネット検索しておく用語例
 ・グループウェア ・ワークフロー ・クラウドPBX ・格安SIM
 ・公衆wi-fi ・VPN ・シンクライアント ・テレビ会議 ・BYOD
 ・テレワーク比較 ・リモートワーク比較 ・フリーアドレス
 ・eディスカバリ (特にアメリカの企業と取引のある場合に要注意)
 ・サテライトオフィス ・安否確認システム ・電子文書 ・e-文書法
 ・スキャナ ・経費精算システム ・SFA ・シャドーIT など

ITソリューション活用で気を付けておくべき点

 多くのITソリューションがあるからこそ注意すべき点もたくさんありますが、そのひとつに無料のソリューションを利用する場合のセキュリティリスクがあります。
 無料のソリューションがすべて危険だということではありませんが、「データがどういったネットワークを経由しているのかわからない」「きちんと情報が暗号化されているかわからない」など、セキュリティ面に不安を残したまま導入することはおすすめしません。
 そういった点で、筆者は無料のVPNも多い中、安全性の面から前述のHotspot Shieldを有料コースで利用しています。

 セキュリティやリスク対策に留意しながら、多様性に富んだ生き方や働き方の選択肢を社員に提供することで、社員が高いパフォーマンスを発揮できるような風土を作り上げていっていただければと思います。それは効果的に生産性を上げることにもつながり、会社側も社員も相互に幸せになり合える状況が実現できるはずです。

※本記事上でご紹介の各社の知財・商標等は、それぞれ各社が権利を有しております。
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